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前巷説百物語 (怪BOOKS)

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前巷説百物語 (怪BOOKS)の商品レビュー

5.0 又市がいかにして御行になったのか。
「巷説百物語」シリーズ第4弾。
第1弾の『巷説百物語』よりもずっと前、主人公の又市がまだ御行になる前の話。

又市がまだ若いっていうこともあって、『巷説〜』や『続巷説〜』なんかに比べると仕掛けがショボいし、その点を楽しみにしている人には前作までと比べて面白さは落ちるかもしれない。
が、今作は当時の江戸の街の雰囲気や、武士とそれ以外の階級との慣習の違い等が前面に押し出されていて、シリーズ中最も「江戸」の雰囲気をよく感じ取れる内容でリアル。
また、一つの一つの仕掛けはイマイチでもやはりラストに向けて話が加速するところは面白過ぎてしょうがない。
これまでの作品と比べて何度も出てくる良い感じのキャラが多く、感情移入もしやすい。
この話が『後巷説〜』まで繋がっていくと考えると凄い話だと素直に思う・・・

仕掛けにあんまり期待さえしなければ間違いなく楽しめるはず。
読み始めは「前作までの方が面白いかも・・・」と思ったが、一番好きかも(笑)
5.0 職人又市の修業時代
巷説百物語の最終巻。時代順としては4冊でもっとも早く、又市の修業時代、ということになる。

6編の中編は、いずれも構成・表現ともにほぼ瑕瑾のない見事な出来映えであると思う。作者らしい(しかし私の嫌いな)、独特の「逆説止め」文がまだわずかに残っているけれど、初期作品に比べて見違えるように腕を上げている。毎度施される仕掛け自体は現実には確実性に乏しいと思われるため、リアリティーを求める立場からは難癖のつけようもあるけれど、人物の造形がきちんと描かれているから、フィクションと割り切れば何の問題もない。

ただ私は、又市の過度のヒューマニズムに違和感を覚えた。私は、「この世に存在すべきでない命」は間違いなくある、と思っている。問題は誰が裁き、誰をそう認定するか、ということであり、人として他人を裁く資格をもつ絶対者などいない、という点である。この二点は分けて考えられるべきであるが、死刑の論議ではこの点がいつも混同されているし、又市の理屈も同様である。裁く「人」など居ようがないから、やむを得ず「法」という別のシステムが作られているのだ。私刑と死刑との違いはここにある。確かに又市らの行為は私刑に属するから、又市の直感はある意味で正しいのであるが、「誰も死んではならない」という無際限の生命尊重は時代にも現実にもそぐわない。

こののち8年の潜伏を経て、又市は一党の頭目として小説の表舞台に再登場する。最初に書かれた「巷説百物語」に続く、ということになる。制作順に読むのがよいか、時代順に読むのがよいか。文章の仕上がりから考えると、たぶん前者であろう。
4.0 "非人情"の世界を思わせる京極版「草枕」
「巷説百物語」シリーズ中の仕掛け人、小股潜りの又市の若き日々を描いた作品。

冒頭の「寝肥」は又市が仕掛け人稼業("損料屋"と言う概念が面白い)に入るキッカケとなった事件。「どすこい」を思わせる軽いノリと又市が他人の仕掛けの観察者となる趣向で楽しませてくれるが、又市の漆黒の闇の過去を期待していた読者には肩透かしのスタート。「周防大蟇」は又市が仕掛け人としての手腕を初めて見せた作品。仲間の元公儀鳥見役の山崎がイイ味を出している。武家の"しきたり"を初めとする社会の縛りに対する怒りを通り越した諦観の念が渋い。この二作を読むと作者が「草枕」の人生観・文体を意識している事が窺える。「二口女」は継子ものの体裁を借りた"逢魔が刻"もの。「血の繋がりよりも縁」と言う又市の言葉がヤケに胸に染みる。全編を通じ、堂庵のトボケた学者ぶりがオカシイし重宝だ。「かみなり」では損料屋のピンチに準レギュラーの"御燈の小右衛門"が救いの手を差し出す。又市と小右衛門の出逢いである。「山地乳」は江戸の裏社会で化け物と呼ばれる祗右衛門との死闘と又市の出自を絡ませて描いて、本作で一番の構成力を誇る。「旧鼠」は冒頭で後の又市のお札売りと「御行奉為--」の謂れが出て来て可笑しいが、本筋は既刊のシリーズでも登場する不死身の祗右衛門との闘いである。おぎんも登場させるサービスぶりだが、宿縁の深さと実体のないモノを退治する難しさを痛感した又市は、遂に闇の世界に入る事を決心する。「御行奉為--」。

これまでのシリーズの特徴であった妖異性・異界性は薄れ、仕掛けも見劣りがする。代りに、"青臭い"と呼ばれながらも人情と非道の狭間で漂う又市の姿が印象的。漱石流"非人情"の世界を思わせる京極版「草枕」。
4.0 時代の雰囲気
作者が時代の雰囲気を醸し出すことを疎かにしているとは思えない。
しかし巷説シリーズを読んでいていつも気になるのが、「又市殿」「お甲殿」
などという武士(浪人も含め)の言葉遣い。また「○○藩士・何某と申す」
のような江戸時代にはあまり使用されていない「藩」の多用や陪臣の妻を「奥方」
と呼ぶこと等々。もちろん江戸時代の言葉で全部を書くわけではないが、「藩士」
であれば「○○家 家来」とした方が「江戸時代らしい」のではないか。

これまでは「まぁ仕方がないんだろうな」と思っていたが、本書巻末の参考文献の
中に三田村鳶魚の名前を見つけて違和感が強まった。三田村翁が口を酸っぱくして
指摘し続けてきたことであるから。巷説シリーズも京極堂シリーズも「言葉」が
命だと思うのだが。別の作品では徳川をトクセンと読ませるなどの三田村翁風の拘りを
見せているだけに不可解。
4.0 命の重さ
それぞれの話を解決するときに
なるべく人死にが出ないように...
と、悪いとされてる人間だって、周りの人にしてみれば大事なんだと
それを言いつのっている割には、話が進んで行くにしたがって
命が軽く扱われている感があるのは何故なんだろう。

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