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生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)

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生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)の商品レビュー

4.0 しっかり書かれた一冊という印象。
高校までの教科で特に理科の内容が遅れているというのを聞いたことがあります。
高校の生物で染色体とかDNAについて習うけれども、
今現在の研究はもっとずっと先をいってる訳で、
そこのところ、どやねん?みたいなことについて、
決して、本書は答えを出してくれる訳ではありません。
ただ、20世紀の半ばくらいの生物の細胞の研究、
つまりふた昔くらい前のことを高校レベルの知識で分かるように説明してくれる本で、
それでも高校で学んだことよりも先を説明してくれる本、
つまり、大学でならうことと高校で習えることの橋渡しをしてくれる本という印象を受けました。

また、最近の新書本の、文字が多くて余白が多くて、
小一時間もあれば読み終わるような、いまのありがちな新書本と違って、
しっかりした読み応えのある好印象の本でした。
5.0 内容・文章ともに◎
生物とは何かという問いに分子生物学者が答えてくれている。高校生物の基礎程度の知識があれば、難なく理解できる内容だ。しかし、この本の最も素晴らしいところは生物学的な内容そのものではなく、著者の洗練された文章力だ。初めの数ページで、NYを訪れた経験の無い読者でも、かつて住人であった著者の記憶するNYの風景の中へ飛び込める。文章に込められた力を感じられる滅多に出会えない一冊だ。
5.0 分子生物学どころじゃない
自らの伝えようとしている題材の、その本質を、体系だって、
判りやすく、そして楽しく、ここまで書かれている本はなかなか
存在しないのでは!?

分子生物学について特段興味があったわけではなかったですが、
非常に平易に基礎的なことから記述されているので、内容が
一気にスッと入ってきます。

これにワクワクして、分子生物学に興味を抱く高校生とかが
出てくるんじゃないかと。

でも分子生物学どころの話じゃないくらい良く書けた読み物
だと思います。
5.0 詩的才能に溢れた科学者による生命に対する賛歌
なんと詩的才能に溢れた科学者でしょうか。特にプロローグとエピローグの文章にその才能が溢れています。

そしてストーリーテラーとしても優れています。本文の文章も全て簡潔にして明快であり一気呵成に読んでしまいました。野口英世に対する相反する評価、DNA発見の裏に隠された真実、シュレーディンガーからシェーンハイマーに至る新たな生命像の誕生、そして彼自身の研究などが本当に情熱的に描かれて秀逸です。

本書で私が一番感銘を受けたのは次の点です。生命とは単なる自己複製機能を持ったシステムであるだけではなく、一見安定して秩序だっているように見える生体内の各組織の分子は絶えず消滅と生成を繰り返していると言う知見に基づいた「動的平衡」にあるのが生命であるとの観点です。この知見は本当に新鮮でした。しかし、これは実は1930年代にすでに提示されていたのです。全くの驚きです。そして「半年も会わなければ、分子のレベルでは我々はすっかり入れ替わっていて、お変わりありまくりなのである」には思わず笑ってしまいました。

そして「私たちは、自然の流れの前に跪く以外に、そして生命のありようをただ記述すること以外に、なすすべはないのである」

生命を論じた書物の中でもひときわ精彩を放つ素晴らしい一書です。一読することを強くおすすめします。

ただし、参考文献を引用してあれば本主題をより掘り下げて理解したい人の役に立ったであろうと思われる点だけが残念です。
5.0 自己複製する一回性の流れ
 生物とは何か。生命なるものとは何か。通常、分子生物学者は、遺伝子の解析や仮説の構成にかけては堪能であるが、上記のような問いを真正面に据えて議論をすることはほとんどしない。しかし、この著者は、あえて圧縮された語彙の中に、生命の本質を封じ込めることに真摯に挑戦している。もちろん、限られた言葉や概念の中に生命という無限の広がりをもつ現象を記述しようとする試みであってみれば、その不完全な部分を指摘することは誰にとっても容易であるはずである。それは、積極的なモデルや概念を提出することが、たとえそれが極めてわずかな新奇な部分をしか有しないにしても、いかに困難なものであるか、ということと同義であろう。

 「生命とは動的平衡にある流れである」という著者のテーゼにもし「自己複製しうる」という概念を付加するとすれば、「生命とは‘分岐する可能性をもつ’動的平衡にある流れである」とでも言えるであろうか。「自己複製しうる」ものが生命の必要条件であるとしても、ここではウイルスは除外される。また、「動的平衡にある流れ」であっても、その動的平衡とともにそれを形づくる分子構造が物質として複製可能でなければ、流れ自体が複製されえない。そのため、「動的平衡にある流れ」と「それを一時的にせよ構成する蛋白分子群」はあたかも一対一に対応し、時間軸に沿って折りたたまれ続ける「状態」および「物質」でなければならない。従って、「動的平衡」が「自己複製可能」であるためには、「動的平衡」それ自身から生じる「蛋白分子の平衡状態」ひとつから、平衡状態が維持されつつ広がることが可能で、かつもとの「動的平衡状態」から少なくとももうひとつ以上に、分離・分岐可能なものでなければならないことは、必要な条件ではあるだろう。


 仮に、唯物的な物理現象としてたとえれば、水面上に浮かぶボートを漕いでできる一時的な「渦」や、強い風が電線を吹きすぎる際に奏でられるエオルス音の「カルマン渦」が、「渦」内部に「動的平衡にある流れ」をもち、平衡状態を維持しつつ、その組成(ここでは水)と流れを物質および振る舞いとして複製する能力を獲得した場合にのみ、その「渦」または「カルマン渦」の振る舞いは生命現象に極めて近い性質を有することになるだろうか。たしかに、品川嘉也などによって、生命現象の比喩として「情報の集積」をもって、しばしばたとえられるこの「カルマン渦」は、現象としてみれば生命現象に近いものと言えるであろうが、その「組成(水)と流れの自己複製能」に関しては条件を満たしていないことにならざるをえない。

 ただし、ここで重要なことは、「自己複製可能な」もしくは「もうひとつ以上のものに分離・分岐可能な」「動的平衡状態」を構成しうるものが、現在までのところ、地球上にはDNAとそれと相互作用する蛋白質以外に見つかっていないという事実であり、その要素還元主義やシステム還元主義には収まりきらない、「緩衝能力」や「バックアップやバイパス可能な」「滑らかさ」や「やわらかさ」をもつ「動的平衡状態」の本体が、蛋白質という未知の可変領域をもつ動的構成物であるということである。「形の相補性」や「DNAとの相互作用可能」という性質だけでなく、生物を構成する蛋白質群が、単なる要素やシステムには代替・置換不可能な、一回性の、自己規定的な「応答性や可変性をもつある何か」であって、かつそれ自体が「多義的、多次元的な現象の窓たる何ものか」であるようなもの。それ以外には、「時間軸に沿って折りたたまれ続ける一回性の動的平衡の流れ」という条件と前述の「自己複製可能」という二つの条件を満たすことは不可能なのではないか、と私には思われてならない。とはいえ、「動的平衡」の「滑らかさ」「やわらかさ」ゆえに「平衡点の柔軟な可動性」が成立しているのであれば、それはそのまま「平衡点の単一個体外への移ろいやすさ」とも同義のはずであり、「平衡点の別個体への移動」が「自己複製」であるとも言うことができる。そう捉えれば、「自己複製」という概念は不要であるのかもしれない。

 そしてもうひとつ、「動的平衡」について著者が述べていることを再確認すると、ここでの「動的平衡」は、ある時刻に於いて、生体内の蛋白質分子同士が「形の相補性」の強弱に基づいて空間的に形成するだけのものではなく、生体内の各座標を占める、わずかに過去の分子と、わずかに未来の分子とが現在に於いて形成している時間軸内の窪みの一断面でもあるということである。生物の示す「動的平衡」は、各時刻の横断面に於いてだけでなく、各座標の時間的縦断面に於いても成立するという、時間的・空間的な広がりの中に置かれている「動的平衡」である。しかし、こう述べることは、もちろん蛇足であろう。


 誤読の非難を覚悟の上で、あえて本書の議論から今一歩を踏み出せば、「生物」と「無生物」を分かつ条件とは、「時間軸に沿った、一回性の動的平衡にある流れ」が「分岐・自己複製可能性」を有しているかどうかという問いに言い替えられるのではなかろうか。DNAや蛋白質のような、一見、分子組成としては他の一般分子以上に突出した性質がないかのようにみえる構成素によるものであっても、その構成体(生物)には、ある特異な分子群の動的構成のみによって満たされる、見えざる「多義性」が成立していなければならない。たとえて言えば、解析力学に於ける「オイラー・ラグランジュの方程式」のような「物質の物理的振る舞い」の座標系によらない不変性が、「動的平衡の流れ」に於いてみかけ上、常時(とくに生物の自己複製時に於いて)成立しているような構成物でなければ、生物とはなりえないはずである。いずれにせよ、それらをもふくめ、生物を生物たらしめている条件は、その「構成素」と「構成体」のそれぞれの特性、およびその相互作用に依っているとは言えないだろうか。

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