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さまよう刃 (角川文庫)

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さまよう刃 (角川文庫)の商品レビュー

4.0 「正義とは何か?」
 東野圭吾の作品は、「ガリレオ」シリーズや「加賀恭一郎」シリーズに代表される、「探偵」物も多いが、本作品や「天空の蜂」「手紙」などのような「社会派」作品も多い。個人的には「探偵物」はもとろん面白いと思う。しかし、本作品のような「社会派」作品も同じくらいに評価している。賛否はあると思う。しかし作者は賛否になることを望んでいるのではないだろうか。

 東野圭吾の「社会派」作品を読むといつも深く考えさせられる。そして、「この小説を世の中の多くの人に読んでほしい」と思う。また、「この小説のテーマについて議論をしてほしい」と考える。東野圭吾の社会派作品はそこまで考えさせられるだけの「魅力」と「力」がある。

 繰り返しになるが、ぜひ本作品を読んでほしい。「このような人に」ということは書かない。世の中に生きるすべての人に読んでほしい作品だ。そして考えてほしい「本当の正義とは何か?」ということを。意見は人それぞれだと思うが、それでいいのだ。正解は一つではない。いや、正解なんてない。それぞれがそれぞれの意見をいい。それぞれの「正義」というものを見つけ出してほしい。

 
4.0 関西人パワー
 少年法云々を考えるにはちょっときつすぎるな、と言うのが正直な感想です。最大のトリック、種明かしも、面白いですが、この種犯罪について考えるには不謹慎と言う感じです。
 さらに、言うなら、例えば携帯の履歴なんかは、どう扱ったのか、そんなところも、詰めが甘いなと思います。
 ペンションの人についても、登場の仕方が中途半端な気がします。

 そんなにつまらないなら途中で放り出したかと言うとそうではなく、もう、本当に読む時間を何とか作って一心に読みました。圧倒的な力でグイグイ読ませるのです。500ページ弱にも及ぶ長編ですが一気に読ませます。
 その力は何かと言うと、たぶん関西人の力ではないかと思うのです。わがまま、勝手、言いたい放題、そして、がめつい、でも、最後のところはアホなほど正直と言う圧倒的なパワーです。私も関西人であり、こういう理屈抜きとも言える様な話が大好きです。

 あまり、文学賞には恵まれていないようですが、これからも、こんなすごい作品を作り続けて欲しく思います。

 
3.0 ある一定の役割を果たしている本ではありますが…
少年犯罪やその関連の法律にまつわる問題を題材にした小説です。
特に娘を陵辱され殺された父:長峰が、その犯人達の1人を殺しもう1人を追いかけ逃亡する自らの行動に関し、「悪いとわかっていてもやらずにはいられない」という心の葛藤を持っているその様子は、現在の少年法の矛盾に最も苦しむ存在として、感情移入させるものがあります。
また、子供の問題だけでなく「子供が犯罪を含めたある種の問題に関わった場合、親としてどういう考えを持って子供と向き合うべきか」という問題を取り上げたところは大きく評価できます。
この小説にはそういった問題に対し、目新しい解決策となりうる展開があるわけではありませんが、問題を物語の中だけのことでなく現実のものと考えさせ、「自分ならどう考えるか」と考えずにはいられなくなる小説でありますから、「問題提起本」としての役割は果たしていると思います。

ただしこの本はノンフィクション小説でなく、東野氏の小説。
であれば、書かれた趣旨はどうであれ、単なる問題提起だけでなく小説としての完成度が求められるのは当然。
長峰氏の逃亡過程で、確かに「2人目の犯人はどうなるんだろう」と気になり最後まで読ませられたのは事実ですが、同時に「なぜここまで大胆な行動で、つかまらないんだろう?」と思わせる部分があるのは読んでいて気になりました。
大胆な行動が逆に警察の目をくらませているとか、その行動の裏で警察につかまらないための綿密な計算を長峰氏が行っているなどの様子が伺えるならまだしも、どう考えてもその様子はなく、「フィクションだ」とか「携帯の逆探などがしにくい時代背景」とか「指名手配犯の写真が公開されても、大概の人はまさか手配犯がすぐ近くにいるなんて夢にも思わない」などといった面を引き算しても、話の流れにちょっと不自然さを感じました。
3.0 本作の枠では捉え切れない問題
本作は、悲劇のどん底に叩き落された犯罪被害者遺族の男性が、
加害者に対する復讐を遂げようとし、
その過程を追う中で、少年犯罪に対する現行システムにつき、
著者なりの問題提起をしようとしたものと推察します。

さて、発端となる犯罪については言葉もありません。
これ以上ないむごい描写により、全ての読者が主人公の立場を追体験させられます。
そしてとりあえず、読者は主人公を全面的に支持するポジションに置かれます。
そこから、主人公長峰の内面描写や刑事たちの言葉、
別の被害者遺族鮎村の葛藤や架空のテレビ討論などを通して、
読者は現状のシステムにつき様々な意見を投げかけられ、考えさせられます。

そして、物語は紆余曲折を経て劇場型のクライマックスを迎えます。
憎しみの刃はさまよった末にどこに突き刺さるのか…。

私は、本作の問題提起自体には賛同しますが、
エンターテイメント作品の枠内に収めきれているかというと疑問に思います。
まず、被害者に感情移入させるべく展開される冒頭の事件の現実味、
そして何より加害者少年の紋切り型の描き方に物足りなさを覚えること。
次に、長峰の葛藤はまだ酌むべきものがありますが、
論点については、従来の見解を並べただけという印象を受け、
もう少し掘り下げるか、強引であれ一つの見解を前面に押し出していただきたかったです。
結末も正直言って、すっきりしない感がありました。

この問題は、現実の事件に根ざしたノンフィクションの枠組みの方が、
よりふさわしいのでは、と感じます。
もっとも、本作が力作であることは否定しませんが。
1.0 甘い。
東野圭吾氏の作品を読むのは、今回で2回目だ。前回は、「手紙」。しかし、印象は変わらない。話の展開を維持する設定や知識に、甘さがあるということだ。
 レビューなので結末までは触れないが、警察に追われる立場の人間が、携帯を使っているにもかかわらず、その人物がなかなか特定されない。今の時代において、携帯から微弱電波が各電話局のアンテナに流れ、その位置情報が明らかになることは素人でも知っていることである。なのに、この追われる立場の人が何度携帯電話を使っても、「位置情報」について、明らかになることはない。作者の都合が、その背景に感じられ、興ざめを禁じえない。
 
 

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