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家なき鳥、星をこえるプラネテス

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家なき鳥、星をこえるプラネテスの商品レビュー

3.0 一見の価値あり
 作者は常盤陽さん。原作は幸村誠さん。モーニング連載の漫画「プラネテス」の番外編である。
 「プラネテス」は宇宙開発の盛んな21世紀後半、宇宙に浮かぶゴミ"デブリ"が社会的問題として認知されるようになった時代の物語だ。
 主人公はハチマキでもタナベでもない。なんと、ハキムだ。

 ハキムが何故、木星往還船フォン・ブラウン号に爆破テロを仕掛けたのか。
物語はハキムの成長を描き、彼が宇宙飛行士を夢見る少年から、世界を憎むテロリストへと変貌していく過程を鮮やかに映し出す。

 ハキムの純粋な宇宙への夢が、軍隊に入り生活していく中で少しずつぶれていく。周囲の欲望や傲慢さの中で、自分自身を見失い、やがてすべてに絶望していくハキム。緻密な世界観と豊富な軍事専門知識の中に織り込まれた、ハキムの心理変化こそ、この作品の白眉である。
 また、ハキムだけでなく彼を取り巻く多くの登場人物にその都度スポットライトを当てて、心情を照らす。
 その描写は、登場人物一人一人に対して誠実に向き合っているような・・・そんな、作者の人間性が出ている気がした。

 作品としての完成度は、さほど高いとはいえない。テロに至るまでの展開や動機にやや疑問が残り、中盤までの盛り上がりを、重要なテロのシーン、その後のエピローグまで繋ぎきれなかったからだ。
 しかし、素晴らしい作品であることに変わりはない。砂漠に住めない鳥アジサシに自分を重ねて涙するハキムの姿には、一読の価値が十二分にある。
 
 資本主義に塗れた、私利私欲がひしめき合う世界。物語の時間は約2080年頃だが、2008年とどれだけの差があるのだろう。
 幸せに生きるための答えや結論など、示されてはいない。けれど誠実に生きたいと願いながら道を踏み外した男の生き様が、作者のまっすぐな言葉で紡がれている。ぜひ、手にとって欲しい一作だ。
3.0 悔やまれる秀作
プラネテスの世界観を発展させた「外伝的オリジナル」。
ハキムの少年時代を描いたもので、ストーリーテリングや背景設定の技術はうまい。読んでいて飽きることはない。
残念なのは、"なぜ道を誤ったのか"で重要な役割となるアルタヘシュと万里のふたりがうまく描き切れていないこと。このふたりが単純化され、ハキムとの関わり方が薄っぺらいので、ハキムの暴走が「信念なき復讐心で、環境に流されただけ」ようにしか見えない。「欲望の手段ではなく、暴力を選ぶ理由」が描き切れれば、もう一段上の作品になれたと思う。
5.0 二人にもう一歩ずつ踏み込む力があればもう一組のハチとタナベが生まれていたという話
まず原作より未来の話じゃないことに安堵しました。4巻以降の物語なら幸村誠先生の手によるオリジナルで読みたい。

厳しい評価もあるようですが当然かと。そもそも<小説化>はファンの評価が厳しいですが、特にこの<小説>は人によって反応が割れると思います。原作世界に頭の先まで浸かりたい人には安直にお勧めしません。理由は幸村誠先生以外の空気をまとっているからです。
かつて幸村誠先生が雑誌のインタビューに「SFと思って描いてはいない」と答えてらっしゃいましたが、この作品で言えば「ファンブックと思って書いてはいない」というところでしょうか。

しかし結果的にこの物語は違うカメラで撮影した『プラネテス』でした。私は原作を浅薄な宇宙SFものの成長物語として描かれることや、原作以上のハチマキの心象を幸村先生以外の手で語られることを恐れていましたが、小説は原作の難しい人間内面の側からきちんとアプローチして、完成された原作本体を汚さずに、それをエンターテインメントとして描ききっていると思います。
したがって読後感はとても良好でした。特にラストの余韻にはぐっと来ました。原作同様のテーマ以上に世界観の底がプラネテスでした。それでいてこの読み応えを実現できたのは小説ならではのこと。プラネテスの魂をそのままに違う口が語ったという印象です。
テイストは紛れもない「ブンガク」。「文學」ではありませんがラノベを読書の中心とする若い読者には少し敷居が高いかも。しかし原作もそうだしな。

違いを感じたのは組織と兵器についての描写とリズム。好き嫌いの別れそうなケレン味の多い文体のせいもあってこちらの方が説明的でゆっくりです。評価の違いはそれを楽しめるかどうかでしょう。心の動きとか愛についての説明は私には過不足ない印象。それぞれのエピソードに妙。

この情報量とプラネテス温度を持った作者がオリジナルなら何を書くかの方に私は期待したいです。
3.0 小説としてのプラネテス
原作者の手を離れて別媒体で展開する場合、
これが「らしい」か否かで判断が変わってくる。
根幹でズレが生じたら、それはプラネテスではないと思う。
そういう点で本作は「プラネテス」という形には収まっている。
しかしそれは原作のオマージュ部分を含めた上で、だが。

本作は原作2巻に登場するハキムが主役の話。
名前はカシム(原作名)でなければ、アシュミード(アニメ名)でもない、
アラビア文化色を含んだ小説オリジナル名になっているのは救いか。

作中のアジサシ(表紙の鳥)や背中の当てられた手の温度が
とても心を和ませるエピソードだが、自国(シバ王国)の成立や
銃器(兵器)の説明に囚われ過ぎて、心理描写が大きく欠如している。
ハキムと万理はお互い何を思っていたのか、不明瞭な部分が多い。
その為に脳内補完という最終手段を用いなければならないのは残念。

原作の連載終了から約三年、何故今更になって小説化?とは思う。
原作者本人の指名とはいえ、内容が特筆して優れているわけで無く、
辺り障りの無い内容が原作を補完させるものでもない。
原作単行本2冊分以上の値段に相応してるか、
という点も踏まえて☆3(凡作)です。
2.0 プラネ公式外伝は嬉しいが
デビュー作なら仕方ないが、文章が説明的で主人公偏りすぎで同人誌みたいで読みにくい。軍隊関連はオタク的に詳しく頁数もむやみに割くのに、突然市場で号泣した男に周囲の他人が優しく馴れ馴れしくしてくる不自然さと唐突さが変。大体今まで全く「愛」について言及ないのに、なぜタナベの「愛」に反応して引っ込むのか、どのようにそれを理解しているのかが結局よく判らない。外交官IDカードを悪用するほど知恵の回る万里なのに、出航しようとする船を待たせながらヒステリックに叫ぶ馬鹿を何故するのか。昔のアニメじゃないんだから大声で叫ぶ感情的なヒロインなんて興醒め。今は冷静理性的なヒロインがいい。万里に「空港職員を更に脅してハキムの身柄を拘束する」とかさせるべきだった。

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