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萌えの研究

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萌えの研究の商品レビュー

1.0 作者は何が知りたかったのか?
タイトルに「萌えの研究」としてあるが内容は全然違う。これは、(いちおう)非オタクの筆者が、大金をはたいてコスプレキャバクラに行き酒も飲まず女も口説かずにお喋りだけをする彼らオタクとはどんなキャパシティを持ち合わせた人種なのかを探るために、単身オタ界に潜入ルポを行った記録である。筆者はオタクコンテンツ、ライトノベル・美少女ゲーム・TRPG、マンガ、アニメをこなしていき、そこから見えてくるものを書き留めていく。しかし、当初の議題は何所へやら、結局最後には議題は忘れられてしまう。作者はいったい何が知りたかったのか?「萌えの研究」というタイトルからこの本に論文的内容を期待した読者はがっかりするだろう。かたや、潜入ルポとしても浅くさほど体験が具体的に迫ってはこない。結局本書は、何も示せぬまま終わる。
1.0 ムズムズさせる表紙にたぶらかされないように
 この著者の本は『消えたマンガ家』シリーズ以来、それなりに読んできたので、「研究」なんて最初から期待してませんでした。結論にたどり着いてから、全体を見通しつつ書く人じゃなくて、出口を探すプロセスを読ませるタイプの書き手ですからね(ノンフィクション系の書き手は、そういう人が多いみたいですが…)。
 そういう意味では、出だしは確かに期待させるものがあったんです。この著者で、この装丁で、この出だし。「買いかな…」と思ったワケです。「萌え」の解明ではないにしろ、著者と一緒に「萌え」をめぐる迷宮巡りを楽しめるかな、と。
 で、正直言って、ダマされましたね。ひどい手抜き仕事だと思います。やる気感じられませんでした。アー、ついフラフラ購入した私が馬鹿だった。
 お薦めいたしません。ムズムズ感たっぷりの表紙にたぶらかされないように。
3.0 「研究」にまでは至っていない
 「萌える」ということはどういうことなのか、どうしたら「萌えられるのか」を、実際に体験することで解き明かそうとする著。しかし、残念ながら「研究」にまでは全く至っていない。
 その原因は、調査不足によるものといえるだろう。時間が足りなかったのだろうが、特に中心として捉えたライトノベルや美少女ゲームを読んだりプレイした数が明らかに少なく、かつ偏っている。萌えるには一冊の本や一つのゲームをプレイしても足りるが、研究するには100や200では足りないのである。
 研究とは、共感することでなく理解することだが、著者のような内に入り込んで共感することで迫力ある書を著すことを持ち味としている場合には、とことん入り込むことが必要だった。今までの著者の評価された著は皆そうして出来たはずである。もっと、入り込んで、切り込んで欲しかった。
 残念ながら、この本に書いてあることは、「萌えを理解しようと、飛び込んで一所懸命やってみましたが、私には理解できませんでした」というのに過ぎない。著者の本は期待しているので、本当に残念。
4.0 萌え世界訪問
本書は「萌え」の世界についての、体験レポートである。1961年生まれのノンフィクション作家である著者が、「萌え」を構成する種々のメディア(ライトノベル・美少女ゲーム・マンガ・アニメなど)を一年かけて自ら体験し、その感想を記しながら考察を進めている。特別に深い思索やマニアも驚くような新たな発見があるわけではないが、「萌え」ワールド部外者が、一通りのことを知るにはとてもよいと思う。

本作が優れているのは、ライターの立ち位置の設定である。「僕のような一般人(せいぜいがにわかオタク)」を自称する著者は、第一章ライトノベル篇では『空の境界』を読み始めたときに、その文章の拙さに思わず本を放り出したくなったと言っている。また、第3章で美少女ゲームを講談社別館で集中的にプレイするうちに「どうにもならない重い倦怠感にとらわれ」たりもしている。最終章アニメ篇で萌えキャラクターたちを熱く紹介するときでも、自己を分裂させて「萌え」に対して距離感をとることを忘れていない。その点が実にリーダブルで、好感が持てた。

ただ、実際のところ『消えたマンガ家』というマンガ家探索ルポの著作を持ち、さらに水木しげる氏を深く取材した経験もある著者のことを、いわゆる一般人だとはとても思えない。一般人は「綾波萌え」したりはしないはずだが、そこはまあよしとしよう。

サブカルチャーの歴史において80年代に起きたことを「美少女の発見」とするなら、90年代は「オタクの拡散と浸透」の時代であり、00年代には「萌えの発明」がなされたという見取り図を評者は考えている。そんな考えを深めるために本書は大変有益でした。
5.0 人はいかにして萌えるのかの追体験を可能にする冒険の書
人はどうして、どうやって萌えられるようになるのかということを空虚な言説を積み上げて迫るのではなく、追体験として読者をも誘ってくれる怪書となっています。あさましいマーケティングの飯の種として注目されだした「萌え」とは完全に異なり、既にオタクならば懐かしく「如何にしてオタクになりしか」を、一般人にはその入り口を垣間見せることに成功しています。もともと綾波萌えであったということはあったとしても、一度は足を洗った筆者が一つ一つジャンルを踏破していくことで見えてくる全体像にはいちいち肯かされてしまいます。

「マリア様がみてる」への違和をじっとライトノベルのジャンルから別ジャンルへと横断的に暖め続けるあたりが憎いです。

現在の「萌え」の源流をエロゲーと断言し、実際に代表どころをプレイし嵌ってみせるあたりが素晴らしいです。もちろん歴史を遡ればハーレムだって漫画の方が早かったはず、ただシステム的にハーレムを自覚的に多用し、深化させたという点でギャルゲーから目を逸らしては確かに「萌え」は語れようはずもありません。そして源流を辿った上で「萌え」の行く先を見据えて語られる言説の清々しさ、つまり主人公を無色透明化していっそう異性を排除した秘密の花園か(マリみて)、あるいはハーレムの中で結果的に順列組み合わせし個性をなくしつつある異性を個性化する方向(ローゼンメイデン)かという指摘は今後の流行作品に対して眺めるさいの一助となることだと思います。

とりあえずアニメジャンルをとりあげる際に最萌トーナメントをとりあげたという点でもエポックメーキングになる気がします。

この結論はもちろんこれはあくまでも男性側からの「萌えの研究」に過ぎないという不満は生ずるかもしれませんが骨格として大差ないと思います。

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