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ガラスの麒麟 (講談社文庫)

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ガラスの麒麟 (講談社文庫)の商品レビュー

5.0 「ガラスの麒麟」のような〈少女性〉
美しく聡明で“小さな貴婦人”と称せられた
女子高生・安藤麻衣子が通り魔に殺された。

そんな麻衣子を不在の中心として、彼女のわずか17年間の生の軌跡と死の
真実を複数の語り手の視点から光を当て、浮き彫りにしていく連作短編集。


麻衣子には、彼女に対する実体のないイメージが重ねられたり、
逆に彼女を「見る」者の姿を照らす鏡の役割が担わされています。

そのため人々は、彼女のイメージに自分の見たいもの、あるいは
見たくないものを見てしまい、それに囚われてしまいます。


幻影の囚人となってしまった人々にそっと寄り添い、救済への道へと
導くのが、全編を通して探偵役を務める養護教諭の神野菜生子です。

麻衣子に最も近しい魂を持つ彼女は、事件の謎を解くことを通じて、関係者がその内に
宿す麻衣子的心性――不安定で繊細な〈少女性〉を掬い上げ、代弁していきます。

しかし、最終的には彼女自身も決して傍観者の立場にはとどまれず、麻衣子を
殺した犯人と対峙し、己自身の痛ましい過去との決着を迫られていくことなります。


現代を覆う、理不尽や息苦しさに窒息寸前になっても、
それでもこの世界で生きていかなけらればならない我々。

麻衣子のように、彼岸に行き〈永遠〉とはならず、不自由な足を引き受け、
一歩一歩踏みしめるように生を肯定した神野の姿に、救いがあります。
5.0 また読みたくなる
 冒頭で、女子高生が刺し殺される、というショッキングな事件から始まります。加納朋子さんの作品は、どちらかというと「日常の謎」をテーマにしたあったかいミステリが多いので、殺人事件から始まるとなると、この先どういう展開のなのかと先が気になって気になって、仕方ありませんでした。

 殺されたのは、安藤麻衣子・17歳。彼女を取り巻く人々によって綴られる短編集。一つ一つが独立しているようで、少しずつつながっている。最終章の『お終いのネメゲトサウルス』は書き下ろしのようですが、ここまで読んでようやく物語が終わるので、連作短編集といってもいいかもしれません。

 少年犯罪が起きるとよく「心の闇」なんて言葉が使われますが、心に闇のない人間なんているんでしょうか。10代の頃っていうのは、例えばスポーツが得意でオリンピックに出たいとか特別に何かに打ち込んでいない限り、自分がなにをやりたいのか、どこを目指して生きているのか、または自分は何のために生きているのか、なんて、漠然とした不安や悩みを誰もが抱えてるんじゃないでしょうか。一度は10代だった私も、ここに出て来る安藤麻衣子や野間直子たちのように、どこか不安定な部分というのは持っていたんだと思います。死にたいとは思っていなかったけど長生きしたいとも思っていなかったから。「生きる」っていうことがどういうことなのか、高校生にはよくわかりませんよね。それが当たり前だと思います。親の庇護を受けて生活をしているが、「子ども」かというとそうでもない、一番中途半端な時期なんでしょう。表には出てないかもしれないし、自分でもそれほど自覚はしていなくても、一歩間違えると転がり落ちてしまうような不安定さを持った年頃なんだと思います。

 作品の中で、麻衣子の通っていた高校の養護教諭・神野先生が安楽椅子探偵役になっています。恋人と一緒に事故に遭い、怪我は完治したはずなのにまだ不自由なままの右足。恋人がなくなったというショックによってそうなったんだと自分でもわかっていながらどうしようもない、と寂しく笑う神野先生が、何とも痛々しい。保健室に入れ替わり立ち替わりくる女の子たちに自分を重ねあわせてしまう、芯が強いんだけれど傷つきやすくもある女性です。各章の謎の解き方はちょっと突飛すぎる?と思う部分もなきにしもあらずですが、ミステリとしても十分楽しめるないようになっています。

 ラストは大学に合格したとか、結婚が決まったとか、登場人物たちの未来への希望が垣間見える。この波に乗って、神野先生の足も治り、直子のお父さんといい雰囲気に・・・となるといいんだけどなあ、と期待を持たせてくれる終わり方でした。推理だけではなく青春小説の要素もあり、何度も読みたくなるすばらしい作品です。
5.0 個人的には
一種のバイブルともいえるくらい愛読しています。

主人公の死から始まる物語は、悲しいほどの透明感と、危ういバランスの上で生きる少女たちのリアルな表情までも鮮明に映し出します。
悲しいはずの死が繋いでいくのは、綺麗な感情なのかも知れない。

純粋に「良い」と思える作品です。
好き嫌いはあると思いますが、面白い趣向だし、読んでみて下さい。
3.0 心の描写が見事!
少女たちはつねに不安定な心を抱えて生きている。どんなに自分が恵まれた環境の中にあっても、心はいつも揺れ動いている。危うい心のバランス、それがほんの少し崩れただけでも、少女たちは深く傷ついてしまうのだ。作者は独特の感性で、さまざまな人物の心の動きを見事に描いている。そして、その描き出された悩み、苦しみ、悲しみは、読者の心と共鳴する。人はなぜ死を願う?人はなぜ生を願う?この二つにいったいどれほどの差があるのだろうか。
3.0 危麗な物語
本の面白さをページをめくらせる力、とするとしたら、なかなか面白い本だと思います。
各章がだんだんと1つの道になっていく様子は、やはり面白いですね。
ただ、殺人やそれをとりまく謎、謎解きがメインというよりは、その周りの
女性達の物語、と言った方がいいように思います。
タイトルから想像できる、綺麗で、もろい、そして危うい。そんな印象を持ちました。
女性向けというレビューもありますが、私もそう思いました。
一応女ですが、ミステリー性を求めていた私には少し物足りなく感じました。

各章の最後が、悲しく、暗い雰囲気から急に(と、私には感じられる)
明るく転調していて、ちょっと無理を感じました。
確かに希望を持たせてくれるけれど、とってつけたようで、逆に後味が悪く感じます。

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