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ソシュールと言語学 (講談社現代新書)

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ソシュールと言語学 (講談社現代新書)の商品レビュー

5.0 素人には言語研究史が分かって収穫
第1章 ソシュールはこう考えた
第2章 ソシュールの考えはどう継承されたか
第3章 花開くソシュール
第4章 構造主義言語学の課題

著者は1957年(福岡県)生まれ。東大卒,同大で大学院単位取得退学。成城や北大で勤めたあと,本書刊行当時は名大(教授,47歳)。著書に『コトバの謎解き ソシュール入門』(光文社新書),『町田健のたのしい言語学』,『町田教授の英語のしくみがわかる言語学講義』『日本語のしくみがわかる本』など。「日本語文法にも精通しており、文部省科学研究費で和仏機械翻訳のための基礎的研究に取り組む・・・[中略]。また最近ではタモリのジャポニカロゴス等のテレビ番組にも出演しているが、歴史的仮名遣いや漢字の音訓など彼自身の誤認に基づく誤った発言がそのまま放送されるケースもあった。[中略] 同番組で時東ぁみのファンであることを公表した。」(Wikipedia)。大先生の公表としては面白かろうし,名大受講生も増えただろうけど,これで授業はやりにくくなっただろうなぁ。教授会で吊るし上げられてるんじゃなかろうか・・・。


本書要旨はソシュールを中心とする現代言語学概説。第1章で始祖ソシュールの思想を概説し,第2章で始祖以降の言語研究動向を概説し,第3章でソシュール学派(=構造主義言語学)の隆盛を説き(バンベニストと機能主義),第4章で現代における課題を以て締めくくるという非常に古典的な展開。


素人の私にとっては,継承者集団としてのプラハ学派とコペンハーゲン学派とか,じっくり文字をなぞらないと発音さえ覚束ないイェルムスレウって人物とか,言語研究史が分かって収穫だった。(667字)
2.0  誰に向かって書いているの?
 どういう層を対象とした本なのだろうというのが第一印象。言語学をある程度学んだことのある人には分かり切った内容であるし、初心者にとっては術語が多くて混乱するかもしれない。 
 また、副題の「コトバはなぜ通じるのか」については明確な解答が示されていない。
 いずれにしても、言語学の方向性はぼんやりと示されているので、これから学ぶ人には参考になるかもしれない。
4.0 赤ん坊が良く寝ている理由とは
 自宅近くの古本屋で ソシュールの「一般言語学講義」を買ってしまい いきなり原典も読めないだろうということで 解説書として本書を手にした。つまり 言語学には全くの素人が読んだということである。

 前半のソシュール自身の思想に関しては かなり分かり易かった。ソシュールの「一般言語学講義」をぱらぱらと見た限りでは そもそも日本語が難解で いささか悲観視してきたが 本書を読んだ事で 少なくとも ソシュールに関してイメージが出来た点は大いに役立ったと思う。

 後半のソシュール以降は 正直難解であった。やはり「基礎体力」がない中で マラソンに出たようなものだったのかもしれない。最近は難解な本を繰り返し読むようにしているので 後半部分は二回目にとっておくしかない。

 言語学は面白い。そう思えた点が本書の徳であり 著者の努力である。僕らが日頃 所与として使っている言葉を見直すと 驚くほど豊穣な世界があることを垣間見た。興味深いのは 既に僕らが無意識のうちに かように高度な言語をマスターしている点にある。
 僕は 赤ん坊が一日半分寝ているのを見て 最近納得するようになってきた。赤ん坊くらい短い間に驚くべき質と量の勉強をしている「人間」はいないのだ。それは疲れるだろう。

 言語もかような量と質を有した難物なのだ。
5.0 使い慣れたコトバの中の未解明
丁寧で慎重な言葉遣いで、豊富に例示しながら、「関係性」という性質が事物一般の性質を正しく見極める際に非常に有効な手段になるというソシュールの発見を解説する。構造主義というものがそもそもどういう考え方であるのか、言語学とはどういう学問であるのか、そのどちらに悩んだときにも参考になる良書。

個人的には、ソシュールやイェルムスレウの禁欲的で、徹底的な姿勢に感銘を受けた。言語学にとどまらず、人文・社会の学問が、どうやったら健全な科学でいられるのか、共通する課題のように思われる。
当然だと思われることも一旦は疑ってかかり、これだけは絶対に正しいとして受け入れられなければならない「公理」を発見するところから取り掛かる。表面的に演繹的な議論を安易にとらず、客観的に観察される事実に立脚して厳密に追求する。それだけの慎重さや誠実さが必要とされる。
evidenceが不明瞭だからといって論的な整合性だけを重視して、やっつけの論文を書かないように気をつけようと思った。反省。
5.0 語学に取り組むすべての人々へ
言語学を専攻しているわけではない私にとって、本書がどのような点で有用だったかということについて書きたいと思います。

その前に、本書の構成について。
町田氏は、まずソシュール自身がどのように考えていたかということを、『一般言語学講義』の読解に依拠する形で示しています。本書の中では、ソシュールは、言語学の方向性と課題を示した人物として位置づけられているようです。
次に、そのソシュールの思想が、どのように継承されていったかということが示されます。つまり、言語学史の素描です。プラハ学派、コペンハーゲン学派、時枝誠記、バンベニスト、マルチネなどの理論が紹介されます。
構造主義言語学という一貫したパースペクティブのもとに、言語学史の素描が行われ、最後に<構造主義言語学>の今後の課題が示される、という全体構成になっています。

私にとって興味深かったのは、構造主義言語学の課題の章です。この章には、語学を学んでゆく上で、極めて有効な考え方が含まれていると感じました。とくに、「限定度」という概念は特筆に値すると思います。
では、「限定度」とは何か。何語でもそうだと思いますが、単文だけを考えても、ひとつの文の中には複数の名詞が含まれます。それら名詞の役割を、「これは主語、あれは目的語」などと限定できたときに、言葉の理解は一定します。逆に、役割を限定できなければ、言葉の理解は覚束なくなりますから、文中において、なるべく早く役割を限定できる方がよいわけです。中途の時点で、どれだけ役割の可能性が限定されるのかということを数値化したものが「限定度」です。
この「限定度」という観点から各国語をみてゆくと、言葉の合理性を改めて実感させられます。実際、日本語では助詞の働きによって、英語ではSVOの語順を定めることによって、名詞の役割は限定されます。そういうことを考えながら語学を学んでゆくと、学ぶ楽しさが膨らみます。

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