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「あさきゆめみし」や田辺聖子の「新源氏物語」で培われた身も心も美しい紫の上が、この「女人源氏」では覆される。これがいいと思う人はいいかもしれない。特に明石の君への嫉妬がこの独白小説ではあからさまで、それが私は紫の上という人の正体かもしれないとは思うものの、品位を損ねているのは否定できない。 終生友情を感じ合い、大人の女性同士たしなみ深く付き合ってきたはずの明石の君や花散里に対して意地悪で皮肉っぽい独白をするようなのは、紫の上ではなく、紫の上の立場を借りた寂聴氏なのかもしれない。 心にどうしても生まれてしまう嫉妬心を、自分で気づかないよう努めて押さえてきた結果が彼女の早すぎる死なのだとしたら、この紫の上は決して早死になどしないだろう。 「女人」に興ざめした結果、数多くある源氏物語現代語訳の中でも、寂聴版は手に取らないことにしてしまった。