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村田エフェンディ滞土録 (角川文庫 な 48-1)

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫 な 48-1)

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村田エフェンディ滞土録 (角川文庫 な 48-1)の商品レビュー

4.0 後半のせつない感じがいい
1899年、土耳古(トルコ)に留学中のエフェンディ(学者)・村田青年の滞在記録。
同じ下宿にいるドイツ人のオットー、ギリシャ人のディミトリス、英国人のディクソン夫人や、トルコ人のムハンマドと共に
過ごすトルコでの生活が随筆風にたんたんと記録されていきます。
同宿の友人たちと心温まる交流をしながら、時代の流れに巻き込まれそれぞればらばらになっていく。
読後感に青春の夢の後、といったそこはかとない無常感がただよう青春小説でした。

小説紹介の文章に「神様同士の喧嘩に巻き込まれたり…」とあったので、もっとファンタジー色が強いのかと思いましたが
そういう感じではなく、生活の中で感じた不思議という感じで、作者の独特なセンスを感じました。
このセンスはまねできないなという感じで、とっても素敵な感じです。

ディミトリスのいう「−私は人間だ。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない…。」という言葉が心に残りました。
5.0 見事な梨木香歩さんの世界
これは、1899年にはるか土耳古(トルコ)に文化研究のため招聘された村田青年が、かの地で過ごした替えが得のない青春を回顧録のように語る形になっている。エフェンディとは、トルコ語で学問を究めた人に対する敬称のこと。いわば、村田先生トルコ滞在記といったところか。
ゆったりと流れるスタンブールの時間、町並みの色、そして、におい。村田青年が身を寄せた学者下宿屋の住人たち、、、ドイツ人の考古学者、ギリシャ人発掘調査研究家、世話役のトルコ人のおやじさん、その下宿屋敷の女主人であるイギリス人女性。そして極め付きは、絶妙のタイミングで合いの手をさけぶおうむ-----その下宿の住人たちの、ささやかで、ほほえましい日々が、哀愁と愛着をもって、つづられている。異国の地で、身を寄せ合うこの学者下宿屋敷の住人たちの友情にやがて、忍び寄る土耳古の革命の足音。日本に帰国した村田青年のもとに届く、革命の知らせ、そして、大戦が起こり、かの地でかけがえのない時間を共にすごした友人たちが、散っていく、、、、
国家とはなんであろう。民族とはなんであろう。異国の地に生きるということは、文化とは、、、異国の神とは、、、、そして、自分が生きてきた土着の文化とは、、、
これは見事な梨木香歩さんの世界です。
私は、この本がとても好きです。梨木香歩さんの、異国のものであろうと、母国のものであろうと、人や物に対する、鋭い洞察力と観察力、そしてそれを、優しく、つつむ視線がとても、とても、好きなのです。
5.0 百年と少し前の土耳古の街のざわめきが聞こえる
 1899年(明治32年)、専門の考古学研究のため、土耳古(トルコ)で生活した村田エフェンディ(註:エフェンディというのは、先生というくらいの意味)の滞在日記。語り手の私こと村田が、ディクソン夫人の下宿先で生活を共にした、国籍も色々の友人たちとの交友録を綴ったものです。
 それぞれの国の文化や風土が違うように、彼ら友人たち、独逸(ドイツ)人のオットー、希臘(ギリシア)人のディミトリス、土耳古人のムハンマドの思想や考え方も実に様々です。日本人である村田にしても、そう。十人十色。でも、国籍も様々な彼らが同じ住居で暮らし、同じ時を共有した思い出は、本当にかけがえのないもの。その、何にも増して代えがたく大切な思い出が、はるか異国からの呼び声のように村田の心に響いてくるラストは、感動的だったなあ。胸を揺さぶられました。
 英国人のディクソン夫人の家で飼われている鸚鵡(おうむ)が、いい味を出していました。時折、絶妙の言葉をしゃべるんですよね。あんまり絶妙なんで、あちこちでくすりとさせられました。
 綿貫征四郎が書き付けた『家守綺譚』と、話がつながるところもあります。本書か『家守綺譚』、どちらかお読みになった方は、もう一冊もぜひどうぞ。両方とも読んでいないという方は、できれば『家守綺譚』を読んだ後に本書に入ったほうが、読み心地が一層増すかなあと思います。
5.0 東と西の交流
 梨木香歩さんの初めてのエッセイ、「春になったら苺を摘みに」を読めば、「異文化」を著作テーマのひとつにしていることの素地を知ることができます。
 <理解はできないが受け容れる。>ということの必要性を、梨木さんはものがたりで語ってきたのでしょう。
 けれど、このエッセイが発売される前に、世界情勢は大きく変わってしまいました。

 まるでバベルの塔が崩れていくような、おそろしい光景は、いまでもしっかりと思い出すことができます。
 けれど、異なる国の友人を持つ梨木さんにとっては、その様を、もっとずっと、自分に逼迫したものと感じたことでしょう。
 だから、この物語を書かずにはいられなかったのではないかと思いました。
 最後の章を読むと、異国に住む友人を持たないわたしにも、そのくやしさがひりひりと胸を焼き、思わず涙がこぼれました。

 主人公の村田は、明治時代に生きた人ということなのですが、そのことを体現している文がまた、ユーモアがあって、とってもおもしろい!
 そして、これまた絶妙のタイミングではいる、鸚鵡のセリフ!
 思わず何度も、ふふっと笑ってしまいました。
 考えれば、梨木さんの著作の中で、そういう点では一番明るいお話かもしれません。
 トルコでの日々の楽しさが、ほんとうによく伝わってきます。
 だからこそ、この結末にはなおさら、くやしさが掻き立てられました。
4.0 とても深く、衝撃の走る物語
私は、登場人物の名前がカタカナの人がたくさん出てくるのが苦手。
19世紀に生きた主人公が使う難しい言葉達。漢字で書かれた国名。
どれもこれも、私が物語に入り込めない要素ばかりで、かなり困惑。
正直、半分読んで面白くなかったらそこでやめようと思いながら読んでいたのです。最初の4〜5章くらいまでは。
でも、いつのまにやら全然気にならなくなりました。
オットーが、ディミトリスが、ムハンマドが、今ここで生きているかのように感じられたのです。
それぞれの思想が、ひたむきさが、共存しあえたひととき。
そしてそれを引き裂く戦争。
本当に大切な事は何?
いろんな事が私自身の胸の中で爆発するようなラストでした。
鸚鵡でなくとも「もう十分だ!」と叫びたくなる。
そしてこの物語が、私たちに託す物の存在もしっかりと感じ、本を閉じました。
「家守綺譚」を読んだ後に読むと、隠された繋がりもあって面白いかも。

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