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比叡山の山奥に隠棲する白樫家と那智家。 両家は、数世代に渡り婚姻を重ねることで、白樫宗晃ひとり に収斂する、完璧に左右対称な家系図を持つに至っていた。 その白樫家の屋敷において首切り殺人が起き、 死体の首だけが、ピアノの鍵盤の上に残された。 雪により外部と遮断されていたため、家族の中に犯人が いると思われるが、家族全員に堅牢なアリバイがあって……。 屋敷には、全室・全廊下に大型デジタル時計が設置されていたため、 生首が発見されるまで、関係者全員がどう行動したかが、分単位で 把握されています。 そうした奇異な状況を踏まえ、烏有や「ピブルの会」の面々が、 関係者のアリバイ崩しを試み、推理合戦を繰り広げることに。 このアリバイ崩しの推理合戦は、正直、煩雑なうえ退屈。 作者からすれば、病的に細かいアリバイ崩し自体が目的なのではなく、 固有の人格を持ちえない人間を駒として扱う、人工的で異様な世界を 構築するための手段として導入されたものだったのでしょうが、やはり そこだけ物語から浮いているという印象は否めません。 なので、読者としては、そこの部分は読み飛ばし、 後から必要な部分だけ読めば、十分だと思います。 ところで、本作では一つの「家族」の崩壊が描かれるのですが、それに 烏有と桐璃の結婚を対置させているのには、いろいろと深読みを誘います。 家族を得た烏有が、従来通り、事件に惹きつけられる特異な一般人のままでいるのか、 それともメルカトルや木更津が期待するように、探偵としての資質を開花させていくのか、 興味深いところです。
2000年に講談社ノベルズとして出たものの文庫化。木更津・烏有もの。 メタミステリと大仕掛けな設定が融合した作品。なかなか面白いと思う。 容疑者たちの行動を細かい時間ごとにチェックして、いったい誰に犯行が可能だったかを割り出していく。のかと思いきや、まったく違う方向性をちらつかせ、最終的には思いもよらない真相へと到達する。このアンチミステリ感と、それを支えるトリックが読んでいて心地よかった。 気になる烏有の結婚問題についても書かれていて良かった。
時間的にメルカトルが出てこないので、今までの作品に比べてかなり普通のミステリになった気がする。奴こそが全ての物語を「創る」人間だったね。木更津探偵は探偵としては活躍しているわけじゃないし、そういう意味では面白いかも。メルカトルが探偵として活躍していたかと思うとそれはあれなのだが。