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ながい旅 (角川文庫)

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ながい旅 (角川文庫)の商品レビュー

4.0 気骨とか凛とか忘れ去られた矜持を思い起こす優れたドキュメンタリー
終戦直前、撃墜された米軍機の将兵を残虐非道にも日本刀で殺戮した事件があったことは知っていた。また、その責任者が戦犯として処刑されたことも知っていたが、この本を読んで、責任者である岡田中将は無差別爆撃をして民間人を殺傷した戦争犯罪人として米兵を扱ったことがわかり自らの不明を思い知らされた。さらに国際法上の非道さを法廷で理論整然と述べ「法戦」で日本人と日本陸軍の名誉を守ろうとした姿勢にうたれた。このような姿勢のリーダーは近頃とみに少なくなったと思う。なにかしらの責任を背負う時、繰り返し読み返したい本となった。
5.0 小さい頃世話になった名教師のアルバム写真を想いださせる岡田中将
大岡昇平氏の戦争モノでは、多くの読者さんらは「野火」「俘虜記」「レイテ戦記」を思い浮かべられるんちゃいますやろか。わては、シニカルで、かつどこかフランス哲学か何かの描出的な心理描写の文章が大好きなんですけども、「俘虜記」の横に並んでおった本書も買うてきて、読みました。最初は、大岡氏の晩年の比較的小品、くらいにしか思っておらず、読み出させていただきました。

「野火」「俘虜記」も大岡氏の実体験に基づくノンフィクション的作品と、読者はどうしても思いますけども、ほしたら、本作は岡田司令官に基づくノンフィクション作品。大岡氏の岡田中将への強い共感が感じられて、実に懐が深い作品じゃ。例年終戦のころになるとテレビでみる太平洋戦争関連の番組は、ともすると重い感じがせんでもないですけども、本作は、そういう意味突き抜けた感じがする。死や戦争のおろかさを感じさせるというよりは、超越した、強靭な岡田資氏の精神がすがすがしく、かつ共感に満ちて強く感じさせられる作品なんですなあ。

巣鴨の、岡田氏の亡くなった跡を今度訪ねたいと思うと共に、大岡氏のあのクールな、特にかなり軍執行部への批判的な「野火」や「俘虜記」での文脈は、何ゆえやったのやろう、と思います。大岡氏も歳を重ねて、愛国的なものに共感を深めていかれはったのか?あくまで、岡田氏への個人的共感なのか?戦後の不安定な世相で、大岡氏も本心を書けへんかったのかも、ということをほのめかすくだりも本書に出てきとります。

本書冒頭にある、岡田司令官の家族写真と戦中、戦後の写真、この厳しい中にも優しさを感じさせる写真は、わての小さい頃の、小学校の校長の厳しさと優しさを想起。実に含蓄が深い、夏の宝物のような作品です
4.0 岡田中将は立派だけど…
無差別爆撃を実行した後日本軍によって捕らえられた米兵を、軍律法廷にかけず、処刑したために、戦後B級戦犯として裁判にかけられた、岡田資陸軍中将の、「法戦」を描いたものです。大岡昇平さんの、岡田中将に対する敬意に満ち溢れています。
たしかに、部下のしたことで自分は関与していないと、責任を逃れようとする司令官にくらべると、全ての責任を背負おうとした岡田中将は立派だと思います。

ただ、現代の私たちからは、日本軍も重慶爆撃などを行った以上、米軍の爆撃を非難することが道義的にどうかな、とも思ってしまいます。そもそも真珠湾攻撃はアメリカに対する不法な侵略だという認識がないために、アメリカに関するかぎり、日本が被害者という面で見がちです。あるいは、本土で制空権がとれないのに、戦争をやめられなかった戦争指導者に問題があります。これは岡田中将の責任ではありませんが。
5.0 岡田中将の美しい生き方を淡々とした筆致で描く
 映画『明日への遺言』の原作です。

 名古屋の空襲のときに、不時着した米兵を処断したという罪状でB級戦犯とされ、刑死した岡田中将の裁判の様子を淡々とした筆致で描き出していきます。岡田中将は、裁判で、部下をかばい責任はすべて己れにあるとしつつ、無差別爆撃をした米軍もまた国際法違反であることを論理的に訴えていった人物です。

 著者は、なるべく正確かつ客観的に戦犯裁判の背景や岡田中将の発言、家族とのやり取り、遺書などを記していきます。冷静な筆致だからこそ、極限状況に置かれた中での美しい生き方、武人としての責任の取り方が浮かび上がり、胸に迫ります。また岡田中将が戦時中に置かれた状況の困難さと決断と行為の意味について考えさせられます。

 本書は、映画の公開に合わせて出版された新装版です。活字も文庫本にしてはそれほど小さくなく、読みやすいです。

 ただ、本書に収録された学者の解説は少々蛇足のように感じます。著者の大岡昇平氏が、なるべく賢しらな道徳的観点を交えず、ただ岡田中将の生きざまを描写しようと徹したのに対し、解説は、現代の視点から若干頭でっかちの論評を加えているように感じ、本書の趣が損なわれているように思います。

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