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熊の敷石 (講談社文庫)

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熊の敷石 (講談社文庫)の商品レビュー

2.0 美しげと美しいはちがうだろ?
機内誌やグラビアが売りの雑誌などでよくみる紀行エッセイと『熊の敷石』のちがいは何なのか。
『熊の敷石』が小説であるためには、サンモンミシェルの絶景や、町の地名の由来、そうしたもの以上の何かがなければならない。語り手の「私」と友人ヤンの快くも、とらえどころのない関係がこの小説の小説たるゆえんだったのかもしれない。ところが本来であればテーマであったであろうこの要素はテーマであることに失敗している。
 フランスを訪れていた「私」とヤンは再会し、限られた時間の中でも充実したときを過し、2年のギャップを感じさせないほど、冗談もいい合える。ところが、ヤンが撮り、「私」にみせた数枚の写真のどれひとつをとっても、背景にある悲惨さや重さをヤンと同じように感じられない「私」は違和感をもつ。(飽くことなく書かれ続ける日本文学的感傷!)「話すことの必要のないことをなんとなく話させて、傷をあれこれさらけさせているのではないか」と。ところがヤンと「私」は気まずくなることもなく、こうした違和感は読者からすれば的外れにしかうつらない。この的外れな取り越し苦労をこの自称小説から取ると、アンニュイな紀行エッセイでしかない。
 冒頭で「私」がみる夢。眼球のない少年と少年の抱く熊のぬいぐるみ。余計なおせっかいという意味の熊の敷石ということば。すべて熊のモチーフが共通しているが、これらの挿話は物語の構成部分として何の機能も果たしていない。終りで過去の歯痛と現在の歯痛が重なる部分も意味不明。
 文学の匂いのする、気のきいた挿話を美しげなことばで綴ったものを小説として提示する人がいて、小説として受け取る人がいる、という状況は思考と想像の欠如以外の何者でもない。いったいこの人たちはいつになったら美しげなフィクションと美しいフィクションのちがいに気がつくのだろう。
3.0 ヒロガリ!
堀江さんの文章はとても広がりを感じます。例えば何かを描写していてもその風景はもちろん、ここへ至るまでの過程までも(つまり時間的なひろがり)読者の想像が広がっていきます。
その風景から色、光の加減、風向きや流れているであろう音楽まで想像せずにはいられませんでした。フランスを舞台にした偶然のなせる、ふとした繋がりがおこす感情の変化や考え方のうつろいがすばらしかったです。

ま、ちょっと私の妄想も入っているかも知れませんけど、。
でも、そんな私に妄想を抱かせる程私にとって個人的な作家になりそうです。ほんと綺麗な写真がどこまでも広がっていく感覚です!
4.0 表紙に意味が、、、
いい表紙(装丁)写真だ。
実はそれにも意味があった。
どちらかというとロードムービーな展開。
異国のロードなので実感はないけど、想像するのに文体が役立つといういい見本。
重くもなく、もちろん軽くもない。
淡々としているような感じなのに、残るものがある。
こういう静かに流れる本てけっこうありそうで、ない。
だから残るんだと思う。
著者の正当さを感じた。

3.0 淡い印象、感情を芝居仕立てにすることなく描いた純文学
~2001年、第124回芥川賞受賞作品。
純文学でした。久しぶりに純文学らしい純文学を読みました。
表現の作り方、感情を伝えるときに選ぶ言葉の面白さ、それを感じさせる小説です。
表題作の「熊の敷石」はフランス語のことわざ。
「いらぬおせっかい」ということ。
ただ、その意味付けが全体の謎掛けになっているというより、一つの大きなエピソードとなり、~~主人公の旅の印象を取りまとめようとしています。
難解なというより、文学としての表現の豊富さ、スタイル、そういったところに面白さがあるように感じました。
一瞬、読み取りにくいような、長いセンテンス。長い段落。
注意深く読み取ることを要求する文章ですが、ゆっくり読んでいくと淡々とした日常の中の淡い印象、感情を芝居仕立てにすることなく描~~いています。その感情の描き方が面白いと感じました。
でも、もうちょっと起伏がある、ストーリー自体を楽しめるものの方が読みやすいかなあ。~
5.0 心地良い
堀江氏が芥川賞を受賞した受賞作。この作品で堀江敏幸氏を知りました。以後、氏の著作を買い漁っては読みふける日々がつづきました。

今までどちらかと言うとエンターテイメント分野(特にミステリ)中心だった傾向がガラッと変わりました。氏のエッセイとも小説とも判別しにくい作風がなんとも心地よいのです。氏の著作を読むと「教養」と云うものに対しての信頼が回復される様に思います。アアこういう精神世界もアリなんだと感じます。氏の著作から巨大な智(知)の世界を垣間見ることができる様にも思います。文庫に収められ同じく芥川賞作家の川上弘美氏の解説を読みたいために文庫版も再度購入してしまいました。

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