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クレーヴの奥方 他2篇 (岩波文庫 赤 515-1)の商品レビュー 現代に通ずる恋愛心理と女性像
原作は1687年に出版されたフランス古典文学の代表作であり、作品の舞台はさらに1世紀あまりさかのぼったアンリ2世時代の宮廷を中心とした貴族の世界である、といえば、いかにも古めかしく聞こえるかも知れない。しかし、その優雅な世界で繰り広げられる恋の物語を、主役、脇役を含めた多数の人物の性格や言動を適確に描き分け、また、いつの時代にも通ずる微妙な恋愛心理を巧みに描いた作者の筆致には、古めかしさはほとんど感じられない。訳文も滑らかで読みやすい。ヒロイン、クレーヴの奥方の道徳観は、現在では古いと考える人も多いかも知れないが、時代を越えて尊重に値するとみる人も少なくないであろう。予期される第2の不幸を避けるため、奥方が自分の意志を貫くところは、むしろ現代女性の力強さを先取りしたものといえよう。評者が本書を読んだのは、1999年にポルトガルのマヌエル・ド・オリヴェイラ監督が本作品をもとに作った映画を見た後である。映画では舞台が現代のパリに移し替えられ、原作の大幅な修正がなされていたため、両者を比較しながら読む楽しみもあった。映画の原題名「手紙」は、原作には出て来ない手紙を指している。その反面、原作には、映画に取り上げられていない手紙に関する面白い挿話もある。なお、本書をを読んでいて、うすうす気づくのだが、自然描写がほとんどみられない。それのある唯一の箇所に訳者の注がついているので、やはりそうだったのかと思い、こういう書き方の名作もあるのかと感心する。末尾に収められている二つの小編は、結末において主作品と対照的なところがあるものの、似たような貴族の恋の物語であり、いささか食傷気味にならないこともない。主作品のための習作とみられているこれらの短編を先に読むのも、一つの手かも知れない。 脇役ながら激しい生きざま
ヒロインの奥方や、恋の相手ヌムール公より印象的なのが、彼女の夫クレーヴ殿であった。この人こそ、真に愛に生きた人といえるだろう。奥方と結婚したにもかかわらず、狂おしい恋心をもちつづけるクレーヴ殿。身を滅ぼすほどの嫉妬に苛まれつつも、どこか清らかで気高く、優しいのである。人間としてすばらしいだけに、その辛い運命に心打たれる。 本の最新売り上げランキング - トップ10
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