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月の影 影の海〈下〉十二国記 (講談社文庫)

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月の影 影の海〈下〉十二国記 (講談社文庫)の商品レビュー

4.0 大きな物語自体のスケール
「十二国記」は総じて言えば、王と王の半身である麒麟の物語、彼らが収める十二の国の物語です。

 麒麟が王を選び、王は麒麟と運命共同体となの国を治めていくのですが、彼らがいかに仙(不老不死の仙人)や神獣であったとしても、心を持つ人間に近い生き物であり、彼らの生き方そのものが国を左右し、民の命を左右します。もちろん王の資質がなかったり、王になりたくなかったりする王が立つこともあり、そんな彼らがいかに王になってゆくのか、またたとえ名君と言われた王であってもいつかは終わっていくというのが、この物語の読みどころです。王と一蓮托生の麒麟もまた適切でない王を選んでしまう(天啓には逆らえないので。ただし天啓自体に実体はない)ことがあり、「選ばれた人間」であっても万能ではありません。そして、そもそも天啓とは何なのか天意とは…と深みのあるテーマを持っています。ちなみに、恋愛色は皆無でストイックです。

 下巻になって、陽子はやっとふかふかしたかわいい鼠の姿の半獣、楽俊と出会うのですが、散々な目にあっていたので簡単には信じることができない陽子…。月の影影の海はファンタジーの中でも人間くさく弱い部分を容赦なく扱っている作品で、読み応えがあります。「王」にならずに馴染んだ蓬莱(日本)帰りたいと泣く陽子。どちらかというとおどおどしたおとなしい高校生だった彼女が、いきなり途方もなく大きな役割を与えられ戸惑う気持ちが丁寧に描かれています。後半に登場する頼もしい協力者である、陽子の国「景」の隣国「雁」の王様とその麒麟もなかなか魅力的です。蓬莱(日本)で育ったふたりは500歳…この物語だとほんと長寿のひとが多いので、自然とも大きくなります。「雁」の王様は元戦国武将なんですよ。現代を生きてきた陽子と戦国武将が協力し合っていくのがなんだか不思議と面白くて。下巻はよく読み返します。
5.0 陽子
このシリーズの臨場感は凄まじいものがあります。

中でもこの一冊は名作です。
5.0 すがすがしい読後感
最初は救いよいうのない、これでもかってほど不幸が襲い来る重い話だと思いました。
でも下巻!!不幸のどん底の中、主人公が辿り着く、私にとっては衝撃的なセリフがあります。
「裏切られてもいい。裏切った相手が卑怯になるだけで、私の何が傷つくわけでもない。裏切って卑怯者になるよりずっといい」
振り返れば、小さなプライドを守るのに必死で、どうでもいいような勝ち負けに神経を擦り減らして、裏切られる前に裏切ってやれ、
と荒んでいた自分が、ほんと、小さな存在だったな・・・とすがすがしい敗北感を味わいました。完敗です。
4.0 役割を生きることの難しさ
急に読みたくなって、本箱から取り出した十二国記。やはり読ませます。
 この巻は、主人公・陽子が、本来彼女が属する異世界に連れ戻され、苦難の末に王となるまでを描いた作品です。それにしても暗いなあ。人間の心の醜さや弱さ、卑怯さを、しつこいまでに書き続ける上巻。下巻で盟友・楽俊が出てくるまでは、本当に鬱々としている。しかも、それが図星。
 人が自分らしく生きるとはどういうことでしょう。社会の中で、自分に求められている役割を果たすこと。日本における陽子にとっては、「敵を作らず、誰をも傷つけないよい子」を演じることでした。しかし、よい子たらんとする陽子の努力は、傍目には「本心を出さない表面だけ付き合いをするの人間」としか写らない。一方、十二国における陽子は「天命により麒麟に選ばれ、荒廃した国土を救うことを運命付けられた王」という役割を求められます。ただの女子高生だった彼女にとっては、ほとんど不可能に近い。しかし、運命は容赦なく陽子を戦いの中へと駆り立てていくのです。最終的には、無事王位につくものの、陽子の未来が決して安穏ではないことは容易に想像がつきます。
 巻末に付された、いかにも歴史書らしい記述の文章がいいなあ。上下巻を費やす陽子の波乱万丈の運命も、歴史の中で見るとたったこれだけになるというのも、まさしくその通りだと、歴史に名を残さない庶民は思うのです。 
5.0 かけがえのない友
陽子の過酷な旅も終わり、そこで出会うかけがいのない友、楽俊。

何故、このような異世界に来なければならなかったのか、楽俊と陽子は、手がかりを探しに旅に出る。楽俊を信じ、親友となるまでの陽子の心の葛藤。人に何かをして貰うのを待つだけじゃなく、自分が、相手に何かをする事によって、お互いに支え合う事が成り立っていく。そんな当たり前だけれども難しい、忘れがちなことを、考えさせられた。

そして陽子の旅の真実が明かされ、陽子は大きな決断をする。成長した陽子の、凛とした美しい女性にとても魅力を感じた。

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