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時間はどこで生まれるのか (集英社新書)

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時間はどこで生まれるのか (集英社新書)の商品レビュー

5.0 歴史に残る驚異の書
「われわれが観測する物理量というものは、すべてマクロな世界でのみ測定できる量である」
「原子1個といったミクロな存在の世界においては、
時間そのものが実在ではない(その他の物理量もまた実在ではない)。
そこでは因果律さえ成立しない。しかし、原子の大集団であるマクロな系(観測装置)を使うと、
ミクロな存在の時間(やその他の物理量)を観測することは可能になる。
というのも、時間(やその他の物理量)は、マクロな世界の概念であり、
われわれは観測装置をミクロな系に押し付けて、
いわば強引に時間(やその他の物理量)をそこから引き出すからである。
・・・ミクロの世界において、
われわれが問題にしているような過去・現在・未来といった時間の向きや流れが存在するはずもない。
われわれは、時間の問題を、マクロな世界から始めねばならないのである」

「相対論で絶対的な存在は、光速だけである。・・・
われわれはマクロな世界においても、時間や空間は実在ではないことを示すことができる。・・・
相対論が正しいとすれば、光速に近づくにつれて、空間の縮みと時間の遅れは極限に達する・・・    
光子にとって、宇宙の大きさは0であり、流れる時間もまた0である。
つまり、光子にとっては時間も空間も存在しない」
「相対論によれば、空間は虚であり、時間は実である。・・・時空図の原点に、「私」がいる。
私の周囲には、空間方向には因果関係をもてない「あの世」が存在する。
そのため、私のいる現在を境にして、世界は絶対過去と絶対未来の二つに完全に分離される。
時間が「実」であることの意味は、
私が因果関係をもてる世界が、時間方向だけであることに現れている。」
しかし、
「量子論と相対論のどこにも・・・時間の向きや流れを暗示させる法則はない」

「時間の向きと流れの起源を、相対論や量子論以外のものに押し付けてしまった」訳である。
「いったいなぜ、マクロの世界になると時間が立ち現れるのか・・・
それはわれわれがア・プリオリに(すなわち、
生命進化の結果として)時間という概念をもっているからにほかならない」
「われわれの「意思」は刹那にしか存在せず、しかもその刹那は誰とも共有できない・・・
驚異なのは、そのような「意思」が誕生したことである。
時間を創造し、そこに「生きる」という自由を得た存在が、現に存在することである」

本書を絶賛する次第・・・、広く読まれるべき著書ですが、
G.J.チャイティン著『知の限界』
「意識は物質的には見えません。そして、情報は確かに非物質的です。
したがって、たぶん意識は、あるいは精神さえもが、物質ではなく情報で創られるのです」
残念ながら、物質もまた単なる情報に過ぎない・・・、と私は考えてます。
4.0 時間というものを改めて考えるきっかけに
時間というものは普遍のものとして,誰にとっても同じように過去から未来に向かって流れているものと思っていました.

しかしながら,本書によるとミクロな世界には時間というものは存在しないとのこと.また,自然界はエントロピーが増大する方向に進むわけですが,生命はこのエントロピーの増大に反して秩序を維持しようという意志を持ちます.そして,この意志こそが時間の向きや流れを生むとのこと.

分かったような分からないようななのですが,これは哲学的な話ではなく,物理的にそのように解釈できるのだそうです.時間というものをまじめに考えたことがなかったので,いろいろと考えさせられる本でした.他の本も読んでみます.
2.0 物理学者ならではのSF的思考を披露してほしかった
前半は相対性理論と量子力学の世界観の説明。要するにニュートン的な絶対時空が、日常では常識になっているけれど、現代物理学ではそうではないですよ、ということ。

相対論では、絶対的なものは時空間ではなく光の速さであること、量子力学的ミクロの世界では時間も空間も実在しない。都筑卓司のブルーバックスで中高生時代を過ごしたぼくには目新しいことはあまりない。超弦理論の11次元空間によれば、ぐらいは言ってほしかった。

哲学者の時間論は古典物理学の範囲で考えていて、現代物理学の知見を取り入れていない、と著者は非難するけれど、この本全体はマクタガートという哲学者の理論にそって論じられている。(マクタガートについては時間は実在するか (講談社現代新書)がわかりやすい。)

そして「時間とは何か」という結論なのだが、静的にただ存在している宇宙に、生命(特には人間)がエントロピーの増大に抵抗するというその生命の形式ゆえに、時間を創造する、というようなものである。

「時間の創造は宇宙の創造であり、われわれはそれに参画しているのだ」とのことだから、これは、一種の人間原理といえる。

著者は物理学のことは説明しているが、現代哲学についてはほとんど何も説明せず、恣意的にハイデガーなどの用語を援用している。人間原理についても、一言も説明されていない。これでは「宇宙がこのようであるのは、人間が観察しているからだ」という人間原理そのものが、著者のオリジナルのように受け取られかねない。

むしろ、実数と虚数の関係にある時間と空間の関係を無理に開いて、たとえば重力が距離の2乗に反比例するのではなく、時間を含めた時空距離の3乗に反比例する、そのようなものとして時間を捉えた場合の世界観は構築可能か、など、物理学者ならではのSF的思考を披露してほしかった。


4.0 認識を変えるための本
タイトルだけでこの本を買ってしまった。
「忙しい中でもいろいろと工夫して自由な時間を作ることができるノウハウ本なんだろうな」というバカな考えで買ってしまったのだった。
しかし、中身は「なんじゃらほい」。仕事に関連する以外の本といえば、マンガやラノベ、エッセーの類しか読まないオレには未知の世界だった。

そう。この本は未知の世界を見せてくれた本であった。
だが、未知と思っていた世界は、茫洋として形はないものの、すでに自分自身の心に内包されていたのだった。生きるために時間を認識するという考えは、自分の頭の中にあったドロドロとした暗い感情を、カッチリと形のある暗いカタマリに変化させてくれた。
「この世界は生物を駆逐していくためだけの存在であり、神がいるのならば、神は生物がいないことを望んでいる。生きているという事実だけで罪なのだ」という彫像を彫り起こしててくれた。しかしながら同時に「生物は世界と神に挑戦し続けている卑しくも逞しく、輝かしい存在なのだ」と知らせてくれた。
その脈々と受け継がれてきた生命であるならば、簡単に世界などに負けてはいけないのだ。

この本を読みながら、何度も涙した。
神様や世界とかと戦うラノベが好きな人は読んでみてもいいと思う。安いし。
4.0 要素還元主義を貫いた時間学
物理学で習う知識をずらずらと総動員して、時間を考えるというお話。
2章では相対論、3章では量子力学、4章では素粒子論、
5・6章では熱力学、統計力学
あぁ、なるほど、時間という概念がそこには意味がなかったり、
あったとしても、絶対的なものではないことが、言われてみれば
確かにそうだ、と、一般教養的な物理学の復習のお話が続く。
流石、カリスマ予備校講師だけある。

そして7章で、時間を生み出す原因は、
秩序を維持しようとする意思によるものである、
・・・と言う話にもって行くのだが、どうも議論が弱すぎる。

なぜならば、お互い相互に関係しあうことで、秩序が生まれるという
非線形科学の視点が、完全に抜け落ちているからだ。
あぁ、要素還元主義の限界、ある意味では 現代物理学の限界かと、
個人的に感じた。よって、☆4つ。

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