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美について (講談社現代新書 324)

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美について (講談社現代新書 324)の商品レビュー

1.0 何だか評判がいいようですが
 私はこの本を読んで美学などというものには近づきたくないなと思いました。異なる意見として書いておきます。明らかにまちがっているのは、「東洋と西洋においては、芸術や美についての理念がまったく歴史的には逆の展開を同時に行なってきた」ことを説く90ページから94ページのあたりです。中国の絵画が唐や宋の時代にどれほど徹底した写実主義を実現したかという事実をを無視して、ただ観念的に東洋と西洋を対比した無意味な議論ですね。
 この著者は、古典的なものがお好きで、その基準からはずれる「美」や美・芸術についての研究は評価したくない、という態度があちこちに見えます。問題は、そういう傾向や自分の教養が古典偏向、ヨーロッパ中心主義的であって、そうでないものに対して鈍感・無知だということをじゅうぶんには自覚していない点です。
 芸術そのものが好きだという方、作家の方には、お勧めできません。
5.0 美学をやるなら読んでおいて当然の一冊。
 大学紛争直後の1973年の本。簡素な本だが、なぜ今道が思想的に大物だったのか、あらためてわかる。しかし、本としての字組がひどい(句読点が無意味に二分詰めで、節の行間もない。)そのうえ、この人、まともに句点を打たない。だから、長文になると主語と述語の対応が怪しくなる。
 それでも、読むべき本だ。とくに一章と二章。新カント派的な分析と構造の万能主義に対して、ヘーゲル、ニーチェ、ハイデッガーを踏まえて、独自に、悟性より上位の理性に美学を位置づける。その論旨はきわめて平易明快。古典的定義の真善美の一体性から離れられないのが難だが。
 第三章は雑談。第四章、五章は芸術学。六〜最後は美の社会性。つまり、このへんは、思考素材が生で羅列され、あまりこなれていない。プロの着目点として、孔子の美学とかを持ってきたのは、興味深いけどね。
 しかし、基礎教養の無いいまどきの一般の大学生には、こんな本でも、もうムリだろう。モーツァルトとブルックナーの切り換え目がベートーベンのピアノソナタ110番だ、とか、大海原の錦鯉はシャガールの色だ、とか、言って、ニヤっとできるのがいるとは思えない。それでも、せめて、美学や芸術学の関連を学ぶなら、分析と解釈の違いくらいは知っていてほしい。
 この本、今道先生の十年の後輩に当たる渡辺二郎先生には、かなり思うところがあったらしく、二十年後の93年に『芸術の哲学』という放送大学の講義をしている。これも本になっているので、合わせて読むとよい。
5.0 美の形而上学
この本はそんなにやさしい本ではない。
「美」はそのようなものであり、いかにして存在し、どういう意味を持つか、そうした問いに答えてくれる本です。

ちょっと古いのとなんかで、全体に文字や文が細かく印刷されていて、少し読みにくい。
まあでも減点するほどのことではない。

こういう「本格的な美学」が肌に合わない人は、佐々木健一「美学への招待」を読んでみることをオススメします。
こちらはわりと軽い感じで書かれていて、美についても本書とはまた違った解釈をしています。
芸術や美学を志す人は、この2冊は読んで損はないでしょう。
5.0 『名著』
 東京大学名誉教授にして哲学美学比較研究国際センター所長でもある著者は、日本の美学研究の第一人者である。このような略歴を持つ著者が届けてくれる「名著」が本作である。ここで注意しておきたい点は、本作が「美の形而上学」であることだ。つまり、「絵画の美」、「音楽の美」といった個々別々の「美」に対する考察ではなく、「美そのものとは何か」という考察であることだ。(この問題意識を見出すために『ヒッピアス(大)』プラトン著が良いと思われる)
 本書の構成は、登山にたとえるとよいかもしれない。「美という価値」と名付けられている頂上へ、芸術作品・社会機能・人格など様々なルートを用いて、登頂を目指すのである。著者と共に歩みを進める意義が十分にある書物だと、小生感じている。
 そうは言っても、押し付けがましいのならば少々困るが、『…私の責任による体系を示すことによって、読者の美についての思索を刺戟するためであります。』(p3まえがき)という冷静な視点なので心配はなく、ハッとさせられる言葉に溢れている。その後の思索に必要な参考文献も十分に備えられている。
 感受性と思索のバランスについて高めたい方に手にしてもらいたい、一冊である。
 太鼓判
5.0 目から鱗
音楽が好きで、楽しんで来たが、60歳を過ぎると若いときのように闇雲にのめり込めなくなってきた。同時に、自動車の騒音もモーツアルトのシンフォニーも物理的には共に空気の振動にすぎないのに、前者はうるさく後者は心地よい。何がこの違いを生じさせているのかなどという問題意識が生じて来た。これはもしかすると「美学」という学問に関係するかもと思いこの本を読んで見る気になった。読んでみて、楽しかった。音楽の楽しみ方というか、芸術一般に対する認識が変わった。美学などに関心がでるなどとは夢にも思っていなかったのに、である。

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