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デミアン (岩波文庫)

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デミアン (岩波文庫)の解説

 「デミアン」は、語り手の青年ジンクレエルの自己探求の物語だ。

   父母のちいさな「正しい世界」の外側をかいま見る少年時代、既成の価値観を受容できずに荒れ、自分の感性をたよりに理想を追い求め、時には人、とりわけ自分を傷つけながらも自分の内面を見詰め直す青年時代。そして、ついにありのままでかけがえのない自己をみいだしたときに体全体にみなぎるパワーと歓喜。少年期のにおいたつような追憶、嵐のような青年期の放蕩と混乱、霊的な初恋などの描写はヘッセ独特の叙情的なもの。実吉氏の典雅な訳文がひかる。

   さらに、この作品は隠れた真実や無意識の願望の「謎かけ」や「暗示」に満ちていて、読者を否応なく引きつける。ヘッセは作品発表当時まだ目新しいものであった心理学の手法をよく咀嚼(そしゃく)し取り入れている。

   既成価値や世間への違和感、自分は特別な存在であるという自意識、一方で密かに自分をさいなむ劣等感や罪悪感。人生の混迷期を乗り越えたヘッセが、この普遍的な青年の内面を渾身の力をこめて掘り下げるとき、読者はゆさぶられるような衝撃と共感を覚えるだろう。

   心理学的な「解釈」をするなら、超自然的な雰囲気をたたえ、ジンクレエルを導く謎の青年デミアンはジンクレエルのアルター・エゴ(alter ego)であろうし、結末でジンクレエルが瀕死に陥るのはデミアン=分身との同一化を果たし、本来の自己として再生するためのいわば必然的なプロセスでなのであろう。

   しかし、自分の中に静かに脈動する生命力が「本来の自己」という形を得たとき、人はこのいのちという奇跡を、何も恐れることなく十二分に「生ききる」パワーを得るのだ、というメッセージは、余分な知識なしでも十分受けとめられる。自己探求のさなかにある「青年」に、何度も読み返してほしい1冊である。(小野ヒデコ)

デミアン (岩波文庫)の商品レビュー

5.0 宗教葛藤を心に持ちつつも、徹底的に自己を追及する青春
禁欲的にひとつのことを成し遂げようとする姿は、励まされる。
職業、役割を選ぶための人生観ではなく、自分自身に到達することこそが真の人生観だという。そして、多くの孤独を体験してこその、自己への到達には、もっと深い孤独がある。

人は外に出て、また家に帰ってくるのと同じように、心もまた、悩み、立ち返りながら、日々をすごし、成長し、生きていくものなのだろう。

そして、その過程こそが、美しいものなのかもしれないと思った。
5.0 この本に出会えて良かったと思いました
このような本があったことすら最近まで知らなかったので、恥ずかしさを覚えると同時に、この本に出会えて心から幸福と思いました。

大衆と迎合できない主人公と私自身とても似通っている印象を受けたこと、友人デミアンの施しなど、大変感銘を受けました。

物語のラストはたいへん切ない印象でしたが、物語の途中にあった自己の探求と人生の意味について書かれていた内容に共鳴します。

孤独だと感じていた自分にとっては勇気を貰った本でした。(アンソニー・ストーなど色々読んでいます)

人それぞれ、大勢と慣れ親しむことよりも、自分が大事だと感じたことにこだわって進んでいる人には共鳴する本ではないでしょうか?

もう私は40歳ですが、この年でこの本を知ったことに落胆し暗くなってしまいますが、しかし勇気を貰ったことの方が大きく、これから自分が明るくなれる生き方を進んで行けそうです。
5.0 ぼんやりとしたものが形を持つとき
「デミアン」を読んでいく中で、誰しも必ず「こういう風に思うとき、あるある!」と思うと思う。
人によってその箇所は違うかもしれないけれど、ぼんやり思っていたこと、感じていたことを言葉にしてもらえる感触。
そういう共感って、気持ちいい。
自分の心の中が少し整理されてすっきりしました。
読んでみて下さい。
5.0 人間の本質を
学校の教科書にヘッセの作品が載っており、興味を持ったのが始まりです。初めは有名な車輪の下を読むつもりだったのですが、内容を見てみるとこちらのほうが面白そうだったので、その時は軽い気持ちでこの本を手に取りました。

いざ読んでみると、すぐに世界へ引き込まれていく自分がいました。思春期という難しい時代の中で幸せの意味を問う。あまりに若いに時代に多くの感情を持つ主人公の姿を見ていると人間について考えさせられます。自分たちにはシンクレエルのような体験はすることができないかもしれません。しかし、この作品で描かれる彼の心情に共感できることも多々ありました。この作品には本当に人間の精神の根本、本質、そして自分自身についてと、数多くのことを感じさせていただきました。

それにこの作品に登場する人物で、必要のない人はいないと思いました。タイトルでもある、主人公の運命を変えることにも繋がったもう一人の主人公デミアン。またシンクレエルの人生を狂わせたフランツ。とくに彼らはこの作品にとってなくてはならない存在だと思います。

もちろん文学に興味のある方は読んで損はないと思います。また少し批判めいて申し訳ないのですが、最近の恋愛小説や簡単に読める小説にばかり触れている若い人にもぜひ読んでいただきたくさんのことを感じてほしいです。

こんな話を学校の先生から聞かされたことがあります。「人は人生の中で必ず心を揺さぶられる素晴らしい本に出逢うことができる。」私にとってのそれがこのデミアンでした。私はまだ学生なので皆さんのように上手く表現することができませんが、ぜひこの作品の面白さだけは知ってほしいです。
5.0 "しるし"とは?
大人になればまったくどうでもいいような小さな嘘がおおきな恐怖心へ。
ガラスのような感受性に入り込む悪意は、少年の悲しいほど狭い世界を一変させてしまう。怯えきった心に差し伸べられる救い、デミアン。
友情とも師弟とも異なる関係、遥か遠くでもあり誰よりも自分の近くに在り続ける存在。その絶対的な何かに心を奪われていく少年。
"しるし"とはなにか?
政治的でもなく、宗教的でもない。それは人間の心の奥底にある心理、あるいは真理なのか。
この小説を読んだ者の心の奥深くにある"しるし"により、それも又、さまざまだろう。
それはまるで、読者にとって鏡のように映し出すものなのかもしれない。

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