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粉飾国家 (講談社現代新書)

粉飾国家 (講談社現代新書)

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粉飾国家 (講談社現代新書)の商品レビュー

4.0 国を理解するためのヒント
書籍に付けられたタイトルに関心を抱いて、私は本書を手にした。

巷で騒がれている郵政民営化の是非論。その背後にあり真の改革の対象とされるべき国家会計・国債・財投債・特殊法人・民営化等の意義と構造。政治経済学の知識を持たない私にとって、TV・新聞等の情報だけではこれらをイメージすることは難しい。

「年金」という制度を題材として、上のいくつかのキーワードをどのように関連付けて捉えることが必要であるのか。理解を促し、少なくても1つの捉え方を示してくれていると感じる。

メディアでの氏の発言は時に恐ろしさを感じることがある。反感を覚えることすらある。本書の中でもそのような記述がところどころに見受けられる。反感や攻撃性を感じる部分は読み飛ばせば良い。

必要性を感じる部分、共感を持つことができる部分。これらを掴み取るだけでも、日本が抱えている問題点の数々を認識・整理することができ、今を思考する材料を与えてくれると私は感じた。

確かに新書の紙数制限からか、詳細までのすべてを論じることができないという氏の苦労もうかがえる。

本書は著名な論客の著書として手にするのではなく、純粋に1冊の「知識を与えてくれる新書」として目を通しておいても良いのではないかと感じさせられる。

読了後、本書のタイトルに氏がどのようなメッセージを託したのかを、私は今あらためて考えなければならないと感じる。

4.0 無責任体制下の年金制度
90年代の末に世間を騒がせた証券業界の不祥事は損失の隠蔽に関わるものだった。損失は「先送り」や「飛ばし」という常套手段によって隠蔽されていることが表沙汰になり四大証券の一角である山一証券が倒産に至った。同社のトップは損失の隠蔽が大蔵省の示唆によるものであったと主張したがもちろんお役人がそんなことを指示するはずはないということで彼らは罪に服した。このように損益の操作は「粉飾」とよばれて犯罪になる。したがって日本を「粉飾国家」と規定する本書のタイトルはきわめてセンセーショナルである。
その粉飾国家の最大の粉飾事例は言うまでもなく国民の年金制度である。そこで損失(基金不足)は未来の高度成長という一相場をあてにして「先送り」され、どこからも目の届かない日銀や特別会計や特殊法人というお膝元の子会社への「飛ばし」によって隠匿される。もちろんこんなことが永遠に続けられるわけはない。日本の年金制度は危機に瀕している。
問題の性質上実際の状況が部外者の目に見えないように仕組まれていることは理の当然だろう。著者は「何よりも、情報がセンサーとなるべき人々や機関に正しく伝えられ、それに基づいて市場や社会の仕組みが調節制御されてゆくフィードバック関係が至るところで寸断されていることに、閉塞の原因がある」と言う。それではどうすべきか。最終章「年金財政を政府から切り離せ」というのは正しいスローガンだと思われる。しかし著者の努力にもかかわらず新書版わずか20頁で委細を尽くした議論は望むべくもない。
3.0 恐怖をあおっているだけなのはどっちか?
金子教授のスタンスは、マスコミの国会議員年金未加入問題などのネガティブキャンペーンとバッシングに惑わされず、問題の本質を見ていこうというものだが、自身の本の内容も「年金の未積立金が480兆円(厚生年金430兆円+国民年金50兆円)もの規模に膨らんでいる」と人びとの恐怖心を煽っているだけのように思える。

どうして、こんなことになってしまったのか、ということに関しては、40%近い未加入・滞納者がいるというのと、年金積立金の運用が極めて不調だからだ。個人的には年金未加入・滞納者は許しがたいとは思うが、人びとはバカではないから、特に貰える額の少ない国民年金なんかは払いたくないという気持はわかる。

しかし、とにかく、年金については、専門家でもわからないことが多いというのが本当だったんだな、ということを確認できただけでも読んでよかった。民主党が年金改革法案を提出した際に、自民・公明両党が「具体的な数字が示されていないから無責任」だと批判したが「実際は、与党自身も計算できずに官僚たちに計算してもらっているだけであって、そういう批判をする資格はない」(p.37)というのはこの本の文章のなかで一番きまったところだ。

4.0 そうか、日本社会は粉飾天国だったんだ・・・(泣)
日本に「粉飾国家」であるという「定義」を堂々と与えたことは、少なからぬ貢献であると思う。

本書では、タイトルとなっている「粉飾国家」という概念をベースとして、財政赤字、年金、特殊法人などの問題が論じられている。改めて財政面の脆弱性・危険性について考えさせられる。新書版なので、一連の財政・年金問題について概観・総括する目的で読むのもよいと思う。

本書において「粉飾」とは、砕いて言うと、情報操作により適切なフィードバックが妨げられ、その結果システムが機能不全に陥ってしまった状態を指す。

「粉飾」という「ゴマカシ」は、程度の大小はあれ、至る所で行われている。それは多くの国民もわかっている(感じている)ことである。新聞などで報じられる不祥事・疑惑は氷山の一角に過ぎないことも・・・。そんなことは「常識」であるが、「粉飾」が日本社会に巣くう病根であるいう意識を喚起させた意義は大きいと思う。経済モデルをいじって○(マル)だの×(バツ)だの言っているだけのエコノミストには書けない本である。

4.0 乱暴だが真摯な指摘
 本著作に限らず、氏の立論の特徴は、巷間に流布する主要な議論を
二項対立的に整理した後、氏が整理した「問題の本質」を抽出し、
ぶつけるというスタイルを執っているように思われる。

 その過程で、二項対立項とされたものの”戯画化”に近い捨象や、
「本質」とされたものの、時としてオリジナリティの欠如した叙述を

見る事があり、また設定した対立軸により、「本質」的な議論の選択
、強弱が変化し、また、必ずしも説得的な論旨では無い事も多く、
胡散臭さを漂わせる事すらある。

 しかし、にも拘わらず、氏は非常に「まっとうな論客」である。

 氏の論述は、片方の立場に立てば意図的に触れずに済ます領域(例えば

自由主義者であれば所得再配分の問題)にも目配りをしている。また、
戯画化された論述に対しても、留保の形で叙述を怠っていない。これは
両方に嫌われる、いわば「味方を無くす」リスキーな論述である。逆に
言えば「告発」に留まらない知的誠実性を伺うことができる。

 また、本書で展開されているのは、只の無責任官僚批判→民営化論でも

無ければ、エスタブリッシュメント批判ではない。「元の情報が隠された
ところで、情報を受けても責任逃れをするところでは、官民の主体論など
ただのすり替えに過ぎない」というのは、当たり前過ぎる事だが、この
当たり前を言う事がどれほど大変な事か。

 ただ惜しむらくは、どのように情報の「フィードバック」を確立してい

くかという点ではやや説得力を欠く。例えば、税方式であっても、政府当局
が情報を隠す可能性があるという点では、社会保険庁とぎりぎりのところで
は大差はない。また、公共空間を分権化した処では、かえって「村八分の
論理」の元に陰湿な隠蔽が行われる可能性もある。

 要するに、どのようにして「丁寧な設計」の元で「現行制度、民営化論

よりも『センサーに感知されやすい』制度」を構築するか、について説得的
な論旨を提示できるか、それが氏の立論の是非の試金石となる。氏が切り開
いた潮流が、一過性の放言に終わらぬ事を期待したい。

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