タイトルに異議アリ
ジャンヌダルクと銘は打っているが、この本の基本的な内容は、
中世の女性の神秘性であり、
ジャンヌダルクはその代表例の一つとして程度の扱いしか受けていないように感じる。
また、ジャック・ル・ゴッフの提唱した超異端のコンセプトに
非常に心酔しているのだろうか、この本のいたるところでは
超異端について著者の考えや事例が延々と述べられている。要するにこの本に書かれていることは、ジャンヌダルクではなく、
中性に存在した超異端の女性達の社会的立場や功績、人生などを
書き綴っているものである。
タイトルに、異議アリ。
神の声を聞いた救国の少女、魔女としての火刑、そしてフランスの守護聖女
日本で最も有名なフランスの女性はマリー・アントワネットであり、ジャンヌ・ダルクはそれに次ぐと思われる。しかし、マリー・アントワネットはハプスブルク家から嫁した者であり、いわばよそ者である。フランス生まれのフランス人の筆頭はジャンヌ・ダルクであろう。そして、ジャンヌ・ダルクこそ、「フランス」と呼ばれる土地に住む人々に「フランス」という国家を意識させた最初の人物だった。 ジャンヌ・ダルクは神の声を聞き、神の命令に従って王太子のシャルルを戴冠させ、男装してイギリス軍と戦っているところを捕らわれ、魔女として処刑された。しかし、死後に裁判は取り消され、20世紀に至ってフランスの守護聖女として「聖女伝」に名を連ねることとなった。本書では、ジャンヌ・ダルクの波乱に満ちた生涯を中心テーマとしてすえつつ、関連する幾つかの問題が検討されている。第一に、「神の声」とは何なのか。彼女だけが「神の声」を聞いたのかという問題である。何人かの女性が取り上げられている。第二は、中世における魔女裁判についてであり、「魔女」とされることにはどのような意味があるのか、なぜ「火刑」なのかが説明されている。第三は、なぜジャンヌ・ダルクが魔女とされなければならなかったのかの点である。これは、中世において女性が「男装」することにどんな意味があるのかという問題に関わる。第四は「聖女」についてであり、どのような人物が「聖女」として列伝されているのかの説明がある。
本書のクライマックスは、裁判におけるジャンヌ・ダルクと審問官のやりとりである。彼女の最期の瞬間である。気高く純粋な少女の悲劇的な結末の意味は、今なお考慮するに値する重要な問題である。
本書は、内容が十分に整理されておらず項目の立て方が乱暴である。また表現に配慮が足りず難解と感じる箇所分が少なからずある。そうした難点はあるが、総じて良書と評して差し支えないと思う。