“ありそう”と“なさそう”の絶妙なさじ加減
落語家として5年目、二つ目昇進の壁にぶつかる天馬が、ひょんなことから拳銃を拾い、撃ってしまったことから始まる物語は、それぞれの夢と現実の狭間で揺れる若者達が主人公。拳銃を撃ったことで何かが変わった天馬に習って、拳銃を撃ってみようとする若者たちに、ヤクザや銃マニアが絡んでストーリーが進む。
全編に散りばめられた落語のエッセンスが上手く物語をまとめていて、それぞれの登場人物がいかにも“ありそう”な設定のため、実際には決して“なさそう”な展開さえ、すんなりと受け入れ共感することができる。
天馬のモデルとなった実在の落語家さんは、最近『名古屋式』という本を発売して絶好調の漫画家さんでもあり、あとがきで『粗忽拳銃』が出来上がるまでの経緯を漫画にしている。
その落語家さん本人から聞いて読んでみたこの物語には、作者の、夢を持つ若者への愛情までが感じられて、読後感がとても爽やかだった。
うまい! 座布団5枚!(失笑)
「軽くて、たのしく、ちょっと感動できました。」って、コメントがありますが、ほんとそのとおり。
つけくわえるなら、この「軽くて、たのしく、ちょっと感動」って、よくありそうで、でも、なかなか稀なことなんですが、この本に関してはほんとそのとおり。腹いっぱい楽しめました。
お礼をいいたいくらいです。
落語の使い方がかなりトリッキーで、でも実にうまくて驚きましたが、そのわけは、あとに読んだ「笑うカドには―お笑い巡礼・マルコポーロ」でわかりました。
この人、ただの小説家じゃありません。筋金入りのお笑い好き、かつ、見巧者なんですね。
な、なるほど……。