心地いいご都合主義
父親の形見として残された拳銃を、函館まで取りに行くことになった竜哉。それぞれの思惑から、その旅に同行することにした、同居人の公平とくるみ。この旅はどんな結末をむかえるのでしょうか?表向き3人は、明るく楽しく生活しています。湘南の元別荘である広い家で、それぞれが好きな仕事、あるいは目標にしていた仕事につき、男2人女1人が、仲良く、詮索せず、束縛しあわず。ドラマの中にしかありえない様な、お洒落で、のびのびした暮らしぶりです。3人の様子や会話は、心地よく読めました。
しかしそんな3人にもそれぞれの過去があり、それが、それぞれの視点で語られていきます。みんな暗い家庭の事情だらけです。やたら家族に死なれているし、愛人の息子だとか、DVとか、性的虐待とか。作中でそれらが明らかになった時、3人は「実はわたし達って似たもの同志だったんだね」などと納得していますが、読者としては、なんてご都合主義なんだ…と絶句です。
この本は、ストーリー全体的にも、びっくりするくらいご都合主義です。でも、最後にすべてがわかった時には、ある程度納得できて、それでも心地いい本です。
面白い事はたしかです。テンポがよく、ドキドキハラハラさせてくれて、スピード感があって、一気に最後までひっぱってくれます。途中で読むのをやめられませんでした。読後感も爽やかでした。
サンダーバード・コンヴァーチブルに乗って
タイトルの『Q.O.L.』ってなんのこと?読んでるうちにその意味が出てくるかな?と思いながら3分の1くらい読んだ時、裏表紙の右上にちゃんと書かれてあるのに気が付きました。×のかたちで二つの意味を交差させて種明かしされています。興味のある方は実際に見てみて下さい。
三崎龍哉、千田くるみ、酒井光平の3人が主人公。
龍哉のお屋敷のような家で共同生活をしています。 各が抱えた思惑が最後まで謎を引っぱっていきます。青春小説とミステリーの2つの要素が楽しめました。ただ、前2作にも感じたことなのですが、「謎」を引っぱって話が回り出すまでが長い。
この作品では、3人の登場人物の生い立ちや、現在に至るまでの精神的な部分を丁寧になぞっていくために、待ちきれない気持ちになりました。3人が謎に関わらねばならない必然性を持たせるために、引っぱるのでしょうが…。
それでいて、謎が明かされた時には“あれっ?”と少し肩すかしをくった感じ。謎解きのための伏線は用意されているのですが、ちょっと物足りなかったかな。
でも、3人の熱い思い詰めた心情は、心を打つものがあります。小路さんの温もりのある世界は充分味わえました。