日本の危機管理体制/体勢の実態
上巻を読んだ人ならこの下巻に入るくらいになれば一気に読めます。
敦賀半島に潜伏する北朝鮮工作員の脅威を排除するオペレーションと、
裏側で浮上してくる北朝鮮本国の動向や中国の思惑などが、
次第に恐るべき事態へと発展しようとして行きます。後半にさしかかってくると、
どんどん盛り上がって来るのに大丈夫か?
下巻じゃなくて中巻の間違いじゃないか?
と心配しますが、終りは意外とあっさりとしていました。
どうやって状況が終了するのか、というところで、
最初から別エピソードのように進行していたスパイ事件が絡んでくるあたりは、
伏線としては露骨だし長すぎる気もしますが、構成としては効いています。
日本の政治家・官僚の防衛意識のなさ(低さではない)、
それによる自衛隊のがんじがらめともいえる制約や束縛などは
他の本や『パトレイバー2』などで知っていましたが、
ここまで徹底した取材による具体的な構造問題を描いてくれると逆に爽快ですらありました。
日本の防衛問題を描いたシミュレーションとしてはトップクラスの出来で、
問題といえばディテールはともかく小説としてはさらに向上の余地があること、
あとはタイトルが作品中で浮かび上がる時にももうひとつインパクトがないこと、
くらいでしょうか。
でもそれらは迫真で精緻な内容にくらべれば大した問題ではありません。
傑作の結末は?
緊迫感あふれる展開が続いた上巻につづき,下巻ではいよいよ命題のひとつである「自衛隊」の行動原則が緻密に描かれる。関心したのは,作者が登場人物ひとりひとりを背景描写豊かに描いていく力量。私は下巻を読みながら,トム・クランシーの作品とだぶらせていた。 警察の特殊部隊(SAT)でも苦しめられた「現場対応」と「官僚主義」に同じように自衛隊員達も苦しめられる。読了した後の,やるせなさや虚脱感は,私だけが持つ感想ではないはず。その感覚を感じることこそが,間違いのない「傑作」である証明となるからだ。