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まず最初に、文章は非常に美しい。 トルストイの書く文章は、まさに19世紀ロシアの至宝であったように思う。 内容については、まず理解するのが難しいというのが一つ。 また、パスカルの『パンセ』とカントの『純粋理性批判』とヨハネ録を読んでおくとより理解が深まるかと思いました。 何でもありの快楽主義的大乗仏教の下に育まれた20世紀後半から21世紀初頭の日本の文化に慣れ親しんで育った私には、トルストイの、デカルト的二元論と一神教のキリスト教を絶対視する認識の下に定義された、近代のエートスを多分に反映した人生や幸福は、何だか酷く的はずれのようにも思えたのですが、論としてはなかなか面白いと思いました。 時間がある時に硬めの読書をしたいなら、是非。
トルストイが人生というものにたいして、はっきりとした結論を書いている作品である。 作家であり、社会運動家、敬虔なキリスト教徒でもあるトルストイの考察は、しかし、意外にも仏法に極めて近いか、仏法そのものが説く哲学を論じている。(実際に読んでみると彼も仏法を研鑽している片鱗がうかがえる。) 一部を挙げてみるならば、彼が説く「愛」とは、仏法的には菩薩行そのものであり、「理性」とは、仏法で説くところの宇宙的な法、生命の法、妙法と重なる。また、彼のいう「動物的な自我」は、六道輪廻に該当する。その他にも彼のいっていることには、仏法の煩悩即菩提、業、縁起観、永遠の生命、宿命転換、境涯革命などの内容があり、言葉は違うことながらも言っていることは、仏法そのものであり、驚愕する。 読者は、トルストイのように真のキリスト教徒であるならば、仏法哲学と相反することはありえないことを知るであろう。この点、なぜ教会が彼を現代でさえ破門にしたままなのか理解に苦しむ限りだ。
数多くある人生論の中でも、もっとも重厚な構成で内容が立派な ものが本書である。 時に難しいとも評される本書だが、確かにキリスト教についての 或る程度の基礎知識がないと分かり難い事があるかもしれない。 それでも大事なところは繰り返し言葉を代えて述べているし、 具体的な例えも書かれているので読み込めば理解できると思う。 さて本書は人間の理性と愛を重視している点が特徴で、 科学技術偏重の風潮に対しては痛烈な批判をしている。 「外界に対する理性的意識の関係は肉体が滅びても消えることはない」 として理性の大切さと不滅さを説く。 また、「快楽の追求は限界まで近づくと、それを失う恐怖のために 苦痛となる」「自分を捨てて、すべてを分け隔てなく愛することが 必要だ」「究極的な愛の形は幼子の『ぼくはなんだっていい』という 言葉にある」として愛の大切さを説く。 しかしキリスト教とは一線を画し、信仰ではなく理性による判断が 大切だとしている。 これらを実践できると、とても立派な人間になれそうな気がするが、 とても難しいことではあるだろう。 老齢になり達観できなければ中々このような境地には辿り着けない。 そもそもトルストイ自身が、晩年において理性と愛を踏まえた行動を とったのか疑問には思う。 ただし、トルストイの小説や、この人生論が未だに多くの人々に 読まれている事実は、確かに理性の不滅性を実証しているように 思える。