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秋の牢獄

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秋の牢獄の商品レビュー

4.0 3つの秀作ファンタジー集
 3つのストーリー共に、最初は漠然とした既視感があったが、読んでいくうちに作者のオリジナリティに感心したファンタジー作品集だ。 
 「秋の牢獄」では、主人公の境遇を共有できる人がいる、という設定が面白かった。孤独から仲間との邂逅と充実、そしてエンディングまで楽しめた。
 「神家没落」はちょっとダークだ。主人公の跡を継いだ人間の行動をみて、主人公同様「なるほど」と思ったものだ。これも着想が面白い。
 「幻は夜に成長する」、これはもう一種のホラーだ。エピソードや時間の経過を膨らませてもっと長編にすることもできたと思うが、コンパクトにまとまった今の状態の方が逆に余韻が残って良いのかもしれない。 
 なお単行本の装丁装画が非常に魅力的だ。ぜひ手にとって眺めて欲しい。
4.0 逃げ出せない!
『秋の牢獄』
『神家没落』
『幻は夜に成長する』
三つの話が収録されている。

どの話も独立した短編だけど、テーマは「逃げ出せない」ってこと。

『秋の牢獄』
女子大生の藍は同じ一日、11月7日を繰り返している。
同じ会話、同じ大学の講義。11月7日に眠りにつき、朝目覚めると再び11月7日。そしてまた同じ会話、同じ大学の講義。何度も同じ11月7日を繰り返す藍。

自分以外のすべてが同じ繰り返しの藍が何十回目かの11月7日を迎えたとき、いつもと違う人物が現れた。藍と同じ境遇の人たちとが存在したのだ。

同じ境遇の今まで会ったこともない老若男女が、11月7日を繰り返す状況のために集まる。だからって誰もどうしたらそこから抜け出せるのかわからない。
なぜそういうことになったのか、どういうふうに決着がつくのかを気にしてはいけない。
一緒に閉じこめられた仲間。その仲間の中でもいろいろなもめ事が起きる。
そして一人、また一人と減ってゆく仲間。

たとえば恋愛関係にあって
「なんとなく冷めてきたから、イヤになるまでつきあうより、今のうちに別れたい」
「なんとなく冷めてきたけど、好きじゃなくなったわけじゃないから、別れるなんて考えない」
って2つのタイプがあったとしたら、このお話は前者。

『神家没落』
日本全国を移動している家にとりこまれてしまった男の話。
その家から逃れるには、身代わりに家にいる人間を呼び込まなければならない。

んーと、主人公が身代わりを見つけてからが面白い。
ただ、起きる事件は好きじゃないけど。

『幻は夜に成長する』
3つの話の中では一番好きだった。
幻術使いの祖母に育てられた少女。
祖母を亡くし、幻術を封印して普通に生きていこうとするが、彼女の持つ力を利用しようとする者たちや、彼女の力を知り恐怖におびえる恋人や友人たちに普通に生きていきたいという希望をくだかれる。

この3つ目の話が一番やるせないく悲しい。
なんとかならないのかねー、なんとかしちゃうとお話がつまんなくなるのかねー。
でもかわいそうだねー。

これで3冊目の恒川光太郎。
この人はオススメです。
5.0 大傑作を、もう一度味わうために
同じ日の繰り返し状態に陥ると

やはり「仕事」はしなくなるんですね。

『昭和三十年代主義』

昭和三十年代主義―もう成長しない日本

の著者 浅羽通明が手作り発行している(本屋・アマゾンでは

販売していない)『流行神』のNo.231〜232が本書について

触れています。

押井守の『スカイ・クロラ』と

『うる星やつら2・ビューティフルドリーマー』そして

『秋の牢獄』を並べてあることを論じていますが

あの恐ろしく不気味な「北風伯爵」がさらに怖くなること

間違いなしです。『流行神』をご存知ない方は

なんとか手に入れて読んでみることをおススメします。

振り返ると自分の後ろに北風伯爵が接近していると

感じる毎日。

どこに連れて行かれるのかは、最近少しずつ見えてきたような・・・
4.0 相変わらずノスタルジックですが
「夜市」と「風の古道」のタッグがあまりに最強すぎて、 それと比べてしまうと多少物足りない感の残る一冊。 表題作「秋の牢獄」。
心のどこかで恐ろしい結末を期待していただけに、あの曖昧なラストは正直どうなんだろうと思ってしまった。読者に委ねるタイプの話は確かに謎めいていて幻想的ではあるが、やろうと思えば恒川色満載のオチをつける事も可能であったのではないか? まあ、リプレイネタとゆうよくある題材を扱っているにも関わらず、ありふれててつまらない等の批判が少ないのは、それだけ恒川さんがネタを自分のものにしている証拠。そこはさすがといった所か。 「神家没落」は「風の古道」の別バージョンといった感じ。この本の中では一番恒川さんらしい作品。ただ、「幻は夜に成長する」もそうだが、最近の作家さん(伊坂幸太郎氏等)の作品には、極端な悪意を持った人間がさらっと出て来るので、なんだかそこが物足りないというか安易とゆうか…。こう…江戸川乱歩作品なんかに見られる、背筋の凍るような得体の知れない不快で深い悪(洒落ではございません…)が欲しいのです、私は…。 そんなおぞましい悪が出て来るようになった時、恒川作品の魅力は更に増すような気がする。 「夜市」や「風の古道」の二番煎じのような話ばかりでは、その内きっと飽きられる。 …と批判のような事ばかり書いていますが、この本がおもしろくなかった訳では決してありません。 恒川さんの世界を十分に楽しめる作品。 本の装丁も内容にあっていて素敵です。
4.0 閉じ込めらるなら…
普通の生活をしていたのに、ふとしたきっかけから「閉じ込められた人」を描いた短編集。
時と場所に閉じ込められた2作品は、「夜市」や「草祭」とは、また違った作風で、日常にありそうな感じが恒川作品の新境地という感じで良い。
最後の作品は、妖しいおどろおどろしい世界の雰囲気で、恒川ワールドを漂わせる。
ただ、やや中途半端感があるので、前2作のようなイメージでそろえた方が統一感がある一冊になったかもしれない。
時と場所、どちらかに閉じ込められるなら私は『時』を選びます。
(選べるならば・・・ですがw)

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