加筆版です
この単行本は、元々文庫書き下ろしとして角川文庫で上梓されたものの加筆版。
有栖川&火村コンビ第二作。
二人のボケツッコミ(主に有栖川のセルフボケツッコミだが)もスムーズになってきていて、まずはそれが楽しい。舞台設定は奇妙だが、毎回のことながら人物設定が巧みで書き分けもわかりやすい。動機は恋愛かそれとも財産争いか?という正に「色か欲か」という基本だが、容疑者が次々と出てきては最後まで二転三転、火村もあちらこちらへと迷う。本格推理として期待を裏切らない作品だ。
「国名シリーズ」の短編が限られた紙数の中でのアイデア勝負、純粋パズルの一気呵成な感じであるのに対し、長編はじっくりと二人のやりとりが楽しめる(この傾向は、長編最新作『マレー鉄道の謎』ではアリスの余裕も垣間見せつつますます期待が高まる!)。
特にこの『ダリの繭』では火村の意外な面や微笑ましいやりとりが多い。何せ、のっけからアリスの出版と火村の誕生日祝いを兼ねてフランス料理屋で食事である。友人が少ないのかどうなのか。もちろんこのシーンも本編に関係があるところがまたにくい。その他にも・・・(あとは本編でご確認を)
陰鬱に終わらない読中感、読後感も、悲しみを損なわずに余韻を残す。枝葉の部分の構築も細かくて隙がない。
特に犯人が明らかになる大詰めの書き方は悲しくもすがすがしい。
有栖川も知らない火村の過去も、次作『海のある奈良に死す』以降でも少しずつ明らかになっていくことだろう。こちらも興味津々だ。