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柄谷行人は完璧主義者である。しかし、彼自身がこの著作の「あとがき」で記しているように、「私は、一冊の完璧な本を書こうとする気持ちをすてきれない」とあるが、実際彼がこの著作を著した頃は衰弱の極みにあり、決定不能状態であった。 得てしてこの様な不完全な状況の中から産み出された作品、特に苦しみの極限で表された論考には凄みがある。 表題作「隠喩としての建築」も建築家クリストファー・アレグザンダーの「都市はツリーではない」という論考から導き出された「人工都市」と「自然都市」の対比などは、大いに私の知的好奇心を高めた。しかしもっと迫力があったのは、「形式化の諸問題」という小論である。この論考には、ゲーデル(数学者)の不完全性定理をもとにした「ゲーデル的問題」からはじまり、精神分析、文学批評、言語学、論理学などの角度から「形式化」をcritiqueしようと試みていた。 私がこの著作に出会った頃、彼のように独自の考えを突き詰めて、「Think-Write(書いて考える)」人間の存在に衝撃を憶えた。それ以来、彼の思考の行方を追っている。
主体論から始まり写真論、建築論、数学、はては宗教についてまで展開する。考え続ける人間だけに許される物語る暴挙。