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フライ,ダディ,フライ

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フライ,ダディ,フライの解説

   在日コリアンである「僕」の青春をポップな筆致でつづった直木賞受賞作『GO』以来、3年ぶりとなる金城一紀の長編小説。連作短編集『レヴォリューションNo.3』に登場したオチコボレ高校生集団「ザ・ゾンビーズ」が再び活躍する青春小説であるが、今回の主人公は高校生ではなく40代後半の平凡な中年男。家族の崩壊を必死に食いとめようともがく父親が、高校生の助けを借りながら目標に向かって邁進(まいしん)する姿を、軽妙なタッチで描いている。

   鈴木一(はじめ)は、大手家電メーカーの子会社で経理部長をつとめるサラリーマン。学生時代に知りあった妻と、17歳になるひとり娘が唯一の自慢である。ある日、そんな鈴木のもとに、娘が何者かに殴られ入院したという知らせが入る。娘を殴った相手は、ボクシングの高校生チャンピオンで、学校では品行方正で通っているという石原。復讐を決意した鈴木は、包丁を手に石原の通う高校を目指すが…。

   沖縄出身でアメリカ人とのハーフの板良敷(いたらしき)、4か国分のDNAを持つアギー、ケンカ名人の朴舜臣(パク・スンシン)。差別や偏見の中でタフに生きる若者たちと平凡なサラリーマンとの対比の背後には、日本という国の歪みが見え隠れする。舜臣との奇妙な師弟関係を通じて、「彼の中の憎しみは、私が見て見ぬ振りをしているあいだに育っていったものなんだ」と悟る鈴木の姿が印象的である。ともすれば重くなりがちなテーマを、コミックを読ませるような感覚で、さらりと爽快に描ききってしまう金城の持ち味が、いかんなく発揮された作品である。(中島正敏)

フライ,ダディ,フライの商品レビュー

2.0 「愛する者を守る」という行為の意味
 金城一紀による2つ目の長編。デビュー作『レヴォリューションNo.3』に登場する、オチコボレ高校生グループが活躍する「ゾンビーズ3部作」の2作目、という位置づけ。

 ストーリーは単純。愛娘に暴力を振るった男子高校生をぶん殴って「参りました」と言わせる、という話。ただし、相手は品行方正とは言い難いボクシングチャンピオン、親は大物政治家。平凡な中年サラリーマンであった主人公・鈴木は、偶然知り合ったケンカ名人の高校生に弟子入りし「強い父親」に変身することを誓う。

 映画『フライ,ダディ,フライ』を先に観てどうにも腑に落ちなかったのは、ケンカ名人の朴が在日コリアンの青年である、という設定の意味だった。小説を読んで謎がとけた。

 著者は「愛する者を自分の手で守る」ということに特別な意味を与えている人だと思う。この「愛する者を守る」という行為の意味が、鈴木と朴とでは全く異なっているのだ。朴は在日コリアンを取り囲む排他的な憎悪の中で育ってきた。その中で生き延びるためには強くならざるを得なかった。その朴にとって「愛する者を守る」ことは、直接的に自らの身体を傷つけて行う行為である。対する鈴木にとって「愛する者を守る」というのは、非常に間接的な行為である。サラリーマンとして与えられた責務を果たすことと引き換えに、自分がその歯車の一員である「社会」に家族を守って貰うのだから。ところが、社会というものは、本当に1人1人の庶民を守ってくれるようにはできていない。社会の綻びの穴に陥って初めて、自分が如何に無力であるかを思い知る。

 鈴木は朴と伴に過ごした一夏の間に、世の中には綻びの周辺で生きていかざるを得ない人々が存在すること、自分が「普通」だと思っていた日常世界が彼らの犠牲の上に成り立っていることを理解し、そういう現実から目を背けず直視する勇気を身につける。これまで見えていなかったものが、ある体験を通して見えるようになってくる…、この小説は、そういう「気づき小説」なのだと思う。おそらくそれが、ケンカ名人の朴が在日コリアンの青年である、という設定の必然性なのだ。

 ところが、著者はこの小説を、平凡なサラリーマンの一夏の冒険譚として書いた。朴は非常に魅力的な人物のように思えるのに、彼の湛える人間的な深みが何に由来するものなのか全く描かれていない。そもそも、著者独特の坦々とした筆致が「冒険譚」にマッチしていないように思う。この小説のテーマを活かすためには、他のアプローチをとるべきだったのではないか?と正直思う。
5.0 楽しかった!
たくさんレビューがあるんで自分が感じたことだけを。
あらすじで言えば、娘を傷つけられた中年男の変身と復讐という簡潔なものです。
文章も簡単に読めて、最近の本らしく見た目よりも早く読み終わります。
ですが、そのシンプルさや量が内容にちょうどいい。
主人公の揺れ動く倫理観や哲学、感情、意志に納得したりハラハラしたりと知らぬ間に入り込んでました。
男子高校生とじゃれたり、彼らに愛着を感じたり惹かれたり…と同性愛的な感情が少々見え隠れするのもまた青春臭くて爽やかなくらいでした。
主要人物に在日朝鮮人がいる為に「ある種の」不安があったのですが、作中ではそこには深く言及せず、諸問題の末端に生きる高校生に焦点があってむしろ興味深かったです。
先に書いたように読みやすいのでちょっと気になったら読んでみることをオススメします。
1.0 腕力が全ては好みでない
この作家のレボリューションNo3はとても好きな作品です。
でも、そこで描かれていたものは決して腕力勝負の若者の物語ではなく、人生を生き抜くことの切なさや無力感など、腕力とは別の物語だったように思います。
私としては、もちろん皆さんの所感とは違うことを覚悟して書きますが、レボリューションの登場人物をこの作品に出してもらいたくなかった。
腕力が全てであれば、それは人間の世界ではなくなります。
もっと端的に言えば、理性がきちんと支配する(しなければならない)人間の世界は、格闘技のように力が全ての世界ではないということ。
別に宗教がかった話ではないのですが、この小説は力が支配するような傾向が強すぎるように思うのです。
もちろん、単に物語が漫画的に面白いか、という視点で言えば、まあ確かに面白いのですが・・・  でも、であればレボリューションの登場人物はそっとしておいてほしかった。
5.0 影響受けました!
いいよっ!
レボリューションNo.3読んでなくても大丈夫です。(俺は後に読んだ)
ゾンビ―ズが出てきますがレボNo.3の時と時期的に不自然さがあり気になりますのでこれだけで十分だと。
映画も読んでから触発されて見ちゃいましたがひどいです・・・。
これはいいよ、マジで読めよ、おっさん!
4.0 このスピード感!
 金城一紀の文章には、スピードとリズムがある。
 このスピードとリズムに乗せられてあっという間に物語に引き込まれていく。気持ちよく読書するためには、こういうものも必要だ。
 
 さて、物語の方は、正直なところを言ってしまうと、少々青臭さを感じる。そして、単純な構成だ。
すべてが最後の決闘に向かい、すべてがそこへ向けて流れ込んでいく。しかし、その単純さが気持ちよ
く、スピードとリズムに乗ってエンディングまで一気に読むことができるようだ。
こういうのも嫌いじゃない。
 
 金城一紀の作品では、キャラクターに個性が光る。
 魅力的な登場人物の朴舜臣は語る。”人間がいくつの細胞から出来てるか知っているか?〜約60兆
だよ。おっさんは、これまでどれぐらい使ってきたんだ?使わなかった細胞をいくつ残して死んでいく
んだ?”

 ”何も壊さずに新しく何かを作り出そうなんて、そんな都合のいいことなんてありえないよ。”

 何かに向かって挑戦する時に必ず思い出したい言葉だ。

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