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黒と茶の幻想 (上) (講談社文庫)

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黒と茶の幻想 (上) (講談社文庫)の商品レビュー

4.0 丁寧に書かれて感じでした
学生時代同級生だった、利枝子、節子、蒔生、彰彦の四人は、それぞれの思いを抱えながらもJ杉を見る旅行に出かける。
旅のテーマは『非日常』。
持ち寄った「美しい謎」を解きながら歩くうち、少しずつ何かが変わっていく…

基本的に恩田さんの作品は苦手なのですが、これはおもしろかったです。
それぞれの事情が丁寧に作りこまれていたし、情景描写もきれいでした。

上巻は、大学時代にひどいふられ方をしたとはいえ、まだ蒔生のことが気になる利枝子の物語と、なぜか紫陽花が怖く、その理由を思索する彰彦の物語でした。
個人的には、彰彦のお話のほうがおもしろかったです。
四人の中で、彼のお話が一番謎が多く、興味をそそられた気がします。
途中に出てくる不思議な少年とのエピソードも象徴的で印象深かった。

特に何が起こるわけでもないけれど、味わって読みたいお話でした。
5.0 まさに恩田ワールド
 「非日常」と「美しい謎」。まさにこれこそ恩田ワールドにぴったりのテーマじゃありませんか。学生時代の友人たちが、旅行に出かける。そこは俗世とはかけ離れた、太古の森を抱く島。謎にはぴったりの舞台が用意されている。

 蒔生、彰彦、節子、利枝子の4人。ここに、これまた謎めいた存在の”梶原憂理”がどのようにからんでくるのか。上下巻、4部構成で、それぞれタイトルには登場人物の名がついている。タイトルとなっている人物の目を通して、物語が進んでいく。

 誰が殺したとか、堂殺したとか、派手なトリックが出てくるわけではなく、かといって、ほんわかした、いわゆる”日常の謎”でもない物語。それぞれが無意識に、この旅で何かを解決しようとしている。それがなんなのか、旅に出た当初はわかっていないのだけれど、繰り返されるたわいもない会話のうちからおぼろげに見えて来る。

 いつか行こうと思っているものの、なかなかいく機会に恵まれない。時間とかお金とか仕事の制約で。それが、ひょんなことから実現する瞬間というのは、それがその場所へ「行くべき時」が来たということなんだ、この4人はそれがわかっている。そこで何かが起こるということも。

 謎というのは必ずしも解けばいいというものではなく、謎は謎のままのほうが美しい場合もある。それがわかっていながら、答えを探さずにはいられない。それによって苦しむかもしれないと、心の底ではわかっていながら、知らずにはいられない。人間ていうのは、不思議なものです。その答えを見つけることによって、この4人は、これからどんな人生を歩んでいくんだろう。

 この物語の設定が、ひなびた温泉旅館なんかだったら、中年にさしかかろうという男女4人の、ただ過去を懐かしむような陳腐な物語になってしまうかもしれないところ、Y島という特殊な舞台だからこそ、雰囲気も盛り上がる。

 一部に『麦の海に沈む果実』の風景が出てきて懐かしくなった。恩田作品を愛読している人にはおなじみでしょうが、どの作品も、随所に”おなじみ”のものが出てくるのです。それも、恩田作品の楽しみですよね。

 早く下巻も読みたいです。憂理はどうなったんだろう?
4.0 言の葉
言葉が巧みに状況を見え隠れさせている。言葉が良くも悪くも全体を支配している。誰の視線、誰の考えをきちんと理解しておかないと、しばらく誤解したままでいたりもする。
それにしても、こんな静かな文章に極限状態を織り込んだものだ。圧倒的な存在感のJ杉は姿を見せてもいないのに。
3.0 詩情豊かな、悲しきかな的娯楽小説
タイトルは、一応ほめ言葉のつもりです。
下巻はこれから読むのですが。

明らかに、屋久島をイメージさせる、神秘と古代の空気漂う
島の奥の、奥を目指して、若かりし頃の密接な友人たち
が旅行に。しかし、過去を振り返りつつ、自らの内面を省み、
友人関係を深く深く掘り起こすとき、知ってはいけない、知る
必要のなかった、心のわだかまりの謎、失踪した「ある大切な人」
を取り巻く、秘密に迫ることになってしまう・・。
これを、古今東西の膨大な薀蓄(うんちく)と、詩情豊かで、しかし、
簡潔な文章で描く、ある種の、若かりし頃と現在のインナートリップ
です。

散々四人の関係と、薀蓄を広げながら、ラスト(上巻での)が、
ミステリーの謎ときになっているところが、ジャンルを超えた才能を
もつ、恩田さんの真骨頂。

行ってみたいな、屋久島の千年杉・・・。
4.0 青春の思い出と現実
中年になった友人と旅行を通じて、青春の頃の思い出を思い出させる。
一人一人の思いが章立てで分けて書かれていて、当時の本当の気持ちと今ある自分についてみつめなおす。バブル世代に学生だった人たちにはほろ苦い思い出をきっと思い出すであろう。

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