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なぜ意識は実在しないのか (双書 哲学塾)

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なぜ意識は実在しないのか (双書 哲学塾)の商品レビュー

4.0 私的言語は不可能、と私は思う
 著者は本書末尾、「この講義で言おうとしていることは、言い得ない」と種明かしする(p157)。これは言語が第0次内包の相対化であり、その内部に消去されたものの痕跡は残らない、という主張と対応する(p68)。また自分の知覚を言語報告する場合、私は自分を他者化(=ゾンビ化)し全面的に志向的になる、とも(p131)。
 他方、私は言語化が消去するものと作り出すものを常に同時に生きている、とある(p68)。もし記憶が言語的なら言語の今秘性が成立し、われわれは過去の自己に対して他者=ゾンビになってしまうから、記憶は言語的ではないと言うが(p107)、これは第0次内包の特権性を確保すべきという著者の要請とも思える。
 かくて著者は第1次内包から出発し、遡及的に第0次を見出すという弁証法的・脱構築的戦略(piii、p156)を採る。これは幼児が他者とのコミュニケーションによって言語的世界(第1次内包)に参入し、その後に逆転が生じ「(第0次内包を語る)私的言語の可能性が言語にとって不可欠なものに転じることによって言語は完成する」(p36)という発達心理学的な筋書きと重ねあわされる。第0次内包は<これ>としか名指しえぬ独在性であり、言語の全体はこの内部にしかない。そして比類なき唯一の<これ>は探究を通じ、「世界の中の一個物に同定」(p145)されるという第2次内包の発見に至る。このあたりは、象徴界の問題として解釈できる。
 結局、脱構築特有の回りくどさと、独我論と戯れる不健康な語り口を除けば、それほど複雑な話でもない。ま、コミュニケーションの世界にはゾンビしか住んでいない、ってこと。ただ私としては、どうせ伝達不可能なんだったら第0次内包の前提など不要ではないか、とも思う。独在性なんてホントにあるのか? …と。
5.0 山カッコの<私>がついに消える
永井氏が一貫して追究してきた「私の独在性」の問題を、新しい材料と切り口から考察した新著。デイヴィッド・チャーマーズの大著『意識する心』を批判的に検討しながら、新しい語り口で問題が定式化し直される。そのポイントは二つあり、(1)過去・現在・未来という時制が一本の線形時間に並ばずに累進的に下降し続けるマクタガートの「累進モデル」を、「私」に適用して、「私」と「他者」は同一平面に並ばないことを示したこと、(2)「私」を「第ゼロ次内包、第一次内包、第二次内包」の三つに区別し、言語による志向性の文脈だけでなく、現実性−可能性という様相文脈も合わせて統一的に論じたことである。前著『私・今・そして神』では、独在的な<私>の「開闢」であるライプニッツ原理が、その<私>を「われわれの中の一人である私」に客観化してしまうカント原理との対比で語られた。本書では、その対比がさらに洗練されて提示される。世界はどこまでも「私に」現れるものであり、他者もまた「私に現れる光景の中の一要素」でしかないのだから、この光景の全体(=私の意識)が、光景の中の一要素である他者に属するはずはない。だから「他者にも意識はあるのか」という問いは、もともと誤った問いなのだ。にもかかわらず、「私の意識」もまた「各人のもつ意識」の一例として、one of themになってしまうのは、私が根底から言語化されており、「言語が見せる夢」(p146)のせいである。この論点を詰めた本書では、永井氏が愛用してきた山カッコ付きの<私>はもはや登場せず、一切の記述を廃した<これ>に取って替わられる(147)。
5.0 東洋の言語環境で哲学的キョンシーの問題を考察するというのはちょっと笑えるのではないかな、なんてふとどきなことも思ってしまう
 3日間の講演のまとめ。永井先生が語っているのは、意識が欠けた、クオリアが欠けた人間=ゾンビが可能であるとチャーマーズが『意識する心』などで語っている内容は間違っている、というか、クオリアの欠如を想定できるかという問題の周辺をもっと考えるべきだ、ということです。それより問題なのは《言語とは、世界を人称的かつ時制的に把握する力なんですね。そのことによって、客観的世界というものがはじめて成立する》(p.109)ということなんだ、と。クオリアが欠如した人間(ゾンビ)を想定できるかという問題をもっと味わうべきだ、というのが2日目までの講演の内容。なんとなく理解できるのはここらあたりまで。3日目も深刻な論議が繰り広げられるのですが、どうしても《なぜか私という唯一例外的なものが存在し、しかもそれが世界の中に無数に存在している通常の「意識を持つ個物」の一つでもあるから、このありふれた事実こそが驚くべき事件なのですよ》(p.150)という凄さが、味わえないんですよね…。
 毎日、質疑応答が行われるのですが、2日目の《ハイデガーは、他者と決して共有できない「死」こそが他者との根源的な共同性を作り出す最後の紐帯だと言っています。この話は、しばしば情緒的に読まれてしまうのですが、死が特別であるのは、それが文法的な同一性の基準を超えた、共有できないどころか他の同種のものと並列されることも不可能な、「これ」の水準を、それが指し示すからだと思うのです。彼の言う「存在」こそがそこに辛うじて開示されるわけです。いま問題になっているのは、そういう種類の問題であると理解してよろしいでしょうか》(p.111-112)という質問は非常に共感できるな、と感じました。
5.0 前人未到の一歩?
 1、物質にすぎない脳がなぜ意識を生み出すか? 2、意識を持つ者たちのうちなぜこの者が私なのか? この二つの問題は独立に見えるし、この著者も本書まではそう扱ってきたと思う。1の問題はもちろんあるが、それとは独立に2の問題もあるではないか、というように。
 本書においては画期的な一歩が踏み出されたと言える。それは(<私>が消えるなどという表面的なことではなく)、2から1を説明するという、おそらくはこれまで誰も考えたことがない、前人未到の一歩である。だが、そのような方針に徹すると、「意識」は全面的に言語的構成物となる。意識が「実在しない」とはそういう意味で、それはジャクソンのメアリーがゾンビであっても同じことが言えるという点に最も鮮やかに現れている(そしてマクタガートの時間論とは関係ない)。
 著者によれば、言語の本質は様相(現実性・可能性・必然性)にある。それは、要言すれば、何かを「現実」として把握するとき、それを「可能」なものの一つとして捉えざるをえない機構である。マクタガートが問題にしたような言語の「時制」機構にももちろんその問題はあるが、著者によれば言語の「人称」機構にも(言語である以上必ず)それが伴う。そのことが<私>だけの<これ>を(そう「語られる」以上必ず)可能なもの「の一つ」とするのである。
 「意識」概念の起源はそこにある(次には今述べたこと自体が累乗的に適用されることに)。このようにして「意識」が成立した後、はじめて心理学や認知科学や心の哲学が可能なるのだが、そこまでの仕組みが明らかにされていないため、それらの学問には基礎に混乱(チャーマーズが指摘しようと奮闘しているが彼自身が巻き込まれてしまっているような混乱)を含み、「砂上の楼閣」をなしている。
 …この議論は、ニュートン物理学に対するカント的基礎づけにあたるものを、上記の諸学問にも要求し、カント的な「カテゴリー」にあたるものを「様相」的性質を本質的に孕んだ「人称」概念に求めるもののように見える。およそ哲学上の大きな主張には真か偽かなどという低次の区別は妥当しないが、これもまたその範に漏れない。しかし、哲学者たるもの、せめてこのくらいのことは言ってもらわないことには存在価値がないということだけは確かだ。
3.0 やはり哲学は詭弁?でも面白かった!
久しぶりに哲学の本を読んだ。
冒頭の部分で、本のタイトルのように「なぜ意識は実在しないのか」分かったような気持ちになったが、その後「なぜ存在しない意識の志向性を説明しているのか」分からない。
結局、意識は実在するのか?

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