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今昔続百鬼―雲 (講談社ノベルス)

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今昔続百鬼―雲 (講談社ノベルス)の解説

   京極堂こと中禅寺秋彦が活躍する妖怪シリーズに脇役として登場した在野の民俗学者、多々良勝五郎。本書は、相棒の沼上と共に伝説蒐集の旅をする多々良先生の活躍を描いた冒険ミステリー。「寸詰まりの菊池寛」ような風体の多々良先生の傍若無人な振る舞いと、それにいつも腹を立てている沼上とのでこぼこコンビぶりが笑えるコメディータッチの短編集だ。

   書斎派の京極堂の物語と一味違うのは、フィールドワークを専門とする多々良先生だけに、日本各地の妖怪スポットが多数登場する点。山梨では河童による殺人事件に出くわし、長野では漆黒の怪人と遭遇。群馬では不敗の賭博師と勝負する羽目に陥り、山形では行方不明となったミイラをめぐる大事件に巻き込まれ絶体絶命のピンチに。加えて、書き下ろしの最終話「古庫裏婆」で、京極堂との出会いが描かれているのもファンにはうれしい。クールな京極堂と直情型の多々良先生との邂逅(かいこう)の場面は、思わずニヤリとさせられる。

   また、この物語は、シャレや風刺が織り込まれた鳥山石燕の妖怪画の絵解きに重点が置かれているのも大きな特徴だ。「岸涯小僧(がんぎこぞう)」の絵に秘められた「がんぎ」の意味とは? 「泥田坊」の絵の裏には色事への戒めが…。企業誘致や開発計画といった「中途半端な近代化」によって地方で引き起こされた悲喜劇が、前近代の産物である妖怪を読み解くことで落着する。本書自体もまた、現代社会を痛烈に皮肉っているのが印象的だ。(中島正敏)

今昔続百鬼―雲 (講談社ノベルス)の商品レビュー

4.0 フィールドワーク型ユーモア妖怪談
京極堂シリーズのサブの物語で、「薔薇十字探偵社」シリーズとは一味違ったユーモアが楽しめる。妖怪研究家の多々良先生とやはり妖怪馬鹿の沼上のコンビが東日本を駆け巡り、妖怪談に巻き込まれる騒動を描くもの。2人共フィールドワーク型なので、メイン・シリーズより広範囲な地域を舞台にできる点が眼目なのであろう。収録作は「岸涯小僧」、「泥田坊」、「手の目」、「古庫裏婆」の4作。

「岸涯小僧」は村に伝わる河童伝説と過疎地開発を結び付けた話。この事件で2人はスポンサーを得る。「泥田坊」は妖怪名にふさわしい"タオカエセ"というダイイング・メッセージと不可思議な密室事件が目玉だが、密室の方は前例が多くあり、ダイイング・メッセージも真相を明かされると腰砕けになる。「手の目」は不敗の盲目の賭博師の技を多々良先生のダミ声の歌が打ち破るという趣向に笑わされる。「古庫裏婆」では"黒衣の男"がゲスト出演し、恐怖のミイラ売買事件を解決する。

作者としては他の作品群より自由気ままに書いたものであり、読む方もリラックスして読むべきであろう。それにしても多々良先生と沼上のモデルは「妖怪馬鹿」の多田氏、村上氏の2人なんじゃないですか ? 教えて下さいよぉ〜。"妖怪馬鹿"の方にお勧めの一作。
2.0 学芸会並の茶番劇
不細工、非常識、無神経、無責任、無節操、無反省な悪性の妖怪オタク・多々良勝五郎が主人公、物好きな常識人の「僕」が介添え役の中編4本。まったく感情移入できない、腹立たしい主人公であり、「僕」の性格も弱く、人物設定は失敗だと思う。物語も大したことはなく、困った人に周囲が振り回されるだけの茶番劇といってよい。唯一溜飲が下がるのは書き下ろしの「古庫裏婆」。京極堂の、桁違いの凄さが実感できる。

これも喜劇のひとつの形ではあろうが、私の好みではない。また、文体も吟味が足らず、さすがの作者も筆力に驕ったと思しい。駄作は言い過ぎにしても、凡作、と言わざるを得ない。
4.0 「妖怪シリーズ」は番外編も面白い!
ご存知京極夏彦の「妖怪シリーズ」の番外編。作者が自らの博識を披露しながらも、あまりくどくどしてなく、力を抜いて書いているところが良い。京極夏彦独特の難解さがあまり無くて読みやすかった。
2.0 妖怪伝説の解釈もの
 これは妖怪伝承を解釈することに人生を捧げる馬鹿の物語である。
 ただ、何と言うかこのシリーズの致命的な弱点は、主役の「引き」の弱さだと思う。多々良センセイは「世紀の変人、奇人」という設定であるが、榎木津や木場修やらと並べてみるとどうにも(益田じゃないが)馬鹿がぬるい。

 確かにめちゃくちゃ妖怪好きでわがままで自分勝手で傍若無人な人ではあるが、他の大馬鹿に比べると見劣りしてしまう点が痛い。「妖怪好き」を除けば、その辺にいる困った人である。おまけに多々良センセイにしろ相棒の沼上にしろ、榎木津のような存在自体の華やかさがないので全体に話が地味な印象になる。
 どうにも切ない話が多いのだけれど。センセイは主役のくせに話から浮いてるし。

 なによりも。
 せっかく「黒衣の男」を友情出演させたが、空回りに終わっている。

 京極堂シリーズを「暗い、重い」という声が多いが、例えば『絡新婦の理』の序幕にして終幕、桜の下で演じられた黒衣の男と「蜘蛛」との対話、また異教の学び舎にて美貌の堕天使を追い詰める場面の幻惑的な美しさを見ただろうか。

 「雲」での黒衣の男は、文字数制限でもあるのかと訝しく思うほど一方的に(自分が知っていることを)しゃべりたてるだけで、憑き物落し(今回は憑ける方)の凄みや京極堂の姿や動きの美しさが、さっぱり伝わらない。

 確かに、サイコロ型のノベルズというのもいかがなものかと思うので、あまりページ数を使えなかったのかとは思うが、いかにも書き飛ばしぽい。榎木津よりも誰よりも、京極堂の美しさにまいっている私としてはやや残念な登場だった。

3.0 笑えるミステリ!
 京極堂シリーズを読んだ方なら,この多々良先生が中禅寺とまさに座標軸の正反対の側にいることにお気づきのはず。妖怪のからむ謎解きは悲壮な人間関係がないだけに小品として京極堂よりも楽しめるかも。傍若無人,厚顔無恥,妖怪馬鹿の大迷惑キャラクター多々良先生と常識人を自称する沼上氏の掛け合い漫才は必見!笑えます。京極堂もちょこっと出てくる「古庫裏婆」だけでも読む価値有りです。

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