時代背景を知っていると、もっと興味深い。
新聞記者でもあったディケンズは、当時の社会の暗部を描写し世に問うような作品をいくつも書いていて、このOliver Twistも、その一つです。明快な表現で事実を示していくのでオリジナルでも読みやすいですが、この要約版では、話を大幅に要約し簡潔にまとめているので、主人公の少年は次々と事件に巻き込まれストーリーが進展していきます。英語の苦手な読者でも飽きることなく読み続けることができるでしょう。オックスフォード・ブックワームは単に単語を易しいものに置き換えるだけではなく、文法的に解釈の難しい部分は、別の形式に置き換えていますので、同じくらいの語彙数のレベルでも、他のエディッションより易しいと思います。ストーリーだけを追って楽しむのもいいですが、時代の背景を理解するとまた別の興味深い面を読み取ることができます。例えば、ストーリが大団円を迎えた後に、登場人物たちのその後について短い説明がありますが、当時のイギリスの政策などと照らし合わせてみると、なるほどと思わせる部分があります。
教材として易しく書き直されているせいか、この作品を最近の(せいぜい戦前の)イギリスのお話だと思っている人がたまにいますが、この本の原作が出版されたのは今から約170年前、1838年のことです。日本はまだ江戸時代。アメリカは独立して数十年。当時のイギリスは、産業革命と資本主義の最先進国であると同時に、それらがもたらす歴史的に誰も経験したことのない、どう解決していいかも分からない深刻な社会問題に直面し苦悩していました。当時のイギリスが先に苦しんだからこそ、現代の我々は文化的な生活を享受できているのです。
もしこの本を読んで19世紀の英文学に興味を持たれましたら、日本で書かれたものでもいいので、ディケンズの作品に関する解説書を読んでみてください。
Oliver
話しの展開がとてもドラマチックなので、常に次の展開が気になるストーリーでした。単純に読めば楽しめると思います。 より突っ込んで考えるならば、ロンドンの階級社会の光と影を読むと良いかもしれません。不遇に育てられるオリバーですが、生まれは良いようです。だから最終的に救われたという見方もできます。逆に、このストーリーに出てくる生まれも育ちも低い人たちは、残念なことに救われないのです。
私は、現実の世の中はもっと多くの人にチャンスがあるものだと思っています。逆にいえば、イギリスという国は、それをあきらめさせるほど強い階級社会なのかもしれないと、ひそかに想像しました。