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愛と幻想のファシズム〈上〉 (講談社文庫)

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愛と幻想のファシズム〈上〉 (講談社文庫)の商品レビュー

5.0 預言書的な。
ハードカバーが1987年に刊行されていて、何かの雑誌の連載小説だったらしいので、書き始めたのは1985年、プラザ合意の頃であろうか?1990年代を舞台とした近未来小説として書かれているが、時間軸で言うとその先に来てしまった現在にいる今読んでもなんら色あせておらず、それどころかある種の預言書なのではないかと思われるほどのリアリティを持つ。

この小説には現在起こっていること、起こりつつあること、起こるはずも無いけど起こってほしいことなど、さまざまなことが書かれている。実世界と比較するとインターネットや携帯電話などの社会インフラの発展により加速した部分や割愛された部分が多々あるのだが、米国によるグローバルスタンダードなど本質的な部分が言い当てられていることを考えると、バブル崩壊以前にこの小説が書かれていたというのはすごいことだ。

僕が小学生だった1985年と35歳になった2008年で比べると世の中はえらく殺伐として無機質なものになっているように感じている。1985 年当時、うちの両親の世代も、彼らの幼少期と1985年を比べて同じようなことを言っていた記憶がある。経済発展、技術発展の先にあるもの、それらが必要とする合理化の先にあるものは、圧倒的に無機質でつるんとしたものなのではないだろうか。人間が地球の表面にこびりついたつぶつぶのようなものだとすれば、無機質でつるんとした地球には人の存在する余地は無い。つるつるにしていく行為は自分たちに対する排斥行為に当たることになる。深読みすればこの小説は、そんな人の世の向かう先すら示唆してしまっているのではないかと感じられる。

長いですがお時間があればぜひ読んでみて頂きたい。
5.0 夢中で読んだ
中学生の頃、夢中で読みました。
バブル期、バブル崩壊の頃の様相を反映しているようですが、今読んでも全く古さを感じません。
古い価値観を破壊して、新しい価値を創造していく事とはこんなにもすさまじいものなのかと、興奮を覚えました。

できれば、自分もこういう改革の当事者であればなぁと淡い夢を抱いたのを覚えています。
3.0 試しに読んでみるには力作すぎる…
 バブル経済といわれた、日本経済絶頂期の長編小説。「閉塞感」というあとがきのキーワードが示すように、それを打ち壊したいという願望がシミュレーションされている。タイトルに「ファシズム」とあるが軍事よりも経済的。
 この小説の主要人物は『コインロッカー・ベイビーズ』のハシ・キク・アネモネがモデルということなので、『コインロッカー・ベイビーズ』を先に読んだほうが良いかもしれません。『新世紀エヴァンゲリオン』の元ネタは確かにありますが、内容とは無関係でした。
 力作ではあると思いますが、特に面白いとは思えませんでした。好みが分かれる作品だと思います。そういう意味において『愛と幻想のファシズム』は、村上龍作品が自分の好みに合うかどうかの試金石となる作品だと思います。
5.0 1987年作品であることの意味
発表当時に読んだ。バブル真っ只中にも、バブル崩壊後にも、そしてほんの何日か前にも。
本作は政治的な側面が強いが、昨今経済分野での仕事が目立つ村上龍氏の経済小説の原点と言える作品か。

主人公「トウジ」を中心とする結社の伸張が描かれる上巻では、読者は言葉にできにくい「高揚感」と「不安」を持つのではないか。高揚感は閉塞感に対する風穴の期待の裏返しであるし、不安は「ファシズム」という語感に対して我々が受けた教育の反映だといえる。ファシズム=悪という「常識」的な刷り込みに揺さぶりをかけてくれたと言う点で、私にとって本作の価値はとても大きい。為政者は動機の道徳的崇高さで評価されるべきでなく、結果で評価されるべきであるという「マキアヴェッリ」的な視点に立てば、日本だけでなく各国の現政体が最適な形態であるかには疑問を感じる。
強力なカリスマ性を持ったファシストが歴史から姿を消して既に半世紀以上が経過した。平均的な教育を施されたこの国で「トウジ」が現れる可能性は限りなく低いだろうが、強力なカリスマ性と優秀なテクノクラート組織を合わせ持ったファシストが現れたときに、我々は本当にその魅力に抗えるのだろうか。

バブルの全盛を迎える前に既にこの作品を世に問うていた龍氏の視点と、本作を貫く圧倒的な筆力と龍氏自身の若さ故の作品全体に漲るエネルギーを高く評価しないわけにはいかない。
5.0 圧倒的なリアリティー
中1の頃に買って途中で放棄した小説。
大学2年の今、読み返す。

間違いなく今まで読んだ小説の中で、ストーリー、構成、スピード感、リアリティ全て圧倒的No.1。

中1の時に買って読んだが、途中で諦めた理由も今になってよくわかる。
知識の量が絶対的に足りないからだ。
中1の僕にこの小説を読みこなせるほどの常識力も、経済、政治の知識もなかった。
この小説ではヨーロッパが民主化に向かうことや、ソ連が崩壊することは予測されていない。
だが、今私達がこんな日本に生まれ、生きているからこそこの小説はよりリアルさを与えてくれる。
1989年に書かれた小説とは思えないほど、リアルで現在に通じるものが充分にある政治小説。
村上龍最高傑作と言っても過言ではない。

私達は今、こんな日本を望んでいるんだろうか?

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