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日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか (講談社選書メチエ 386)

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日本軍のインテリジェンス なぜ情報が活かされないのか (講談社選書メチエ 386)の商品レビュー

5.0 「情報、情報!」と言っている割には、
著者の主張のポイントは、「常に政策サイドから情報の要求をだし、情報サイドに情報を収集・分析させる情報運用」(インテリジェンス・サイクル)であり、政策立案サイド(旧日本軍では作戦部)が情報収集・分析をやり始めると政策決定に都合の良い運用になってしまうため、政策・情報両方の組織の役割分担と一定の緊張関係が必要、というものです。

旧日本軍は暗号解読など個々の技術的側面では決して遜色のないものがあったにも関わらず、こうした情報を活かす組織の仕組みに対する理解と重要性の認識が欠けていたことが敗因のひとつ、との指摘には合理性を感じます。特に経済・産業情報や相手の文化といったトータルな観点、中・長期的な観点から大戦略レベルの状況を判断するセクションがなかったことは決定的だったようです。

面白く感じた知見は、政策決定者が常に情報のリクワイアメントを発することが強調されていること。「情報、情報!」と言っている割には、情報収集・分析ニーズを発する戦略目標を提示しない組織のトップも多いですよね。また、情報の提示には相手のリクワイアメントを見極めると同時に、相手がどの程度その情報を読み解く能力があるかで分析精度を変える必要がある点、また日本の場合、合意優先の組織間調整に時間がかかるため、一旦方針が決まってしまうと情報を取り入れて、再度調整をとろうとすることができなくなってしまうこと。こうした点は、勿論今日でも色々な組織運営で留意すべき洞察だと感じます。
5.0 「歴史学とは現在に生かしてこそ意味がある」、まさにその通りの書籍
他の評では言及されていないが、日本軍が情報を有効活用し善戦した事例があるといっても、それは戦術面に限られていた点に問題があった、と著者は指摘している。第1次大戦で戦争は、「幾つかの戦闘で勝利->有利な講和」という(明治開国当時日本が参考にした当時のドイツがよく利用した)手法から総力戦に移行したが、参戦しなかった日本は、総力戦にあわせた変更ができなかった。この為、マレー・シンガポール作戦や真珠湾という「戦術」では勝利したが、国家レベルで戦略の検討ができなかった為、「真珠湾が成功すれば米国に厭世気分が広がり講和できるだろう」(山本長官)と主観的希望を戦略と履き違えてしまったことにある。衝撃的だったのは、内閣府の総力戦研究所で、1941年夏に軍と若手官僚が行った図上演習で、「開戦から2年程度は戦えるが、4年後には国力を使い果たし、最後にはソ連の日ソ中立条約破棄による満州侵入で日本は敗北する」との結論を出していたことである。この結論を、東条は「机上と実践は違う」とここでも主観的希望を述べて一蹴。

 また内閣・陸軍・海軍・公安などがそれぞれ情報機関を持った結果のセクショナリズムも問題ではあるが、それ以上に問題なのは、「コンセンサスを得ること」が優先され、その為に有利な情報が取捨選択されていく、という、現在の日本社会にも蔓延する風土であろう。あなたの職場でも目にしませんか?

 昨今の政治の迷走振りを見ていると、重要な政策議題も末節的な反対論議に時間を費やした挙句、葬られるか骨抜きにされていく。多少データを使う政治家も出てきているが、本書にある通り、政策ありきで利用されているだけの趣が強い。既に衆遇政治の段階に入っている様に思えるが、多極化が進み情報が飽和する世界の中、インテリジェンスに基づく判断は国家でも個人でも必須化しつつあると思えます。
4.0 「知の集積地」としての日本軍
政策決定のための分析力。ビジネスを初めあらゆる知的活動の中枢にあるものです。
戦前日本における「知の集積地」であった軍組織を通して
インテリジェンスとは何かを明らかにしており、非常に興味深いです。

近年、日本軍が善戦していた事実を示す史料があちこちから見つかり
本書でもその一端を知ることができますが、副産物として読むべきでしょう。

情報分析を意思決定に従属させる弊害が事例で解説されており
蓄積され複雑化する情報を集約・昇華させる難しさを思い知らされます。
日本人がようやく戦前と向き合えるようになったと感じさせる好著。
4.0 インテリジェントサイクルの重要性
 本書を読んでまず思い浮かべたことは「人は見たいと思うことしか見えない」というカエサルの言葉だった。しかし、本書でも指摘されているように単に情報といっても事実の断片たる「インフォメーション」と分析意味づけされた「インテリジェンス」というものは全くことなるものである。しかもカエサルの言葉のようになってしまうと都合の悪い情報は伏せられ、都合のよい情報しか集まらなくなる。著者は、これを「情報の政治化」と指摘しているが、このようなことは「情報化」が叫ばれる現代の企業組織などでも注意しなければならないことだろう。これを防ぐためには、インテリジェントサイクルをうまく回す、それも仕組みとしてそれを整備することの重要性を訴えている本書は現代のわれわれにも示唆の大きい本だと思う。
5.0 名前負けしない奥の深い本
 インテリジェンスについて、基本的な説明を加えながら、実例を元に結論を導き出すと言う方法を取っております。
 著者も後書きで、資料が少なくて思うように仕事が進まないとぼやいて、先輩に叱られるエピソードがありましたが、本書では、英米の外交暗号の入手や、ソ連における地道な情報収集活動、情報担当将校の立場など、それまでなかなか知ることができない事を知ることができ、著者の本作への力の入れようには脱帽します。
 この時代に興味がある人や、情報活動に関心がある方は是非読んでおいても良い本と言えるでしょう。

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