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日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか (講談社選書メチエ)

日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか (講談社選書メチエ)

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日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか (講談社選書メチエ)の商品レビュー

4.0 情報を活かすには情報を要求する側の体制が重要であると分かった
 日本においてインテリジェンスが活かされない根源的理由を大正時代からの陸軍・海軍のインテリジェンス部門の活動を緻密に追うことにより明らかにする。

 旧日本軍、特に陸軍においてはインテリジェンス活動は活発で、米国やソ連などの暗号は戦前からある程度解読していた事実には驚かされる。一般に流布しているイメージでは、日本の暗号は筒抜けだった、というものだけで日本の活動には言及されていないからだ。

 ただし、海軍については非常に意識が低かったようだ。しかも、陸軍が解読した英国の暗号を終戦間際まで知らされなかったという。また日本お得意のセクショナリズムだ。

 短期的・戦術的な面では情報部門がきちんと情報提供し、戦闘に貢献することはあったようだ。しかし、長期的・大局的な面では意志決定部門(参謀本部・軍令部や政治家)が恣意的に生情報を利用し、インテリジェンスとして提供することを要求しなかったことが問題であると主張している。この教訓は活かされているだろうか。
4.0 日本軍のインテリジェンスに関する初の体系的な研究
 日本が第二次世界大戦で敗れた理由の一つが「情報」だったというのは最早常識になっているが、意外にも日本軍のインテリジェンス活動を専門的に研究した書物はこれまで少なかった。本書は断片的な先行研究や防衛研究所に収蔵されている旧軍の資料を総合して、日本軍のインテリジェンスを体系的に描くことに見事に成功している。日本軍のインテリジェンス能力自体は相当なレベルに達しており、特に通信傍受能力がかなり強力だったといったことは、本書を読んで初めて知った。

 本書は最後に日本軍のインテリジェンスから現在の日本の情報機関が学ぶことができる教訓を引き出しており、参考になる。ただ、日本軍のインテリジェンスと現代日本のインテリジェンスを同列に置くのは、私見によれば、ちょっと無理があるように思う(同盟国である米国の存在、情報機関の多様化等がその理由)。さらに、インテリジェンスが機能しない理由として、筆者は作戦・政策サイドからの情報要求の不在を挙げている。これは確かにそうかもしれないが、これに加えて情報機関自体にも問題が無かったのかについても検証が必要だったように思う。とは言え、本書が画期的な書物であることに疑いはなく、日本のインテリジェンス研究に一石を投じた書物ということができると思う。
5.0 ストラテジスト必読の本
日本は、情報活動に、疎い。
だから戦争に負けたと良く言われる。
しかし、この本には、諜報部門における諜報活動はかなり精度が高く、暗号解読技術も優れていたことが記されている。
しかし
1.日本軍では、作戦部門が、重視され、情報部門が組織のなかで低く見られていた。
2.日本軍では戦略を練るとき、外部の戦略状況より内部の人間関係が重視され、特に積極的作戦を提案する人間のやる気と体面を配慮しがちだった。

この結果、本来、情報をもとに冷静に判断されるべき外部環境を希望的観測という予断で見る傾向があった。
そのため、不利な情報は無視される傾向があったことが指摘されている。
これは、現在の日本企業に、そのまま当てはまる。
5.0 今の日本でも結局は同じ状態なのではないか?
最近、インテリジェンスに関する本が多く出版されるようになって来たが、戦前からのインテリジェンスに関して体系だってきちんとまとめた一般的な書籍は余り無かったのではないか。その意味で、本書は良く整理されているし、分かり易くその本質と課題が述べられており有益な本だと思う。

第二次大戦での日本の大敗は情報戦での敗北が大きかったと良く言われているが、本書は、実は日本の問題は情報戦そのものではなく、情報を戦略的に利用できなかった為政者、軍首脳部に有ったと言っている。

日本における問題は、貴重な情報を得ながら、不毛な議論を繰り返し、結局、有益な結論を得ずに最終的にその情報をゴミ箱に投げ捨てると言う、「ゴミ箱モデル」と言う言葉で表現されている。

独ソ戦の開戦に関して犯した致命的な政治的決断の誤りは、情報の不足ではなく、正しい情報を得ながら結局それをゴミ箱に投げ捨てた為政者たちの無能の結果だと言うことが良く分かる。

振り返って、今の日本でも結局は同じ状態なのではないか?

無能な為政者たちは正しい情報を得ながら、まだまだ「ゴミ箱モデル」を続けている気がしてならない。本書はそれを強く警告しているように思われる。
5.0 「情報、情報!」と言っている割には、
著者の主張のポイントは、「常に政策サイドから情報の要求をだし、情報サイドに情報を収集・分析させる情報運用」(インテリジェンス・サイクル)であり、政策立案サイド(旧日本軍では作戦部)が情報収集・分析をやり始めると政策決定に都合の良い運用になってしまうため、政策・情報両方の組織の役割分担と一定の緊張関係が必要、というものです。

旧日本軍は暗号解読など個々の技術的側面では決して遜色のないものがあったにも関わらず、こうした情報を活かす組織の仕組みに対する理解と重要性の認識が欠けていたことが敗因のひとつ、との指摘には合理性を感じます。特に経済・産業情報や相手の文化といったトータルな観点、中・長期的な観点から大戦略レベルの状況を判断するセクションがなかったことは決定的だったようです。

面白く感じた知見は、政策決定者が常に情報のリクワイアメントを発することが強調されていること。「情報、情報!」と言っている割には、情報収集・分析ニーズを発する戦略目標を提示しない組織のトップも多いですよね。また、情報の提示には相手のリクワイアメントを見極めると同時に、相手がどの程度その情報を読み解く能力があるかで分析精度を変える必要がある点、また日本の場合、合意優先の組織間調整に時間がかかるため、一旦方針が決まってしまうと情報を取り入れて、再度調整をとろうとすることができなくなってしまうこと。こうした点は、勿論今日でも色々な組織運営で留意すべき洞察だと感じます。

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