忘れじの傑作
黒いマスクで顔を隠した謎の騎士、快傑ゾロの恋と冒険を描いた、いわば西洋のチャンバラ。解説不要、とにかくお楽しみ下さい…と言いたいところだが、歴史的な背景がわれわれ日本人にはなじみがないので、簡単に説明する。 舞台は18世紀末から19世紀初頭、カリフォルニアがスペイン領だった時代。先に移住した宣教師や騎士が開拓に成功するが、後に本国から派遣された総督とその取り巻きが、先住の人々を迫害して開拓の成果を横取りしようとする。快傑ゾロは、迫害される人々の味方となって、総督派の悪い奴らをこらしめる、いわば "スペイン版ロビンフッド"である。ずっと昔この本を読み、今また原書で読み返した。ゾロの正体はもちろん、筋もほとんど覚えているにもかかわらず、今度もとても楽しめた。テンポが速くて読みやすいし、息詰まるアクションとコミカルなユーモアのブレンドが絶妙。 この小説を忘れがたい傑作にしているのは、ゾロよりもむしろドン・ディエゴだと思う。ゾロはとてもカッコいいが、いわば普通のヒーロー。一方、ドン・ディエゴはとてもおもしろい(時にはおかしな)キャラクター。ドン・ディエゴがいなければ、もっと正確に言えば、ドン・ディエゴとゾロの奇妙な組み合わせがなければ、この小説はこれほど印象的、これほど魅力的ではなかっただろう。 また、スペイン領カリフォルニアのエキゾチックな雰囲気が、生き生きと描かれているのも気に入った。