飛行機を飛ばすものは人の心
空港がこれほどの喜劇・悲劇の舞台であったとは。しかもその舞台の主役は華やかな乗務員よりも、乗客はその存在すらも意識しない空港長であり、地上職員、管制官、保全作業者、生命保険の売り子、タダ乗りお婆さん、であったりする。空港という機能の維持・運営に苦悩する人々。吹雪に見舞われて混乱する空港で、自らの職務を果たすべく懸命に働く裏方達。仕事人としての彼らの真摯な姿に共感しないような人にとっては、本書は267枚の紙束に過ぎないでしょう。 著者の精魂込めた取材に基づく膨大なfactと、それを読者に興味深く伝えるfictionの巧みな展開。以前読んだ銀行ものや自動車ものは、fictionが迫真性に欠けていて、factから浮いている面があった。しかし本作はあまりにも劇的。映画化されたのも当然!、と肯ける。
惨劇に襲われたローマ便を巡って、航空業を取り巻く様々な問題が露呈する。技術は日進月歩なれど、それを運用するのは昔も今も人間。日々の仕事の困難に立ち向かうすべを求める読者がいる限り、本書の価値は何十年経ようと些かも色褪せることはないでしょう。
ヘイリーの英語は密度が濃い。より多くの含意をより短い文章に収めるために、文法用語でいう省略や水準の高い語彙が多用されている。逸る気持ちを抑えて丁寧に読んでいきたい。