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官僚とメディア (角川oneテーマ21 A 62)

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官僚とメディア (角川oneテーマ21 A 62)の商品レビュー

4.0 なるべく刺激的な疑似現実を作る娯楽・官庁情報公布・半広告代理産業。
漠然と抱いていた事件の印象と真実とがひどく齟齬していることに驚かされる。
例えば耐震偽装事件では、最も悪いのは弁のたつ研究所の所長、ついで建設会社の社長と支店長、ヒューザーの社長、貪欲なこれらの人間の圧力に屈した建築士とイーホームズの社長、この順で全員悪いという印象を私は漠然と抱いていた。当時のメディア、特にテレビ報道からそんなイメージ、つまり複合汚染、共同謀議のイメージを与えられていたからだ。プロの建築関係者なら、当時から真実に近い認識を持てたかも知れぬが、漫然とテレビや新聞を見ていたかなりの人が私と類似した誤解をしているのではないか。
本書では世間を大騒ぎさせた幾つかの事件を例に取り、その真実と世間の一般的な印象とがいかに異なるものであるかを挙げながら、組織メディアの弱点とその原因を分析している。客観報道主義という欺瞞の結果7−8割が官庁情報の垂れ流しになっていたり、真実の解明ではなく営業利益とそれにマッチする扇情的な疑似現実作りに堕しているのだ。
裁判員制度の章は大手広告代理店が組織メディアと組み情報・世論を歪曲する例証になっている。ここでは真実追求の代わりに世論誘導がその本質となってしまったジャーナリズムの死骸が解体されている。
1、営利主義ー事件の扇情的脚色・変形ー集団リンチ。2、広告代理店支配ータブー拡大。情報統制
2、客観報道主義と記者クラブー情報の官僚統制、権力監視能力の劣化、組織メディア幹部の官僚主義化、記者の良い意味での侠気の喪失
結果;情報は大雑把・不正確なものになる。実態に外れた報道。官僚の世論誘導に加担。リンチと弱者苛め。
5.0 メディアが公的機関のインサイダーと化している事実
 著者の「特捜検察の闇」を読んで、さらに読んでみたいと手に取ったのがこの新書。著者自体が共同通信に所属していたという経験から、いまや通信社・テレビ・新聞という主要メディアが総じて公的機関のインサイダーと化していることを、具体的な例を挙げて解説していく。共同通信のスクープ報道自主規制、「耐震偽装事件」なるものの本質と顛末とに真っ向から対立するテレビ報道・国交省・特捜検察の過剰な対応、「村上ファンドインサイダー事件」「ライブドア粉飾決算事件」についてのメディア報道・特捜検察の同様な対応、NHK番組改編についてのNHK側の自主規制と朝日新聞の追及へのしり込み、裁判員制度タウンミーティングをめぐる最高裁・電通・地方紙連合の癒着と、個々の具体例についての経過と問題性を最低限明確に記しているので、論旨が抽象的になることがなく、興味深く読み続けられる。

 また、先般話題になった漆間巌の名がライブドア事件の章で、TBSの大型報道番組のキャスターである後藤謙次の名が共同通信のスクープ自主規制の章で、最近テレビで見かけた郷原伸郎の説がライブドアに対する特捜検察の捜査に疑義を示している部分でそれぞれ取り上げられているのが、本書で扱われているテーマが現在進行形なのだということを教えてくれる。

 もはやジャーナリズムという言葉の実質は、本書のような書籍にしか生き残ることができないのではとさえ思えてくる。こんな主張が流通できるうちに読んでおきたい一冊。
3.0 個々の話題を貫くものが弱い
メディアが官僚や検察起源の情報を無批判にたれん流していること、メディア自身の利害のためにニュースを取捨選択している事実を告発した書だ。取り上げられている話題は、共同通信と北朝鮮の関係、耐震偽装事件の特捜とメディアの暴走(実際は姉歯の単独犯であった)、ライブドア−村上事件の同様な事態、NHKと朝日新聞で争われた『女性法廷』事件での朝日新聞の腰砕け、などが扱ってある。著者はその原因が、記者クラブ制や客観報道主義、新聞の記者に対する締め付けなどであると述べている。

それぞれの事件の見方として、それなりに面白かったが、個々の事件はかなり様相は異なり、全体としてはまとまりなく感じた。私としては、メディアと警察・検察権力が結びついた倫理の押し売りと、法治主義の崩壊に焦点を当てて欲しかった。わが国のメディアの病理が一番現れているのだから。
5.0 事実を見えにくくする構造
本書を読んで一番痛感したことは、事件の全体像を私がいかに知らないか、である。ライブドアや耐震データ偽装事件などで、メディアの報道が沈静化した後に出てきた事実からは、当初とは違った事件の輪郭が見えてくるのだが、既存メディアは自らが形作ってしまった事件像を訂正し、新たな全体像を示すようなことをしない。

しかし、それはメディアだけの問題ではない。広告代理店や検察、最高裁までもがそこに関与しているである。その構造を本書は明らかにしているが、再構築するのは難しそうである。

断片的な情報を繋ぎ合わせて事実を明らかにして行く作業の担い手は、本著者のような存在を除いて、今のところいないようである。したがって、既存メディアの報道に対しては、本書で明らかにされた構造上にあることを踏まえて接することが、現時点における最良の策と思い至った次第である。
3.0 普遍のテーマ
政治とメディアの関係については多くの執筆家が提言してきている。この著者は共同通信で働いていた記者。したがって内部事情を踏まえた上での提言になっているぶん完全第三者的な発言よりも重みがある。姉歯事件についての考察が、マスコミ報道にはない切り口で参考になった。責任は誰にあるのか?これが日本の抱える様々な社会問題の主要テーマなのである。

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