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王妃の離婚 (集英社文庫)

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王妃の離婚 (集英社文庫)の商品レビュー

5.0 女が書けない? 書けてますよ!
 カトリックでは、結婚は男女二人の約束ではなく、神を介した三者契約である。だから離婚はできない。離婚はできないが、事実上、中世ヨーロッパに離婚はいくらでも存在した。「結婚無効」という形で。
 無効となる結婚には二種類ある。
 まず第一は、そもそも結婚することが禁じられている近親婚であったというものだ。従兄妹やハトコでも近親とみなされたらしいから、複雑に婚姻関係を結んでいる王族では、これに当てはめて婚姻を解消することも簡単だった。
 もう一つは、夫婦の間に肉体関係が存在しない場合である。子供に恵まれない時には、実際には関係があっても、しばしばその理由によって離婚が成立した。

 この小説は、後者の理由で妻を離婚しようとした王と、それを拒む王妃の物語を、王妃の側の弁護をする法修道士フランソワの目からえがいた物である。

 現代では、結婚は、極めてプライベートな行為である。しかも当事者は絶対権力者である王なのだ。いくらでも勝手に結婚して、勝手に離婚すればよいようなものである。(実際、英国のヘンリー8世はそうした。)
 しかし、王といえども、法と契約には逆らえないはずと、名もなき修道士と女である王妃の弱者二人組は、最後の最後まで戦うのだ。けっして勝算はないけれど。けっして自信はないけれど。
 格好良くない二人の、格好良くないままに頑張るその意地は、見事としか言えません。

 佐藤賢一は女が描けないとしばしばいわれますが、フランソワが、王妃がけっして引かないその理由に思い当たる部分などには(それが事実かどうかはけっして明かされないが)、誰もが思わずうなずくはずです。
 全く、女とはそういうものですとも! そして確かに口に出さないでしょう、彼女のような女性ならば。
 こんなふうに謎を含んだ存在として、佐藤賢一は常に魅力的に女性を描く作家であるとわたしは思います。
5.0 読んでみてよかった。
 最初は難しそうだな〜と思って少しずつ読んでいたんですが、真ん中を過ぎたあたりから止まらなくなり最後まで読みました。ラスト付近はうるうるもの。ジャンヌの切ない想いとフランソワの率直な眼差しが胸を熱くさせてくれました。
 
 法廷でのやり取りにはニヤリとさせられること間違いなし。難しいようで難しくないです。男女関係をもう一度起点に帰って見直すような感じ。結婚についてもいろいろな疑問が提示されていて、今まで当たり前だと考えてきたものがひっくり返された。

 フランソワはどこから見ても中年オヤジなんですが、法廷に立つ彼はかっこいいし、最後の方では本当に素敵に見えました。魅力的な男性だなと。内側の魅力がにじみ出ているのかな。

 読んで損はない。
 特に女性には興味を引く内容だと思う。
5.0 不正な裁判への憤り
中世フランスを舞台に、不正な裁判に憤り、弁護に立ち上がった弁護士の活躍を描いた小説である。自己の方が相手を圧迫していたにも関わらず、追い詰められていると、被害者妄想を抱き、なりふり構わぬ攻撃・暴力を正当化してしまう権力者の心理が描き出されている。ABCD包囲網と叫んで侵略戦争を行った往時の日本政府はまさにそのようなものであったのだろう。
よき法律家には生活・社会・経済についての深い洞察が必要であると感じた。法律家が法律学の世界にのみ閉じこもってはならないとはよく言われている。例えば医療過誤訴訟や公害訴訟、特許訴訟では科学技術についての知識が必要とされる。しかし訴訟の対象となる事件の知識を追うことは表層的なものに過ぎず、それが全てではない。
逆に科学技術の勉強ばかりしていたら、法律家としての正義感・衡平観念、更には市民としての生活感を失ってしまう危険がある。「裁判官が技術のわかる人だからといって、いい判決が書けるとは限らない」(「知力国家」読売新聞2003.7.5(鮫島正洋))。実際、公害訴訟では論点が技術論に終始してしまい、市民感覚から逸脱した判決が散見される。特許訴訟においても発明の科学技術的な意義に惑わされることなく、発明の経済的価値や発明の開発や実施に投資した者は誰なのかという背景まで掘り下げて分析する必要があるだろう。
5.0 “女”をわかっている作家の良作
「フランス国王夫妻の離婚裁判」。
それも王妃側をクローズアップさせたものである。
この本が「直木賞」を受賞し、かなり売れたのも、
“王妃の離婚”だからではないか。第二の性というべき「女」、
それも「王妃」という庶民とはかけ離れた存在の
“お姫様”を前面に押し出したタイトル・内容だからこその結果であろう。
「王の離婚」では誰も買わないし、興味も惹かない。
当時なら「あったことだろう」「当然?」で済まされるからだ。
本当の主人公はフランソワという骨が太い中年男なのだが、
裁判の主役は“王妃”だ。
「王妃」という字面からして、高貴な雰囲気をかもし出し、
注目したい内容であることは明白だろう。。

また、この作品では、佐藤氏がいかに“女”という生き物を理解
しているかがよくわかる。
「醜女」と呼ばれ、不自由な足を抱えながらも懸命に王妃として、
王女として、女としての誇りを失わないジャンヌ・ド・フランス。
彼女の健気な姿に、同じ女としてココロから共感をおぼえた。
やはり夫を愛したかったし、愛されたかった。
王妃として、高貴に生まれついたわけだし、貴人として生きたいのだ。
そんな気持ちが一気に吹き出していくくだりは、
まさに女がもつ複雑で激しい感情そのものであり、
それだけでも泣けてくる。
3.0 聖と俗の2項対立
格調高きフランス15世紀の歴史絵巻…と、思いきや、いきなり処女検査とか下世話なテーマが容赦なく露出してのけぞってしまう。

教皇の法廷と聖典法による裁き。しかし、争われるのは男女の愛であり、しかも男女関係の末路である離婚の争い。この聖と俗の2項対立が良くも悪くもこの『西洋歴史小説』の基本構造になっている。中世西洋史やキリスト教会法などと聖人君子の上のほうのプライドをくすぐりつつ、三流週刊誌やスポーツ誌も顔負けの露骨な単語で下の部分もくすぐってくれる。最後は、やっぱり純愛というわけで、真ん中の部分もくすぐってから終わる。

そのサービス過剰さが、多少、見え見えなのがこの小説の読ませる部分ではあっても、バイパス沿いの洋風結婚式場のような安普請なところでもある。

大学教授も、実は通勤電車で読んでいるのはスポーツ紙かヤングコミック、みたいな小説。

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