値段は少し高めですが、かなり充実しています
この非常に有名な物語の中で、ドリアンの賛美者であるLord Harryという人は、ドリアンが婚約をしたという情報が入った際に、興味深いことを言う。即ち、結婚すると人は自分を抑制するようになるが、そういう人には面白みがない、と。ドリアンは結局婚約を破棄し、彼の美しさと魅力を保ち続け、思いのままに毎日を送る。だが、その対価としての孤独と重荷を背負い続ける。この小説は短編~中編の部類にあたるのだろうが、非常に多岐な魅力に富んでいる。まず、上に書いたような一人の人間の運命の変遷を追うスリル、構成、会話のウィット、重厚なベルベットのカーテンに窓が覆われ一度もその窓はあけられたことがない、そうした部屋にいるかのような感覚、ミステリー小説の様なサスペンス…。ワイルドをデカダンの作家だと勝手な偏見をもって敬遠してきたのだが、この一冊で私は彼の虜となった。
これまでのカスタマーレビューにも書かれているように、この本には1891年版と1890年版が収められている。同時に、この本の研究論文、更にはワイルドの"The Critic as Artist"の抜粋もついていて、ワイルド並びに"The picture of Dorian Gray"を深く知りたい、研究しているといった方にはまさにお薦めの一冊だ。最後に、英語で読むと、ドリアンの会話の文体が若いときも40近くなっても変わらないことなど、翻訳するのがかなり難しい箇所も味わえてこの小説が一層楽しめると思う。
二つのeditionを収録
『ドリアン・グレイの肖像』の原書。ノートン社版。
いったん描かれたら老いることもない肖像画のドリアンと、生身のドリアンが
入れ替わることから始まる怪奇的な小説。
恒久的な若さと、罪を犯しそうもない美貌を保持することができるように
なったドリアンの行動と心情、周囲の人々との関わりを描く。この作品は、1890年版と1891年版とがあるのだが、この本にはその
どちらも収録している。また、全編にわたって詳細な注がつけられている
ため、研究する際などにも役立つ、良質の校訂版となっている。