はずれ。
The Merchant of Veniceは個人的にシェイクスピアの劇の中でもベスト
3には入る作品で、当然素晴らしい劇は耳から聞いたほうが、読むだけよ
りもはるかにいい。しかしこのHarperAudioによる作品は正直期待はずれ
だった。ShylockとLauncelot Gobboを担当している俳優はまずまずとして
その他の登場人物は情けないとしかいいようのないパフォーマンスで完全に殺されてしまっている。製作された年代の事も考慮しなければならないが
それでも効果音などもひどすぎる。劇を聞いているというより、ただ小説を
棒読みしているという感が非常に強い。HarperAudioのHamletなどは上出来
だっただけに残念だ。
シェイクスピア自学自習にお勧め!
シェイクスピアの作品は和訳も坪内逍遥さんや松本和子さん、小田島雄二さんの訳など、とても良い訳が豊富に揃っていて、手に入れることも(坪内逍遥さんのものは別ですが)簡単です。そしてそれらの訳を参考に英語の生のシェイクスピアを読み、理解し、さらに興味を深めて行くこともできます。 しかしここで出てくる問題として、テキストに何を選ぶかということがあげられます。当然のごとく和訳とは比べられないほどに英語のものは豊富に種類があり、何を選んだら良いのかわからないという状態に陥ることになるでしょう。
そのような問題の解決策として、初めて自学自習をしようと思っている学生さんにはこのケンブリッジ版をお勧めします。ケンブリッジ版は注釈が多く、右のページは本文、左のページ上段にはそのページまでの要約が英文で書かれてあり、中段には注目点や注意点そして学習法などが簡単な英文あり、下段には現代英語とは違う単語や説明が必要な人名が簡単な英文で説明してあり、それらがとても便利ですらすらと読み解くことができます。
長くなりましたが、初めてシェイクスピアを読もうとなさっている方には是非このケンブリッジ版をお勧めします。ケンブリッジ版で奥深い人間関係が表現されているヴェニスの商人を堪能してください。和訳では見えてこなかった点が鮮明に浮き上がります。
作品の枠を超えて生きるシャイロック
「ヴェニスの商人」において、金貸しのユダヤ人シャイロックが観客にアピールする力は絶大である。彼はシェイクスピアの時代には喜劇的に演じられたとも言われるが、現在彼をそのようにだけ演じることは不可能だろう。彼は今でも虐げられたユダヤ人の代名詞であり、過去にも多くのユダヤ系の知識人たちが彼に熱烈な共感を示してきた。しかし、当時の時代背景などを考慮すれば、シェイクスピアにユダヤ人擁護の意図があったとはまったく考えられない。では、どうしてこんな奇妙なことが現実になったのか?シェイクスピアが作中の登場人物になりきる能力は尋常ではない。他の作家たちなら、作者が登場人物の口を借りて自分の思いを代弁している、と感じさせる箇所に必ず出会うものだが、シェイクスピアにはまったくこれがない。彼の人物たちはめいめい自分の立場を主張し、しかもそれが圧倒的な説得力を持っているので、観客である私たちはいずれを重視していいか判断に迷ったり、また作者シェイクスピアの創作意図に疑問を抱いたりする。シャイロックは本当に悪役なのか? ヴェニスの商人たちは本当に正義なのか?
それにしても驚くべきは、シェイクスピアの鋭い観察眼である。シェイクスピアに触れる楽しみ,これは彼の世界を見る眼の凄さに触れることだ、と言い換えてもいいだろう。