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羊をめぐる冒険〈上〉 (講談社文庫)

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羊をめぐる冒険〈上〉 (講談社文庫)の商品レビュー

4.0 ダンスダンスダンスを読んでからでは、ちょっと饒舌すぎるよう
10年ぶりに読んだ。ダンスダンスダンスほど高度資本主義に対する喪失感、あきらめ感がなく、言葉あそびというか、軽妙な文体でテンポよく物語が進んでいく印象を受けた。重力が少し減ったような村上ワールドが楽しめる。
4.0 我が青春の文学を48歳にして再読
我々が大学生だった1980年頃は大江健三郎が大御所的な存在であり、村上春樹は村上龍や片岡義男とともに、まだ一部の若者に支持されるだけの不確実な作家だった。あまり知的とはいえない友人に勧められて初めて読んだ時は、ただ軽くドライで気障な文章に拒否反応を起こした記憶がある。
その数年後、もう一度読んだ時に、実は意外に思想的に深くウェットな純文学だということに気付き、以後、すっかり作者の小説世界にはまっていた時期があった。
それから25年の時が流れた。
今、もう一度手に取って読んでみると、自分の青春時代が重なって切なく懐かしいけれど、決定的に時代が移り変わっていることがわかる。
気障でニヒルな登場人物たちは、重要な場面になるとやたらと煙草を吸っているし(しかもポイ捨て!)、スヌーピーのTシャツを着てしまっていたりする。レコードから流れている音楽はボズ・スキャッグス!ちょっと寒くなってくるような設定だ。今の大学生が読んだら、かなり違和感を感じるのかもしれない。
今、改めて感じたことといえば、彼は我々と同時代の作家ではなく、団塊の世代の代表者だったということだ。学生運動の敗北によって、喪失感を抱えて生きることを余儀なくされ、そんな我が身を嘆きつつ、ドライな次世代の若者に乾いたまなざしを送る、団塊の世代。
この話の中で、何も考えていない清潔で軽い大学生というのは、まさに我々の世代(団塊より一回り下)ということになる。皮肉なことに、村上春樹はこの世代に絶大な支持を受けて育った作家といえるだろう。本人が望んだかどうかは別として、彼は今では高校の教科書にまで載っている、日本を代表する文豪の一人だ。この《羊をめぐる冒険》にしたって、大学の授業で一年かけて講義しても良いような文化史的な小説になってしまった。時代背景、若者の感じ方、考え方の変遷、興味深い歴史的資料にすらなりつつある。
村上さん、思ったよりも女性に対する見方が軽い。妻も、ガールフレンドも、ただの小道具でしかないところが、女性読者としてはちょっとムッとさせられるところです。だから〈僕〉は逃げられちゃったってことなのかな?
ストーリーについては、他の方のレビューを読んでいただければ十分でしょう。
こんな読み方もある、ということですが、内容に対する評価は☆4つ。
基本的な部分では共感、感動できる作品です。
5.0 荒野の羊
今読了したところです。素晴らしい作品でした。
思いつきにすぎませんが、この「羊」はヘルマン・ヘッセの名作「荒野の狼」の「狼」とほぼ同じものを指しているような気がします。
ニーチェのいう「権力意思」や「ディオニュソス的なもの」、バタイユの言う「エロティシズム」、三島の言う「死の権力意志」、コリン・ウィルソンの「絶頂体験」のような衝動です。人を聖人や革命家にもすれば、独裁者にもさせる「何か」。
人をして「日常」の内に満足させず、もう一つ上の次元を求めさせずにはおかないもの。生の根拠にもなれば、個人を破滅させるような宿業的な衝動を指しているように感じました。
あるいは「人が生きるはパンのみにあらず 言葉にもよる。」の「言葉」のようなものかもしれません。
また、ヘッセの「狼」とは別の要素、日本の近代における周辺異民族への侵略という要素も関係する物のようでもあります。
いずれにせよ、この「羊」は村上春樹の思想と表現の核心にあるものだと思います。
4.0 どの程度自由なのか。
この時代設定の1970年代末の時点で、私自身は10代だったし、
刊行された80年代前半では、当然、二十歳一寸過ぎ。
しかし、「僕」と同様、30歳前後に為って見ると、時代背景や世代の違いは
有るものの、
1.昔、特に、学生時代と比べると、思ったよりもリッチに為っていた。
2.それで居て、「自由に生きる」為に、何か知らんが、やけに苦労している。
の2点が、共通点だった。

更に、30歳くらいの時は、世の中の仕組みが大体判っちゃっているから、
少なくとも、自分の働いてきた業界を足場にして、多少の冒険は出来るだろう、
もし、失敗したら、また一からやり直せばいいや、と思っていたりする。

この前半部でのキーパーソン「黒服の男」に、挑みかかるだけの
気概は、「僕」と同様、あの頃の私自身も、有り余るほど持っていた。
いや、正確には「僕」の方は、エネルギーの半分くらいは
「耳のモデルの女の子」に向けられているかも知れないが。

近代日本史、そしてアジア史を突き動かして来た「謎のパワー」に
向かって、「冒険」が始まるッ!!

いや、90年ごろなら兎も角、70年代終わりの、あのシラケきった時代は
こんな荒木マンガのノリじゃ無い。

後半に続く。
3.0 。『後日譚』という表現を使わせてもらうとすると、まさにその言葉どおりとなる
村上春樹の『僕と鼠』の俗に言う『青春三部作』の三作目。
比較的短い『風の歌を聴け』と『1973年のピンボール』に比べ、
上下巻があるなど長めの物語である。
しかしこのシリーズと一貫して大きな事件がおきるわけではなく、『僕』を語り部として淡々と日常がつづられていく。

物語性は薄い。
しかしこれはこの作品だけではなくて
前三作も物語としてみるとものすごく薄い。
かといって極度な観念性のある話という感じでもない。
登場人物はすべての象徴であり、凝縮したような存在に感じる。

しかし内容は直接つながっていないとはいえ、
前二作を読んでいないと完全に置いてきぼりをくらう感じである。
もっとも、読んでいたとしても
淡々と流れる日常にただ飲まれるだけであろう。

個人的には『風の歌を聴け』という名作を受ける作品として、
過剰な失敗作ではないのはもちろんの事、成功という感じもしない。
ただし、成功というのがなにを意味するのかは
厳密には定義しがたい。
『後日譚』という表現を使わせてもらうとすると、
まさにその言葉どおりとなる。
実際の物語は下巻からはじまるといってもいい。
だから、とりあえず上巻には★3つ。

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