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東京裁判 (講談社現代新書)

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東京裁判 (講談社現代新書)の商品レビュー

3.0 さすがに「廉価版」の新書だけに…
 ひとつひとつの検証が物足りなく思うのは致し方がない。日暮氏の東京裁判に関する内容の真髄を味わうためには、「東京裁判の国際関係―国際政治における権力と規範」(木鐸社)を読むしかない。
 極東国際裁判所憲章の国際法との関連性を考えるためにも、各国の政治的状況と関係を捉えるのは必須。
3.0 手を拡げすぎた? まだ足りない?
本書中、著者みずからが表明している立場をいちおう首肯するとして、やはり外交関係史から入った弱さというか、各国の国内諸関係と、各国間の関係との2分法的な論点の整理には少々引っ掛るものがある。
極東国際軍事裁判が政治ショーだったことは、東京裁判に関心を向けたことがある者にとっては当然の前提で、政治ショーたるの是非を今さら云々することに大して意味があるとは思えないが、しかし、公開裁判によって敗戦日本のトップリーダーたちが断罪されたところの意義は、やはり軽視できないと思う。
おおかたの日本人は、この裁判によって初めて戦前期日本の政治過程を承知したわけだし、戦後日本の出発にとって、その衝撃力は随分と大きかったと言えるのではないか。もし仮に、この国際軍事裁判の法廷がなかったとしたら、戦前と同じ轍は踏むまいと、戦後の日本人がつねに意識するようにはならなかったのではないかということ。無論その断罪の「粗雑な勧善懲悪」ぶりには僻々したのが本音だけれども、このような公開裁判に代わる、ほかに何か、もっと上手い方法があったとも思えないのは事実。
東京裁判の被告人らの立場を擁護しようとする論者が、いくら声高に国家無答責イズムへの回帰を叫んでみても、シンパシーを感じる人間を含めて数パーセントの粋を越えて日本人の中に浸透することができず、現在でも圧倒的多数は、無関心に近いが消極的東京裁判肯定論者といえるだろうことで、結果オーライだったのではないか。
なお、これまで関心もなく、ほとんど知識を持たなかった読者向け啓蒙的解説書としてなら、東京裁判肯定派から否定派までを一つの直線上に並べ位置づける論述方法は便利だが、たしかに目配りは良く効いているにせよ、やはり単純化からは逃れていないし、本書が、もし仮に、現在のところの最先端研究水準だとすると、東京裁判研究家諸氏の怠慢には落胆を禁じ得ないものがあるといえる。
ちょっと厳しすぎる評価だったかな? 星4つでも良かったんだけれど。
5.0 政治ショーだが、避けては通れなかった
東京裁判で明らかにされた歴史は、極めて政治的であり、厳密な歴史的検証ではない。
だからといって、戦争に負けた日本が、それを否定したところで戦後は始まらないし、現在においても、それを無視したところで得るものは無い。
著者が繰り返し注意を促しているのはこういうことで、本書の基本的なスタンスである。
たとえ政治ショーであったとしても、戦争の終結と戦後の幕開けのためには、必ずショーが必要であり、そもそも戦争自体が、政治の産物でしかない。
今日も、あらゆる場所で繰り返される「責任者は責任をとれ」という議論と、東京裁判は同じ次元にある。
真の原因が誰にあったかという検証には、はたして終わりが無く、それでも責任は誰かがとらなければならないというジレンマを、連合国と日本はともに抱えていたということで、その意味で日本と連合国は利害が一致していた。
著者は今まで第一線で東京裁判についてしるしてきた研究者より一世代若く、それゆえ冷静で日本側の勢力争いや連合国側の意思統一の難しさを淡々と叙述している。新書でここまで書いてくれるなら、東京裁判について一般の理解としては十分だと思う。本書と粟屋憲太郎『東京裁判への道』を読めば、かなり正確な理解が得られると思う。

5.0 連合国の「物語」はいかにして私たちの「物語」となったか
オビの推薦文を書いている保坂正康氏の著書も含めて、これまで何冊かの<東京裁判>本を読みましたが、本書を一番にお薦めしたいと思います。
東京裁判の情報量は膨大です。本書は新書サイズに収めるために各トピックは簡潔にまとめていますが、これまでの研究史で明らかになったことを、サマリー(まとめ)としているのみならず、そこから導き出している分析の深度は類書の追随を赦しません。
さて、特に私が本書の収穫として紹介したいのは以下の点です。ひとつは東京裁判を前史から解き明かしていること。東京裁判はただそれのみとして存在したと私たち日本人は思いがちですが、実際は連合国は異常なほどにドイツのニュルンベルク裁判との整合性にこだわったということです。よく知られているA級、B級、C級の区別もニュルンベルク裁判憲章の中の犯罪定義項目A、B、Cを個々の被告に当てはめた呼称なのです(つまりA級がもっとも悪質というような<レベルの差>はない)。すなわち日本もドイツも同じ基準で裁くことによって戦後世界の「正義の水準」をグローバルなものにし、新たなパラダイムを確立させるという意志が働いていたということです。
もうひとつは、連合国内部の事情を事細かに追いかけていること。連合国内部で激しく対立したのは意外にも米ソ間よりも、アメリカとオーストラリアなど他の西側陣営国との間であり、米国内の国務省と陸軍省との間でした。オーストラリアは日本軍国主義の復活を恐れ昭和天皇の処罰を要求しましたが、マッカーサーと米陸軍は日本を早期に防波堤として利用するために天皇免責を考えたのです。
戦前日本に「共同謀議」が成立しないのと同様に東京裁判も複数の勢力の複雑な思惑が混ざり合った結果としてできたものであり、それがフィクションであろうとも私たちの「物語」として受け止めなくてはならないのではないか、というのが私の感想です。
5.0 今後も幾度もおさらいをしたくなる書

 数年前から新書タイプの書籍が雨後の筍のように刊行されていますが、私が信頼を置くのは岩波書店・講談社・中央公論新社の三社。この講談社現代新書「東京裁判」も私の期待を裏切らない一冊でした。

 東京裁判については、勝者による敗者への裁き、天皇の訴追の可否、パール判事といったキーワード程度のことを断片的知識として持っている程度でした。そのことに満足するつもりはなく、敗戦国日本に生きる身としてやはり最低限知っておくべきことを、出来ることならば専門学術書の類いではないもので読むことができないかと長年思っていました。
 本書は400ページを越え、新書としては大部の部類に入りますが、実に平易で興味深い書に仕上がっていて、苦労なく読み通すことが出来ました。

 判事や検察側にも日本を裁くことに対して戦勝国間の温度差があった点がまず目をひきました。それぞれの国が戦時中に日本からどのような扱いを受けたかということを背景にした国民感情もさることながら、アメリカと英連邦諸国との間の溝がかなりあったこと、英米法と大陸法との考え方の対立があったこと、また裁く側の人間の個人的な性格なども大きな要素であったことなど、なかなか面白い事実が詳細に書かれています。

 そして当然のことながら冷戦の高まりが、東京裁判を政治的に大きく左右していった事実も、いちいち頷かされることが多く、東京裁判が決して何かを絶対的に裁ききれたわけではないことを浮き彫りにしています。

 著者自身があとがきで綴るように本書は「たいていの東京裁判論に見られる『悲憤慷慨』や『道徳的判断』をなるべく排除」するよう努めていて、その点が大いに好感が持てます。
 今後も幾度か手にしておさらいをしてみたくなる、そんな書だという感想を持ちました。

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