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1954年、洞爺丸沈没事故で両親を失った蒼司・紅司とその従弟の藍司。悲しみにくれる間もなくその年の暮れに、さらに紅司が自宅で入浴中に死体となって発見される。風呂場は完全な密室で誰かが侵入した形跡はないが、果たして彼の死は本当に自然死なのか。 蒼司の友人である俊夫、その許婚の久生、そして友人の亜利夫ら素人探偵は、この密室事件を殺人と断定して真相を推理していく。しかし犯人にたどり着く前に第二、第三の事件が発生していく…。 上下巻で800頁超もある大作ですが、文章は平易でぐいぐいと引っ張られるように読んでしまいました。1964年に書かれたこの作品は、最近の社会派推理小説のような骨太な正統派ミステリーというよりも、一時代前の乱歩や正史といった作家が築きあげた妖美な怪異譚という趣の物語です。下巻399頁にヘッセの「デーミアン」の名が引かれていますが、まさにあの小説のように、「あやかし」と形容するが相応しいほど浮世離れした淫靡な美しさを見ます。 私はさほどミステリーに詳しくはありませんが、こうした懐かしき時代に属する探偵推理物語は必ずしも多くの読者を現代に獲得することができないのではないでしょうか。熱烈なるファンを得たカルト的要素を含む小説であると同時に、最近のミステリーファンを寄せつけないところが多分にあります。 ですから裏表紙にある「推理小説史上の大傑作」という謳い文句は誤解を与えると思います。むしろ怪奇趣味に溢れた、奇妙な浮遊感をずっと味わいながら読む作品といったほうがふさわしいのではないでしょうか。 軽い目まいを覚えながら頁を閉じた一冊です。
私はこれを読んで、「中井英夫」にハマりました。探偵小説であって、探偵小説にあらず。推理小説であって、推理小説にあらず。上下巻の分厚さは、まるで感じません。文章も平易だし、登場人物もそれぞれ性格がしっかり描かれているので、この類の読み物にありがちな、「この人、誰だっけ?」と読み返すこともありません。「虚無への供物」…大仰なタイトルに躊躇していたあなた!騙されたと思って、是非読んでみて下さい。
探偵小説であって、探偵小説にあらず。推理小説であって、推理小説にあらず。
上下巻の分厚さは、まるで感じません。文章も平易だし、登場人物もそれぞれ性格がしっかり描かれているので、この類の読み物にありがちな、「この人、誰だっけ?」と読み返すこともありません。
「虚無への供物」…大仰なタイトルに躊躇していたあなた!騙されたと思って、是非読んでみて下さい。