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ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

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ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)の商品レビュー

5.0 行きすぎた自由主義の末路
 アメリカという国は、ある意味旧ソ連の対極にある自由主義の実験国であるとおもう。
 ヨーロッパや日本のような歴史のない国では、自由主義が行き過ぎるとこのような
結果を招くという実例であろう。
 貧者の国、格差の国アメリカがよくわかる本であった。
4.0 太った腹は貧困の象徴
評論家の故・江藤淳はかつて、自身のアメリカ留学の体験を記した『アメリカと私 』という
エッセイ集の中で、入国当初に妻が病に倒れた時のエピソードを綴っている。基本的に医療
保険の制度がないかの国では、一日二日の入院程度でも莫大な金がかかってしまう。その
経験を通して「アメリカに来たのだ」という実感をともなって初めて「入国した」と、彼は述懐
している。

アメリカはたしかに自由の国だ。チャンスは誰にでも目の前にある。しかし、そのチャンスを
つかむ途上で一度でも失敗すれば(ここでなら病に倒れれば)それは、誰も助けてくれないと
いうことと表裏一体となっている。そういった過酷な“自由”なのだ。江藤が渡米したのは
1960年代末で、現代とは状況が違うだろうと、思うなかれ。本書を読めば、事態はさらに悪化
しているとさえ思える。

レーガノミクスに端を発する新自由主義は、アメリカのあらゆるものを「民営化」した。学校を、
災害対策を、医療を、戦争を。その後に待ち受けていたのは、一度転がり始めれば、底辺まで
ノンストップで転がり落ちていってしまう、ノンストップのジェットコースのようなノンセーフティ
ネット社会だ。

ただ本書の内容がすべて正しいのか。それは私に判別はできない。というのも、本書に通奏低
音するのは、そのような新自由主義への一方的な批判なのだ。あの政策の非は、確かに認めな
ければならない。だがそういったあまりにも短絡的、単純な因果の法則だけで、「アメリカと
いう現実」を包摂できるのかといえば、そうでもないだろう。それではかつて、「全ての悪は
資本制」のかけ声で迷走したマルクス主義と同じではないか。
著者にはそのように見えたのかもしれないが、それは彼女が直に触れた当事者たちと、近すぎ
たせいかもしれない。

金融資本主義によって太りに太ったアメリカの腹は、周知の通り昨年秋の金融恐慌によって
破裂した。その破裂“以後”を、本書とそれを書いた時の著者はまだ知らない。その後、アメ
リカで何が起こっているのか、それをルポした「続編・貧困大国アメリカ」も読みたくなった、
2008年度新書大賞受賞作品。
2.0 読むべき本ではあるけれど。。。
自由主義を標榜しセーフティネットが整備されていないところに、大量の移民が押し寄せる、これがアメリカが貧困大国になっている主因だろう。もともとアメリカは1国の中に富んだ先進国と貧しい途上国が同居しているような国だが、その後者の部分に光を当てた本。

ルポとしては面白いが、残念ながら筆者が繰り返し主張する「新自由主義政策(民営化・小さな政府路線)」が貧困を招いたという主張の検証は非常に弱いのではないか。この主張が先にアタマにあって、繰り返しそれを主張しようとするために、訳の分からない文章が随所に出てくる。

例えば「テロより怖い民営化」というコラム。これは「民営化されたNY地下鉄の運営がお粗末である」という論旨かと思ったが、中身を見るとそうではないようだ。(そもそも文章を読む限りNY地下鉄は民営化されていないらしい。だとすると何が問題なのか?) 文章は地下鉄の話から脈絡なくイラク戦争民間請負会社の話に振れるが、それでは公式?の軍に任せた方がよりよいのだろうか??? 軍が起こした数々の問題を見ればそうとは言えまい。

一読する価値のある本だとは思うが、自分の意見を押し付けるように書き込むより、むしろ淡々とルポに徹した方が良かったのではないか? その方が、より多くの読者を考えさせることができたと思う。
4.0 戦争で利益を得る
多くのレビューで紹介されているので、ちょっと視点を変えて。
9.11の同時多発テロ以降、アメリカは報復ムードに染まり、筆者はその空気に恐ろしさを感じたという。アメリカ国内を報復ムードに染めたのは、戦争支持のマスメディアであった。筆者は過去の例を紹介し、マスメディアを有する大資本が軍需関連会社ともつながっている可能性を示唆した。
戦争をビジネスにする人間がいるということを肝に銘じておく。マスメディアに踊らされない賢い市民にならなければ、われわれにも明るい未来はない。
4.0 現実に何が起こっているのかを直視し続ける必要があると思える良書
日本にいると、ウォール街やシリコンバレーがアメリカの象徴でアメリカそのものであるような錯覚に陥る。そうではないと、この本はアメリカの現実をレポートしている。

どうしてサブプライムローン問題がこれほど拡大したのか。それは、サブプライムローン事業が、過激な市場原理が経済的弱者を食いものにした「貧困ビジネス」であり、マーケットとしての低所得者層を狙ったビジネスであったから。

どうしてあんなにアメリカ人は太っている人が多いのか。それは、貧困層が、安くて調理が不要でカロリーが高いジャンクフードを食べる社会システムとなっており、これと食品メーカのフードビジネスと密接に関係しているから。すなわち、貧困と肥満は相関関係にある。

などなど、これまで表面的にしか理解していなかった問題を、次々と解き明かしてくれる。ルポといっても、ありがちな冗長なインタビューを多用せず、あくまで具体的事例の紹介として現実を補強する役割を果たしている。このため、現実が圧倒的説得力を持って理解できるようになっている。アメリカの教育制度・医療制度・徴兵制度・戦争そのものでさえ、市場競争原理万能の行き過ぎた民営化によって、本当に問題があることを指摘している。アメリカ大丈夫かと言いたくさえなる。

翻って日本も、一昔前の「一億総中流」時代から、規制緩和・民営化・自己責任などのキーワードとともにアメリカの新自由主義に追従してきたが、「貧困」「ワーキングプア」「ネットカフェ難民」「派遣」「格差」など近年一斉に問題視されてきた社会現象が発生している。アメリカのように、厚い中間層がいつの間にか貧困層に転落することになっていないか。無関心でいることはできないと思う。少なくとも、現実に何が起こっているのかを直視し続ける必要があるように思う。

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