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赤い指

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赤い指の商品レビュー

5.0 家族の意味を問い直す力作―加賀恭一郎が直面したものは果たして何か?
 本書は、直木賞受賞後の最初の作品であり、第60作品目という記念碑的位置づけにあるそうだ。『赤い指』という謎めいたタイトルは読者にその意味すら想像させない。赤い表紙に白い手が描かれている装丁は、なんだが本書のタイトルとは逆で面白い。インパクトのある装丁だ。「書き下ろし」の長編小説だが、短時間で読了した。しかし本書の内容が読者に突きつけるテーマは重厚であり濃密である。一言でいえば、「家族」の意味やあり方を真っ向から扱った力作である。

 東野作品はそれなりに読んでいるし、彼の作風も私なりに理解し始めているところであるが、これまで読んできた作品のなかでも、本書はとくに「心を揺さぶる」衝撃的なものであった。詳しい内容を記載するわけにはいかないが、趣向は『レイクサイド』(文春文庫)に似通っている印象があった。とはいえ本書は、ファンにはお馴染みの加賀恭一郎が登場し、しかも彼自身の家族の内実が(一端ではあるが)明らかにされるということで、読み応えが違う。加賀と彼の父親との関係は、『美味しんぼ』における海原雄山と山岡志郎のそれを想起させるところがあるが、二人にしか分からない「見えない意思疎通」とでもいうべきものが存在したに違いない。彼らには余計な「言葉」は不要だったのだろう。余韻を残す見事なエンディングはそれを如実に物語っている。

 中学生の少年が幼い少女を殺害するという陰鬱な事件(しかも殺害動機それ自体が意味不明)の真相を解明してゆく加賀刑事が直面したものは何であったか。自らの「家庭」と重ね合わせたのか、それとも今は亡き「母親の面影」を胸のうちで密かに偲んでいたのであろうか。いずれにせよ本書からは、刑事としての加賀恭一郎というよりは、不器用だが熱い血の通った人間的魅力を十分に秘めた人間としての加賀恭一郎の生き様がビシビシと伝わってくる。これからの加賀の動向に注視する読者は私だけではあるまい。
2.0 湘南ダディは読みました。
この作者、時々どうしようもなく救われない小説を発表します。「白夜行」(集英社文庫)、「さまよう刃」(朝日新聞)などもそうでした。本作品もさわやかで、幸せな読後感をお求めの方にはおすすめできません。
  学校でいじめに会い、ゲームに引きこもる少年が少女を家に呼び込んで殺害する。夫との関係は義母を計算づくで引き取ったころから冷え切ってしまっている妻は息子を溺愛しており、事件を何とか隠蔽するよう始末を夫に頼む。この前原昭男の家庭のなんとも重苦しいたたずまいが、いやになるほど見事に描かれています。こんな大事を引き起こしたのに二階の自室に閉じこもったまま降りてこない息子、息子をかばい夫が二階に上がっていくことを許さない妻、結局妻のいうままになってしまう昭男、これらとは全く関りを持たぬように生きている昭男の老母。
この家庭で交わされる会話がまたスゴイのです。
「あんなふうになったのはおまえがあまやかすからだ」
「あたしのせいだっていうの」八重子は目を剥いた。
「おまえが何でもいいなりになるから、堪え性ってものがまるでなくなったんじゃないか」
「よくいうわね、あなたなんか何もしないで、面倒なことからはいつだって逃げるくせに」
「大体あなたはいつもこうなんだから。あの女の時もそうよ」
と、男としてはやりきれないやり取りが延々と続きます。 あまりに暗いままではと作者が読者サービスをしたわけではないでしょうが、冷え切った家庭のディーテールをこれほど克明に描写したのもこの結末のためかとおもわせるすこしホッとするオチも最後に用意されています。

まことにお見事で一気によませますが、前原一家のこの後、家はどうなるのか、夫婦の関係は、少年法で裁かれてやがて社会にもどってくる息子の将来は、事件の解決役となった老母はなどと考えると重苦しい読後感が残るのです。
やっぱりサスペンスはアメリカものがいいナァー。
4.0 さすが東野圭吾
少々強引な展開の仕方だが、主人公が置かれている家庭の立場も判ることもあり面白く読めた。親の痴呆症や子供いじめ問題、家庭内暴力など
現実味のある背景の設定であり、仕事にかまけて家庭を蔑ろにしてしまった漬けなのか。微妙な親子関係となった敏腕刑事が犯人の自供を迫るあたりは若干の違和感もあるが、やはり最後に一捻りあり、うまく纏まっている感じがした。
5.0 引き込まれる
正直東野さんの作品を今まで何冊か読んだんですが結末がこの後が気になるのにっ!!!というのが私の中でほとんどだったのですがこの作品は結末も納得できました。まさかの展開でしたが家族の切なさと尊さを感じられました。やっぱり東野さんの本は読みやすいですね。
5.0 加賀シリーズの最新
むしろ物語においてメインとなるのは殺人ではなくその後、だろう。

作者は天下一シリーズで「トリックは誰も興味が無い。社会問題をテーマにしたい。」という様な事を書いていたが、この作品は幾つもの社会問題を混在させた傑作だと言える。

加賀恭一郎シリーズは一ひねりされているものばかりだが、「赤い指」にはそれが何度も起こり、お決まりの展開に収まっていないのが良い。
高齢化社会において身内(そして自分)の介護は誰しも大きな問題となっていつか直面するが、その現実を認識させられただけでも読んだ価値はあると思った。
また親子関係の大切さも身にしみた。東野小説は30冊くらい読んだけど、泣きそうになったのはこれが初めてだ。

ページ数が少ないためコストパフォーマンスは微妙だが、加賀恭一郎シリーズでは「悪意」と並んでやっぱり傑作だと思う。

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