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風の歌を聴け (講談社文庫)

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風の歌を聴け (講談社文庫)の商品レビュー

4.0 最初の一冊にオススメな理由
 架空の小説家「デレク・ハートフィールド」を所々で引用しながら、「完璧な文章などといったものは存在しない」という書き出しで始まるこの処女作。架空のあとがきでも「デレク・ハートフィールド」との出会いをのうのうと書いてみせたメタ小説風味のフォーマリズムは、今の著者の作品からは消えていってしまったものだ。これは処女作においてその才能や構築力をアピールする必要があった作者が敢えて取った文学的戦略なのかもしれない。

 ストーリー自体は、その後の村上春樹作品に通じる内向的でポップな味わいが描かれており、登場人物がヤマ場で必ず泣く他の作品同様、この作品でも登場人物達は泣いている。でも、泣いてもどうしようもないことが明白すぎるくらい、この世界のダメさが充満している今の時代では、正直、この時期の春樹作品特有のスノッブさはそろそろ色褪せかけている気がする。

 それでも、この作品が今でも良むに耐え得る作品である理由は、実は先述のフォーマリズムにあるという点が面白い。著者が処女作から完成された作家だったことがよく分かる、色んな意味で最初に春樹を読むに適した一冊。

 
5.0 2008年時点での僕の理解。
何か困難にあたるといつもこの本を読んだ。
おかげでもうすでに50回は読んでいると思う。

何のために書かれたのか分からない、
でもすごく深いものがあるように感じられる。
時々そんなはずはあるわけないのに
「これは将来の僕が書いたのではないか?」
などと思わせるような感覚も覚える不思議な本。


ただ、何度読んでも自分に引っかかってくることからなんとなく分かったことがある。

何かを学び取ろうとする姿勢を持ち続ければ年老いることは苦痛ではない。という冒頭の言葉。

いろんなことを考えながら50年生きるのは、はっきり言って何も考えずに5千年生きるよりもずっと疲れる。そうだろ?という台詞。

君は何を学んだ?そして絶望に自殺をする青年。


そして最後に僕が一番好きな太文字の言葉にぶつかる。


僕達は今の自分達よりも成長するためにみんな歯を食いしばって生きているし、
これからも同じことを続けて行くのだろう。
5.0 「風の歌を聴け」を主題とせるヴァリエイション
 風そのものは、しゃべりはしないよ、言葉を喚起するんだ。――村上春樹さんは、この作品の中で、そんなことを書いていた、と私のおぼろな記憶は語っている。
 ある雑誌で、町田康さんの文章を読んでいたら、文学風をふかした文学チックな文章は、実は、にせものである。みたいな文章と出会った。そういえば、太宰も、いかにも詩人然とした、気取った青年は実はにせものだ、と言ったり、ヤソのヤソくさきは、真のヤソにあらず、などと書いていた。そこで私は、このレヴューを、レヴューらしからぬ、真のレヴューにしたいもんであると思い、これを実行に移そうと思う。
 プニューマ(風)は心のままに吹く。プニューマ(霊魂)もまた、同じである。
 換気は、換気。ドスト氏の作品で、大事なのは、空気を入れ替えることだ、というのがあった。窓開ける。空気が、風が吹き込む。新鮮な風が。風は人にインスパイア(霊感)を与えるのだろうか。
 梶井基次郎のある短編には、チェホフの短編が登場している。男の子が、女の子を乗せたそりを押しながら、下り坂を下っていく。女の子は、下っていく途中、男の子に何かささやかれたような気がする、何か、甘い言葉を。けれど、それは風の音であるようにも思われ、判然しない。そこで、女の子は、もう一度、男の子にそりを押すようせがむ、もう一度、もう一度、と、女の子はせがみ続けるが、結局、女の子は明確な答えを出せない。
 結論、作品とは風である。作品そのものは、けっして、何も語ってはいない。私たちは、作品が喚起する言葉に耳を傾ける。自分のうちにあって、しかし、普段は姿を見せない、言葉たちに。それが、文学を読む、ということなのかもしれない。
 自分ながらわけの分からないこと書いた。なんのことはない。私の文章能力が、つたないだけの話である。なにが真のレヴューか。真のレヴュー風のまがい物になっちゃった。失礼しました。
5.0 深夜の静まりきったキッチンのテーブルの上で
どうも村上氏の作品は評そうとすると、つまり言葉にすると嘘になってしまうようなところがあって、こうして書くのはなかなか難しいところがあると思います。いわく言葉にし難い魅力と、特に古い作品になると個人の思い入れが重なり、普通の人にはこの感性を客観化し辛いせいなのでしょう(自分がそうです)。この後に続く「1973年のピンボール」や「ノルウェーの森」などそっと心にしまっておきたい、そんな作品の多い作家のような気がします。

1979年刊行の表記作ですが、デビュー作として歴史もあるだけに(といっても30年くらいですが)、同時代で作品に触れた世代にとっては「心にしまっておきたい」感が一段と強いものなのではないでしょうか(私はもう少しあとの世代)。村上氏自身は、ジャズ喫茶を経営するかたわらの日々、ある日ヤクルトの試合を見ていた神宮球場で突然、神の啓示を受けこの作品に着手したと述べており、この次の「1973年のピンボール」まではどことなく腰の定まらない執筆だった、と述懐していたのをどこかで読んだことがあります。まあ腰の定まらないまま、これほどのものが書けるのも凄いと思いますが、高校時代から恐ろしく文章の上手い奴がいる、と評判だった才能のなせる業なのでしょう。

仕事で疲れた後、深夜の静まりきったキッチンのテーブルの上で、ことことと筆を動かす若き氏の姿が浮かびます。
3.0 空の宝石箱
キラキラと輝く宝石箱のような作品です。
こんなにも素敵な文章って読んだこと無いと思わせるような。
とにかくその眩しさに触れるだけでも読む価値はあると思います。
でも中には何も入っていない宝石箱だと思います。

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