アメリカ先住民の深い智慧と日本人の心の問題
臨床心理学者である河合隼雄氏が、アメリカ先住民であるナバホの
人たちを訪ねた時の文章を纏めたものであるが、そこは河合氏の
こと、単なる紀行文ではない。
キリスト教文化・アメリカの白人たちによる迫害の歴史の中で、
自分たちのアイデンティティーを守り、ナバホ・ネーションという
アメリカ合衆国にも認められた独立した「国」を確立している
ナバホの人々。
その人々の中心にいるメディスンマン(シャーマン)を訪ねる中で、
筆者は常に日本人の心の問題を考え続けている。
紀行文と臨床心理学的考察が、幾重にも重なり合ったような不思議な
内容となっている。
今でも西部劇にでてくる「インディアン」像を信じている人には、
アメリカ先住民と神、自然の在りようを、理解する入門書にもなる
良書であると思う。
心理療法家のアメリカ西部旅行記
ネイティブ・アメリカンを訪ねた9日間の旅行記である。筆者が過去にメディスンマン(シャーマンのこと)のロールシャッハテストの結果を分析したことがあり、そのとき、「人間性の豊かな能力の高い人々」だという結論を得たこと。また、筆者が専門とするユングがアメリカ先住民の知恵について早くから指摘していることもあり、今回の旅へとつながっている。 ネイティブ・アメリカンの苦難の歴史、神話、自然の捉え方などが簡単に解説されている。しかし、残念ながら「メディスンマンとの対話を通じてその(癒しの文化の)深層を明らかにする」とまでは行っていない。旅行記としての限界であろう。
筆者の河合隼雄氏の本を読みたい方には満足が行くであろう。しかし、ネイティブ・アメリカンの歴史を知りたい方は、「わが魂を聖地に埋めよ」(ディ・ブラウン著)、文化について知りたい方は「イシ―北米最後の野生インディアン」(シオドーラ・クローバー著)、現在のナバホについて知りたい方は「ナバホの大地へ」(ぬくみちほ著)がふさわしい。これらはこの本の中でも薦められています。