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ジャージの二人 (集英社文庫 な 44-1)

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ジャージの二人 (集英社文庫 な 44-1)の商品レビュー

4.0 父子のゆるーい避暑生活
失業し小説を書こうとしている息子と、かつては名のある写真家だった父親の二人が、夏も終わろうとする北軽井沢に「避暑」に行く話です。

結婚生活が破綻寸前の二人の、ある意味での逃避行です。
そこでの黴臭い蒲団にくるまったゆるーい生活振りが、淡々とユーモア混じりに展開されます。
大の大人が、小学校の名前の入った古いジャージ姿で過ごす生活を想像するだけで可笑しくなります。

この二人の関係は、父子の関係とも思えない関係です。
互いが互いを思いやっているのですが、深くは聞こうとしないし話そうともしません。

そんな二人のだらだらした生活振りは、目の前の問題を何も解決しませんが、それでいてこうした生活の中で、大げさに言えば、何かある悟りきった境地に入ってしまう様な感じです。

この続編である「ジャージの三人」も所収されています。
そこでは、前半で息子の妻も登場し、後半には父親の娘も登場します。

様々な人間関係が描かれる中で、夫婦も親子も完全には知り合えることはなく、それぞれが考えて行動し、互いに思いやって生活してゆくしかないと言っているようです。
4.0 映画鑑賞後に読みました
映画のスローな世界の原作が気になり読んでしまった。

とても、セリフの少ないお話で、
映画では、沈黙を考えるパワーが要求されたのだが、
小説には、その答えが書いてあって、なにやら、
「映画の回答集」を開いて、答えあわせをしているようであった。

「あっ、やっぱり、あの解釈でよかったんだ」とか、
「あれ、そこまで、意地悪なことを考えてたんだ」とか。


映画鑑賞後に読むと
「なるほどね〜」と頷くことが多いのですが、
「よく、映画化したな〜」とはじめて、そんな思いを抱きました。

それほど、
ゆったりとして、
感情の起伏が内面だけに収めている作品です。
人間関係の複雑さに疲れ果てている人にお奨めします。
5.0 シンクロする時間感覚
 一般的な小説的技法が使われない。たとえば、心理描写や長い独白がない。描かれるのは断片的な思考の切れ端だけだ。また、登場人物に対する第三者視点からの説明描写がない。いわゆるト書きに当たる部分だ。これら説明的な描写がほとんど無い。
 畑の真ん中一カ所だけで携帯の柱が三本立つ…だーっそんなこと大の大人なら無視してしまう極小エピソードだ。しかも妻の不倫と父の三度目!の結婚生活の破綻と、学校生活に行き詰まっているらしい義妹と、重要モチーフは満載の小説なのだ。これをドラマチックに盛り上げることなど、幾通りも思いつく。
 だが「僕」は、ぼんやりとあせりながら、もらいもののトマトの使い道に悩んだりミロの散歩にうつつを抜かしたり、花輪和一の漫画を読んだりしている。重大な事項と些末な事項が、同じレベルで「僕」を取り巻き、現実と同じ速さで小説内の時間が進んでいく。
 今までこの作家の読み方がわからなかったが、少しわかったような気がしてきた。ゆるゆると面白い。映画化されるそうなので、そちらも楽しみだ。
4.0 巧みな文章で綴られる、少々切ない物語
軽井沢の別荘(といっても、そんなたいしたものではない)における、30歳くらいの息子と父親、それとプラス一人(その際は「ジャージの3人」となる)とのゆるいジャージ生活を描いた作品。
父親と息子、旦那と嫁、息子と娘など、いろいろな人間関係が交差して、物語を作り出している。

小説として面白いか、というとちょっと微妙ではあるが、風景や心理の描写はなかなか巧みで、笑わされたり、ちょっと心を揺さぶられたり、の連続だ。

著者の別名である「ブルボン小林」名義でのエッセイが好きなので本書も読んでみたのだが、エッセイ同様特筆すべきは、「固有名詞の使い方の巧みさ」だと思う。
本書の柱的に使われる「和小学校」を始め、たまに出てくる実在する商品名(ミロとか、アルフォートとか)が、作品を引き締めている感じだ。
もっとも、これは世代が違うなどで通じない人には通じないだろうから、諸刃の剣ではあるだろうが・・・。
5.0 切ない一品
登場人物のモデルと思われる人物を三人とも知っている身からすると「ジャージの三人」はどうしても普通の小説として読むことができず、自分の中で感情移入のゲージを割り引くのに苦労する。作者に近しい人であれば誰でもそうなのだろうが、私もまた例外ではない。レタス畑のくだりと最後の場面では不覚にも泣きそうになった。切ない一品。

この作者のスタイルは柴崎友香の解説にもあるとおりで「描写される対象物が単なる小道具でなく作者視点での登場人物が関心を持つ対象として語られる」のが大きな特徴だが、「ジャージの二人」「ジャージの三人」にも色濃く表れる。ジャイアントカプリコや熊手やイル・ポスティーノなど、主人公の関心につれ淡々と綴られるさまは胸に心地よい。

作者はどっかの対談で「得意分野がないので仕方なく純文学にした」みたいなことを言っていたが、純文学でもう十分得意分野になってるし周りの評価も固まってきた。だがそんな評価はどこ吹く風でマイペースに新作を綴っていただければと。

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