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眠りの森 (講談社文庫)

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眠りの森 (講談社文庫)の商品レビュー

4.0 閉鎖的なバレエ世界のなかの隠された謎に挑む、加賀恭一郎の鋭利な推察力!
 物静かなタイトルである。素人目には絢爛豪華に映るバレエの世界を舞台に起きる幾多の事件。このコントラストが読者を最初に惹きつけるのかもしれない。加賀恭一郎刑事の初の短編集『嘘をもうひとつだけ』で最初に扱われたる事件もバレリーナのそれであったことが想起され、本書にはもとより親近感があった。登場する地名が大泉学園や中村橋、そして富士見台といった西武池袋線上のものであっただけで、自分が住んでいる生活圏での物語であることが一層の「和み」を与えてくれた。

 人気シリーズと呼称してよい加賀恭一郎であるが、最初に大学生として登場した『卒業―雪月花殺人ゲーム』から数えて本書は二回目の再出演で、大学卒業後、当時の中学教師から今は警視庁捜査一課の刑事となっている。本作品ではまだ自分自身のことを「自分」ではなく「俺」と呼んでいることにあたりに、何となく初々しさを感じるのである。加賀自身の身体的特徴をことさらに強調する記述も本書では少なかったように感じられた。

 「加賀恭一郎は進化する」という帯のフレーズに違和感はない。それ以降の作品も何冊か読んでいるか、間違いなく刑事・男性としての魅力さを増している。陰鬱な終わり方であるよりは、自分が好きな(愛した)女性にきちんとした想いを告げるという清々しい締めくくりに読者はある種の安堵感を得られる。刑事としてだけでなく一人の魅力ある男性としての進化にも必然的に興味が湧くであろう。本書の内容には触れない。読んで決して損はない作品だ。
4.0 誰が犯人なのか?
バレエ団を舞台にした悲劇です。「眠れる森の美女」のレッスン、ゲネプロ、公演の様子を背景に、バレリーナの自己管理の厳しさを横糸に織り交ぜながら、不可解な殺人事件が続きます。半分まで読んでも誰が犯人なのか私には分からず、解決したい一心で一息に読んでしまいました。最後はパズルが上手くはまったように、謎が解き明かされ、安堵。ストーリも魅力ですが、刑事役の加賀恭一郎の目線で描かれたバレリーナの日常や舞台の風景もこの本の面白さかも?
5.0 加賀刑事ファンは必読
名刑事加賀恭一郎シリーズです。
私は「私が彼を殺した」「どちらかが彼女を殺した」から読んだので,
熟成した加賀刑事しか知らなかったのですが,
硬派で,内心なにを考えてるのか全然見えない加賀刑事を
もっと知りたいと思っていたら,なんと恋物語篇があると聞き,本書を購入。
バレリーナとの静かな恋愛で,ちょっと悲しい雰囲気も漂います。
加賀の内心描写を積極的にしないスタイルを保っているので,
やっぱりミステリアスなんですが,男性特有の不器用な愛情表現もかいま見えて
なかなかよかったです。
もちろんこの作品も,恋愛はサイドストーリーにすぎず,メインはバリバリの推理小説。
しかもバレエの世界を色々研究して書き上げているようで,
ダンサーたちのそれぞれの悩みや思惑が動機となって交錯し,謎を複雑にしています。
残念ながら犯人は読む前から知っていたのですが,
それでも十分おもしろく,一気読みしました。
4.0 謎解きも面白いが、バレエ団の取材の徹底さが驚き
 東野作品に共通な律儀な感じに組み立てられて、堅く結びあわされた謎が、最後のバレエの舞台の進行につれて解けていくところは読んでいてすごく快感だ。
 最初の事件と二つ目の事件の関係は何か、登場人物同士の因果関係や利害関係は何かという推理小説の基本的な構成がしっかりできていて、読んでいても小気味よい。しかし、海外での因果関係というような読者には分かりにくい部分に手がかりがあるのは、読者探偵には厳しい。
 クラシックバレエにはまったく縁がないが、本書ではひとつのバレエ作品のみならず、バレエ団の運営や、練習風景、バレエダンサーの私生活に至るまで詳しく取材したように見受けられる。作者の人格や作風に合致した印象だ。
 登場人物の言葉で次の二つが特に心に残った
「ダンサーは他人との実力差を客観的に捉ええているものなんだ。自分より優れたものがいる時に、その者をおしのけて自分が踊るなんて言うことは本能的にできないんだよ」
「ダンサーは若いときにコンクールでいい成績を取っても、大人になったらまた鍛練を積んで基礎をつくって、今まで若さや子供の体でやっていたことを、大人の体を使って完成された技術によってできるようにすることによってプロになる」
5.0 加賀恭一郎がバレリーナの世界にどっぷりつかることになる
美貌のバレリーナが男を殺したのは果たして正当防衛なのか?正当防衛なのか意図した殺しなのかを加賀恭一郎が追及するわけである。バレリーナのストイックさが際だっているなあという感じがします。一日練習をサボるとそれを取り戻すのが大変な世界なんだな。

加賀恭一郎は、真相を追究すると共に美女バレリーナの世界にどっぷりつかることになる。その中でも、浅岡美緒という女性に惹かれることになる。加賀は彼女を温かい視線で見守っているかのようなまなざしをしている。好きと言う気持ちと冷静に事件の真相を追究するという相反する気持ちを持つことになる。好きと言う気持ちが余りにも強すぎると、真実を曇らせることもある。正当防衛ならばいいなあと思っても、だんだんと真実が分かっていくともしかしたらという気持ちがよぎることになる。

本書は、バレリーナという独特の世界観を持つものを取り扱っていることから、ストイックだなとか閉じた世界だなという印象がある。その中でも、哀しい世界観ではあるけれども何か温かさを感じるのは、加賀恭一郎が浅岡美緒を見つめる視線の温かさを感じるからではないだろうか。

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