既視感が否めない
孤独な少年が鬱屈した思いを解放するために創り出した誰にも見えない存在「ヒカル」…。序盤早々にこの設定が明らかにされた時点で、「体がぶつかって中身(魂)が入れ替わる」のと同じくらいありきたりな筋に大きく落胆させられた。「何番煎じだよ」と呟きたくなる。 また、「ヒカル」を厳しく薄汚れた現実を吹き飛ばすべき自由・奔放な存在として描こうとしているのはわかるが、それを具体的な言動・行動に落とす作業に失敗していると感じざるをえない。単なる落ち着きのない精神的に未成熟な「こども」のそれでしかなく、むしろ幼稚というべきである。
以上、自分でも非常に辛辣なことを書いたと思うが、決して著者の他の作品まで貶しているわけではないので悪しからず。
ありゃりゃ?
読んだのは実に中学以来です。当時を越える衝撃を受けたと言っても言い過ぎではありません。主人公トオルは、孤独な少年です。トオルにとって、父は「あの人」母は「あんた」でしかなく、新しく転入した学校でもクラスの生徒、教師たちは運命を受け入れて無表情。なぜこんなにも人間社会は住みにくいのか?なぜみんな自分を殺して無表情に生きているのだ?誰でも子供の頃に抱いた感情でしょう。そんな社会をトオル(ひと時の私たち)は冷ややかに見つめています。
ヒカルという子供じみた偶像と同居し、押し隠した本音(社会に対するアンチテーゼ)を彼に語らせることで「人と分かり合えない自分(なんで自分はこんなに自信がないのか)と「好き勝手やりたい自分(社会に従順でありたくない)」が乖離してしまう恐れを昇華したのではないでしょうか。
最終的に(ネタばれでもあるのですが)「現実」にイヤでも向き合わざるを得ないことに気づき、徐々に、そして一気に大人へと成長するトオル(いささか当たり前すぎる感じですか?)を目の当たりにして、何か思い出すものがあるはずですよ。ああ、こんなに正義感に、違和感に溢れてた時があったんだよなぁ…と。
さて。他には、とても印象的で鮮明な情景描写も個性的です。文章の美麗さが物語を引き立てている、珍しい作品ですね。少なくとも情景描写がくど過ぎず、目に付かない。
星5つ。涙はしませんが、星5つ。特1にヒカルを消し去る瞬間は、圧巻(であってほしい…)ですよ。