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帝都衛星軌道

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帝都衛星軌道の商品レビュー

4.0 読ませる、読み応えのある名作。

鬱蒼と生い茂るビル群の中を、
地を這うように生きる人間は、まさに虫、
『ジャングルの虫たち』だった。
賢く立ち回り相手を落とすための落とし穴を掘っていたつもりが、
いつか自分もその穴に落ちてしまう。
「情けは人のためならず」ならぬ「悪事は人のためならず」というところか。

上京し、少なからず東京、新宿という街で遊んだ人、
特に多少なりとも挫折を味わった人とっては心に染みる一遍。
また「帝都衛星軌道」の間に入れられていたことで、
物語にも厚みを感じることができた。

「異邦の騎士」「アトポス」など昔はたくさん読んでいたが、
久しぶりに読んだ島田荘司は面白かった。

3.0 正直言って、自信作です
と帯にでかでかと書いてあるのでどれほどのモノかと期待したが、まあ普通な感想かな。

身代金が極端に少ない謎の誘拐、そしてその後の奥さんの奇怪な行動という引き込まれる前半の流れは良かったのに、後半で島荘ではおなじみとなっている2大テーマが表に出てテンションが下がってしまった。おまけに別の話があいまに挿入されているという特殊な構成をしているので、その構成が裏目に出てしまい、加速していたテンションがそこでいったん切れるという事態に陥った。この別の話というのがちょい昔の時代の詐欺師コンビのやつなんだが、いまいちかな。詐欺師コンビに誘拐事件の腰を折られた感じで鬱陶しかった印象。

奥さんに捨てられた旦那が悲惨だな。おまけに相当モテんかったおとこのようで哀れみを感じた。
4.0 正直言って、面白いです
本作は珍しく、御手洗物でも吉敷物でも無い。ミステリー小説でも無いかな。まあ少しはあるのだが。テーマ的には冤罪から見た、この国の司法制度、裁判官制度のあり方に疑問を投じるという考えが根底にありますが、作者は昔の作品から一貫して、そういうのは日本社会が産み出した欠陥、日本国民の欠陥性として考えている。「冤罪」や「死刑」や「医療問題」、などの問題点も全てそれ一個の責任として文句を言っているのでは無い。「罪を憎んで人を憎まず」という様に私達が住む社会の出来が悪いと言っている。器が悪いのだから中の人間も悪くなる。まあ、これはこの作者だけで無くいろいろな人が感じている事だし、推理作家の中にも単純に謎々を提供するクイズ小説で無く、例えば社会派と言われる物などもそうだし、これまた単純にお上だけの責任に押し付ける様な物もあるし、もっと視点を広げた物もある。こうしたテーマ性を含む物も大なり小なり多種多様にある。この作品の中間に挿入されている「ジャングルの虫」という作品もなぜ関係無い短編がこんな所に入っているの?と思う人もいるだろうが、こうした視点と後、東京の都市論の観点で見るとなぜこれがここに挿入されているかが分かると思う。単純に個別作品として見た場合でも、この「ジャングル〜」は何か青年マンガ雑誌を読んでいるかの様な吹き出してしまう様な面白さがあるし、哀愁と幻想漂うラストは水木しげるの作品の様にも感じた。ただ「帝都〜」のラスト近くにある東京地下都市の話はこの本の希薄なミステリー部分を構成する要素の一つだけどまあ蛇足に感じる。面白いんだけどね。じゃあ別にミステリー小説にしなくていいじゃないという感じですけど。最後に私は知らなかったのだがピンポイント天気予報の売買って本当にあるのですかね、これを使っている所こそ、鮎川哲也に捧ぐといった感じですけど。
5.0 帝都衛星軌道
「帝都衛星軌道(前)」「(後)」の間に「ジャングルの虫」という中編が入っている面白い構成です。「ジャングルの虫」はホームレスが過去の知人の死を知り、その人となりを回想しする話ですが、まさに都会はジャングル!虎でも蛇でもなく虫だった、と弱った体を抱えて悟っちゃう、なんとも哀愁な一作ですが、そのジャングルを衛星軌道で回る(?)誘拐事件の勃発から「帝都衛星軌道(前)」が始まります。山手線のすべてには電波が届き切れないはずのトランシーバーに、犯人から送られてくるメッセージ、警察は真相をつかめないまま、誘拐された子供は戻され、変わりに母親は二度と戻ってきませんでした。
それから6年後が後編です。妻が自分の意思で去ったことは分かっても、理由がまったく分からない夫は妻の過去を探し求めて、そのワケを知ることができます。
最後は泣きました。夫婦とか、親子とか、そのあたりのことは私だっていろいろ考えるけれど、とにかく国吉と紺野が互いに分かりあえたこと、美砂子の最後は充たされていたであろうこと、そしてそして・・・ そして、東京だけが碁盤目でなく円軌道の路線である理由と、ジャングル東京の地下道の話、これがまたとんでもなく面白く、人情と哀愁と絡んで、やっぱり島田さんだと思いました(^.^
5.0 これが島田荘司の世界だ!!
全編に横溢するのは、まさしく島田荘司の圧倒的三千世界。独自の都市論を内包した、エドガー・アラン・ポー直系の幻想小説。犯罪小説や社会派ミステリを射程に置きながら、それでも最後に明かされるのは、時空が見せる果てしない浪漫なのだ。
この壮大なスケールの詩美性。ここに新本格作品と同系列には比べられない島田の本質がある。

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